[アニメ]イノセンス


Innocence
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2004年アニメ総合点14位201作品中
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映像2.82(最高)11
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キャラ・設定1.82(とても良い)11
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格好良い64%7人/11人中
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作品紹介(あらすじ)

草薙素子(通称「少佐」)の失踪から4年後の2032年、少女型の愛玩用アンドロイド(女性型なので正確にはガイノイド)「ロクス・ソルス社製 Type2052 “ハダリ(HADALY)"」が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9課で捜査を担当することになり、公安9課のメンバーであるバトーは、新しい相棒のトグサとともに捜査に向かう。
※ このあらすじ部分にはWikipediaを参考/または引用した部分があり、GFDLのラインスが適用されます。
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制作:Production I.G. 監督・脚本:押井守 演出:西久保利彦 楠美直子 プロデューサー:石川光久 鈴木敏夫
原作:士郎正宗 美術監督:平田秀一 キャラクターデザイン・作画監督・原画:沖浦啓之 サブキャラクターデザイン・作画監督・原画:西尾鉄也
音楽:川井憲次 音響監督:若林和弘 歌:伊藤君子 メカニックデザイン:竹内敦志
デジタルエフェクトスーパーバイザー:林弘幸 ビジュアルエフェクト:江面久 作画監督・原画:黄瀬和哉
日本 開始日:2004/03/06(土)
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イノセンス OPイノセンス OP [ファン登録]
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2020/05/12 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴 / プロバイダ: 2665 ホスト:2611 ブラウザ: 8322
これも上手く書くのが難しいと思えるけど言ってしまえばテクノロジーの世界観の核や
設計図を3DCGやアニメーションで表現し、バトーから分かる
それでも失うことのない人間味の渋さと表に出ない深みを描く作品だと思う。

映像や世界観はなんというかテクノロジーというものの終焉を描いているように思え
しかし、それを覆したいと思ってもどうすることもできない虚無感を映し描いているのかもしれない。押井さんの人生観や空しい感情が入り混じっていそうです。

バトーという男の不言実行さに惚れるお話で機械や詩人めいたセリフや偉人や小説家たちの台詞は大して意味がない。世界観の正当化の為に用意されたネジのようなもので
それをはめようとするものと別の部品に使おうと足掻く者たちの対立なのかもしれない。
人形のような顔をした口紅の女は魂の抜けた人間の慣れの果てを機械で表現しているように思えてならない。

最後はうろ覚えだけどバトーの背中を見てて思ったのはそれでも正義を貫こうとして
その空しい思いを噛みしめて歩く男の姿だけが僕には見えました。
評価は【とても良い】です。この世界観のあらゆるパーツやカテゴリーといった要素を
感じ取れる人が良い評価を書ける作品だと思います。

2016/09/20 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:4(67%) 普通:0(0%) 悪い:2(33%)] / プロバイダ: 37120 ホスト:36971 ブラウザ: 10183
【良い点】
押井守の作品の中では最高傑作。

彼のイメージを具現化するのはとにかく金がかかるのだと思わされる。金と時間がふんだんに使われている印象。相変わらず複雑な舞台装置と演出ではあるが、筋そのものは非常に分かりやすい。士郎正宗の原作コミックを読んでいれば意味不明な箇所は恐らく無いはず。

GISと違って資金面で余裕があったためだろう。スローモーションのカットがとても贅沢な作りになっている。アニメーター泣かせだと監督自身が言っていたが、この時間演出は映像に深みを生んでいる。個人的には押井守の風景画的な部分、陰鬱さと郷愁(その怠惰)を背景や無機物に語らせる手法が好きなので、イノセンスでの情景描写の欠如は残念だった。ゲーム的なCGは驚くほどに美しいが、語ることには向いていない方法なのだろう。

実写映画において、風景や背景はただそれだけで時間の経過であり、変化であるというのは押井守の論だが、アニメにおけるリアリティコントロールと同様に、背景の変化もアニメ監督はコントロールしなければならない。でなければ無意味な映像を労力を掛けて創り出すことになるからである。押井守は背景をCGにすることで実写に近付けたのではなく、アニメを実写化しようとしたのであろうが、恐らくイノセンスでは失敗しているのだと思う。

【悪い点】

押井守は劇場版パトレイバーやアヴァロンでも同じ失敗をしているのだが、自分の琴線に触れたものに評価が甘すぎる。その琴線は彼の子ども時代の印象からも引き出されてしまうために、端的に言えば押井作品はガキ臭さを感じさせる部分がある。前作GISでそれを強く感じたのはカバラの生命の樹と幾つかのカットであったが、今作では錬金術のエメスである。これはダサい。押井守自身がどう思っているかはしらないが、カバラ、錬金術、パトレイバーの聖書要素などは作品の質を下げている。これは西洋の神秘主義に問題があるのではなく、アヴァロンの銃撃にリアリティがないのと同様に、押井守自身のマニア性に問題がある。リアリティコントロールをしきりに語りながら、彼の作品は要所で自らの趣味的な素材を料理しないままにぶちこんでしまうところがあると思う。押井守の映画作品は映像と音楽の美しさからアニメを超えているのだが、隠しきれないクリエイターのオタク気質の中の稚拙な部分がときに滲み出てしまう。とはいえ、それがなくては押井守ではなくなってしまうのかもしれないが。

【総合評価】

原作ファンとしてもGISファンとしても最高だった。

しばしば原作の草薙素子はGISとは違うキャラクターである、GISは思春期の少年のように感傷的すぎるという評価を見るが、私の見解では原作の草薙素子も人形遣いと出会ったあとではその精神が一時的にGIS的に変化している。もっともそれはそう長い期間の変化ではなかったのだけど。

存在不安を抱えている一面と現実主義者としての一面、無邪気な一面、それらがすべて同一の人物の内面だとして何の問題があるのか。SACの草薙素子はとても鼻につくのだが、それは彼女が存在不安を抱えていないからだろうか。あの一般人めいた少佐よりはGIS素子の方が遥かに原作寄りだと思うのだけど……どうだろう。

イノセンスの草薙素子はバトーに別れを告げた前作最終段からちょっと退化したようにも思う。原作素子は草薙素子としての個を描写的には失わずにバトーとも大袈裟な別れ方をせずに去ったが、GIS素子はまるでその存在の在り方が変化したかのように振る舞い、超越者としてバトーから去った。そのために、原作1.5ではあっさりと帰還できた素子が、イノセンスでは帰還することができなくなってしまった。もはやバトーという存在が素子にとって価値や意味を持たなくなってしまったように描かれたからだ。しかし、イノセンス素子は結局のところ(勿論草薙素子の意識の有り様は分からないのだが)、バトーの側にいつでもいるようだ。これはあまりに感傷的な結末だと思う。草薙素子が捨てた筈の価値から逃れられなかったかのようだ。天使という言葉が劇中で用いられているが、その在り方は慈愛なのか感傷なのか。監督の意図は分からないのだが、描写をみる限り、感傷的に見えてしまうことは問題だと思う。

2016/05/21 普通(+0 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:6523(33%) 普通:7509(38%) 悪い:5915(30%)] / プロバイダ: 29292 ホスト:29168 ブラウザ: 5213
2032年も、もうホントにそれほどは遠い未来ではなくなってきていますが・・・・・・・

草薙少佐失踪後に起きた、ガイノイドによる対所有者殺害事件が今回の大事件だった
様で、3D空間のカメラ持ち込みやDOMINO等が多用された様で、終盤やはり草薙は・・・・
でしたが、ガイノイドの寒気がするような不気味さや、説明にもあった通り混乱して
いたけど、細かく作りこまれていてそういうのも超越した様な、芸術的な美しさも
感じられた様な背景や、食料品店でのガラスが砕けたスローモーション等のアクション
等映像面では公開後10年以上たった今日でも十分高クオリティだったでしょう。

バトーとトグサが行動を共にする事が多く、「ヤクザの事務所に行くのに自分達
までヤクザになる必要はない。」とか言いながら思い切った行動に打って出ていた
様ですが、生身の人間ではない、サイボーグであっても自分自身のポリシーを
忘れないで自分なりの答えを見出そうとした彼の強い意志が伝わってきた様だったかもですね。

ただ、他のサイトでも指摘された通り、確かにこの大塚バトーは押井守氏の分身
でもあったのでしょうし、アニメだけ見てアニメを作る事なんか絶対できないんだ
という事でもあったのでしょうが、釈迦とか、尾崎紅葉とか、孔子とか歴史上の
偉人・才人達の名言・格言を引用しすぎでしたね。傀儡謡も、確かに前述通り
秩序が保たれていたとは言い難かった作中の世界観の混沌・混乱ぶりを良く
象徴していた様な音楽で、選曲自体は良かったのですが、ややくどいきらいもあったかもです。

押井氏には押井氏なりのアニメ制作にかける強いこだわりとかあって、洗練された、
大人の近未来SFドラマとして昇華させようとしたのでしょうが、良くも悪くも
そうしたこだわりが強すぎて必要以上に難しく、くだくだしくなってしまった感も
あったかもですね。

「人形に・・・・・・」と言っていたあの少女も、いざ自分がその人形だったら・・・・・
とか想像できたのかなあで、最後見られた、トグサの娘(既にその存在も途中で言及される)と
彼女が抱いていた人形も、本作を象徴する様な締めでしたが、そういう引用とかに
こだわりすぎて、人間と人形の立場の違いや確執等思ったほど強いパンチにくるほど
前面に押し出されていなかった感もあったかもです。

芸術作品としては一級品でしたが、SFドラマとしてはそうしたこだわりにかける
ベクトルのさじ加減等まだ余地有りだったのかもです。評価は「良い」寄りの「普通」で。

2014/08/16 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:129(74%) 普通:15(9%) 悪い:31(18%)] / プロバイダ: 447 ホスト:472 ブラウザ: 5171
今作は前作「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」で少佐にプロポーズするもふられてしまったバトーさんが、しみったれた心であれこれする話…かな?
簡単に概要を説明すればこんな感じです。
テーマも前回と変わらない哲学的なものだと思います。

雰囲気も物悲しく、まるでバトーさんの心情を表してるかのようです、犬と共に生活する姿はなんか哀愁漂う(笑)。
例えばトグサと組んでる時はなんかすげー暗いんだけど、少佐(厳密に言えば違うが)と共闘する時は不思議とすげーイキイキして見えるとか、そういうところを探すのもまた面白いです。
あと特色上、本作もやはり難解なところとか現実か幻かよくわからないシーンもありますが、そこはバトーさんの心が揺れ動いていると思えば多少見やすくなるんじゃないかと…。
箴言の引用もバトーさんが自身を見失っている演出という解釈もできると思いますし。
僕たちが見てて理解出来ない程バトーさんもやばい…みたいな楽しみ方もあると思います。

…とは言っても、そんなことに注目しなくても良いと思います。
本作は「映像作品」。
どれだけ哲学的なことを語ってもそれを「映像」に昇華しなければ、そのテーマ自体意味あるものにならないし「映像作品」としてやる意味もありません。
それこそ、自分の考えを綴った本でも出せという話です。
でも本作は「映像面」だけでも楽しめるようになってる、内容なんてプラスアルファぐらいに考えてもいいかもしれません。
背景がCGで人物がセル画で動いてるから、違和感というか浮いているというか、とにかく不思議な気分にさせてくれるんですよね。
その不思議さは現実と幻を織り交ぜた今作に凄い合ってるから「映像作品」としての意味がちゃんとあるように感じます。
あと純粋に作画が美しい、流れるような動きは見ていてとても感動的に思えました。

でも映像が美しいからといって、人には勧められないんだよなぁ。正直「面白い」アニメではないです。
オススメされて見るようなアニメじゃないと思うし、エンタメ性も低いからそういうのを求めている人はホントにダメだと思います。
それとアニメが好きな人って作画とか演出とか題材とかそんな感じのを意識して見てる人が多いと思うんですよね。
「作画が良い!」とか「演出が神がかってる!」みたいなことが言える人からすれば凄いとは思えるとこがあってもでもそんなの全く興味ない人からすれば「良い作品」と思えないんじゃないかな…差はあれど、普通のアニメの楽しみ方から遠ざかっている気がしますし。
いわば「アニメが好きなほど盲目になってくる作品」と言ったところでしょうか。
盲目にならなければ良い点が見つけられないというのは少し考えものな気がします。

僕の評価としては「とても良い」。
けど「凄い作品」とは思えるけど「良い作品」とはどうしても思えませんでした…。
この「攻殻機動隊」は良くも悪くも押井守さんの色に染め上げられてますので、好き嫌いが別れやすい作品だと思います。

[推薦数:2] 2014/03/18 とても悪い(-2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:15(38%) 普通:11(28%) 悪い:13(33%)] / プロバイダ: 1475 ホスト:1371 ブラウザ: 10022
取り合えず低評価を下すほぼ全員が思ってることとして
「本作の失敗は、本当に単純な結論をやけに小難しく語ってるだけで内容がそれ以外に無いこと」
につきると思う

次に絵の方に移る
シーン毎にレンズを想定して、そこを元にコンテを描くってのは出来てる
当時5億だったかの高い機械をわざわざ使い、画面統制をしたのは劇場用アニメだなぁっていうクオリティの高さではある
昨今の予算がテレビレベルの劇場アニメには不可能な事だろう
が、突き詰めすぎた代償によってほぼすべてのシーンがアニメーターを公開処刑しているような2dとの不一致を起こしてるし
そもそもメインとして使うのにはバトーは適してない(目が白丸なので、演出として使うのはかなり厳しい)
唯一アニメとして執念を見せてるのは犬のシーンのみというのも大きい

最大の問題はカット割演出
昔からIGは演出家不在で、人狼やブラッドでも見せた絵だけ上手いスタジオと思ってたが
本作もその例にもれず絵を殴り捨てるような腐った演出をしてくれている
一番分かりやすいのが、全員メンチ切ってるはずなのに誰が何処を向いてるのか全然分からないヤクザ事務所のシーンや
5カットに1カット広角パースをいれないと気がすまない手癖
映画的にはなっているが、絵で語るのではなく膨大な台詞で語るのもあいまって
いくら処理や素材が良くてもこれじゃあ嫌悪感どころか失笑さえ出てくる

まとめに、本作がなんでこのマイナス点を差し引いてもこの評価位置に居るのかってのか
「徹底的にアニメだから逆にその点を観客が類推することに慣れきってしまってる」というオチができる
この腐った演出っていうのは、テレビアニメじゃ「よくあること」なのだ
アニメばっかり見てる中毒者であるほど高評価を下しやすいというとんでもない構図ができてしまった事は、うる星やつらやご先祖様であれだけ冒険した演出をやっていた押井にとっては皮肉だろう

アニメを嫌っている筈なのに、アニメの枠に囚われた囚人であると告白するようなアニメ
[共感]
2016/09/20 押井はアニメは嫌いとか言ってた癖に、自分の作品はアニメである事に甘えてるのでムカつくんですよね。押井作品の根底に横たわる普遍的な問題の正鵠を得たレビューです。 by 古典主義
2014/04/08 >アニメばっかり見てる中毒者であるほど高評価を下しやすいというとんでもない構図←これ正に僕のことですわ……すごく納得しました。 by 狗が身

2014/01/04 普通(+0 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:798(60%) 普通:335(25%) 悪い:190(14%)] / プロバイダ: 8835 ホスト:8688 ブラウザ: 7858
【良い点】
・映像が綺麗
・哲学的な問いかけがあり、深いテーマ

【悪い点】
・とにかく難しい

【総合評価】
まず、攻殻機動隊を観ていないと何が何だかわからない。
哲学的なテーマは何度も視聴して自分でも勉強しないと理解できない。
しかし、そこを掘り下げてみたいと思えるテーマに挑戦しているのは初見でも
理解できるし、到達した時に見えてくる景色があるのだろうと思える。
非常に時間がかかりそうだが‥。

[推薦数:1] 2013/10/30 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:458(74%) 普通:2(0%) 悪い:163(26%)] / プロバイダ: 34060 ホスト:33921 ブラウザ: 7460
「映画版攻殻機動隊の続編か……え、観る意味あるの?」と思っていた。
いや、面白かったんだけど、ストーリー的な続きは別に必要ないんじゃないかなぁって。
でも観ちゃった。
そしたら、すんげー面白い。

相変わらずストーリーというかテーマの部分に関しては「自分で考えてください」と言わんばかりだ。ワケ分からん。それだけなら良いんだけど、本作の場合、考える気になれないんだ。
だって人間と人形だぜ? それに命とか虚構と現実を織り交ぜてくるんだぜ? 降参ですわ;
そしてキャラの会話はテンポをぶつ切りにする禅問答や引用の応酬ときた。

ついでに言うとキャラも面白くもなんともない。普通。というか面倒くさい。偉人の言葉を引用にするのがこの世界では流行っているのだろうか……。


というワケで最初からストーリーの方にはまったく注目せずに、その映像美のみを堪能することにしました。結果的にはこの判断は正しかった。

美しい。本当に、美しいとしか言いようがない。
CGによる背景ビジュアルは圧巻。ブレードランナーを彷彿とさせる街並みが、全てCGで再現されるなんて思わなかった分、衝撃も大きく、感動は言わずもがな。
このCGに関しては、よく「手描きが浮いてしまっている」という指摘を見かけるけど、僕はこれで良かったと思う。
違和感があるという点には同意する。でもこの違和感こそが、本作になくてはならないものなんじゃないかなぁ。CGという虚構の世界に浮いてるリアルな人間。これって、本作における生死や虚構と現実という題材に合ってると思うんだよね。
だって普通に考えてさ、CGと手描きとで違和感があるなんて、観れば分かるもの。それを修正せずにそのまま採用したってことはそれだけ拘りがあるってことだろうし。(そうじゃないならただの思い上がりの阿呆ってことになるけど;)

CGの背景を一点からのみ映すのではなく映画的な手法でダイナミックに魅せつけたりするからか、CGにチャチさは一切感じられない。虚構ではあるけど、間違いなく現実の世界として出来上がってる。
一方で人間は前作以上になんだか無機質というか、人間味が薄い。CGの背景を写実的に映して、人間を虚構っぽく描ことで、不思議な映像になっている。ほんと面倒くさいことするな、この人。その面倒くささが好きなんだけど。

あとはやっぱり、音楽が素晴らしいなぁ。なんつーか、本作はSEとBGMだけでも本編全部聴ける自信がある。音の全てが気持ち良い。
むしろBGMでもうテーマとか題材まで語れてしまえてる気さえしてくる。一番要らないのがストーリーと言ってしまってもいいレベル。


前作までにあったジャパニメーション臭が消え、純粋なアニメーションとして一段階進化した観のある一作。でもお勧めはしない。自分から観たいと思って観ないと、きっとこの作品(に限らず押井作品全般)は楽しめないから。

[推薦数:3] 2012/12/24 普通(+0 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:201(74%) 普通:41(15%) 悪い:31(11%)] / プロバイダ: 38411 ホスト:38331 ブラウザ: 9890
現実の女が触ったらガラスの如く砕けてしまう、少女のように繊細で叙情的なおっさんの感傷

己の分身、半身かとも思った女は生身と自分を捨てて、神の如く人とは異なる存在になり、
それでもその女は自分を見捨てず、遠くで、近くで、呪縛するように見守っている。
嫁も子供も居らず、守るものも無く、その代用として物言わぬ犬に慰めを求める。

諜報戦のプロ、レンジャー部隊、屈強な戦闘サイボーグ。
ヤクザ相手に銃をぶっ放し、向こう見ずな大立ち回り。
…だから?

バトーは孤独で、空虚で、思春期の少年どころじゃないレベルで自分を見失っています。
それはサイボーグだからじゃない。生身を失ったからじゃない。
少佐がいなくなったからじゃない。

これはそういう、いい歳こいて自分を見失ったおっさんの心の漂泊を描いた映画で
電脳化だとか、人形だとか、その辺は装飾や、その心情を表現する手法でしかないんじゃないかなーと
そーいう映画だと思えば、そーいう映画として受け止められるんじゃないかと思います。
ハードボイルドというよりは、かたゆで卵の食品サンプルって感じの映画ですが。

映像に関しては、美しいことは美しいですが
既に「この時代では凄かったかもね」くらいのものに感じます。
(「CGだからすごい」なんて映画の評価の付加価値としてどうよ?と正直思いますし。)
そういう意味では今のほうが、こけおどしに惑わされず映画として楽しめるのかも。

ただやっぱり、マンガから入った身からすると、
この少佐もバトーも、士郎正宗の攻殻機動隊のキャラじゃない。
原作どころか原案?ってくらいの割合で、前作よりもさらにかけ離れました。
この映画版バトーの人格はSACにも影響与えちゃってて、なんだかなーという気持ちは拭えません。
映画としてそんなに嫌いなわけじゃないですが、人に勧められるかといわれると困るし、
これが日本のアニメの代表作…というにも例外中の例外というか
あくまで、「押井守監督の映像作品」だな、と。
劇場版パトレイバー一作目のような
他主要スタッフとの折衝の上に成り立ったようなバランス感覚は、コレにはありません。

嫌いじゃないけど映画としての評価は普通です。
見てたら眠くなったし…
[共感]
2012/12/24 僕もこの作品の流れるようなイメージの連続や計算して組み立てられた映像と音楽を食すのが好きですが、反面押井氏自身の心情を吐露した感傷的で未成熟な思想めいたものは皿の上に残したいと思いました。近未来における「肉体」の考察などSFとしての問題提起や哲学的思索は悪くないのですが、考察に広がりがなく、多くの引用も面白いのですが単に演出の小道具止まりとなっていると思います。押井氏自身の中で解決できない個人的な問題が作品に照射され、堂々巡りしてしまった感がありますね。彼の「告白」なのでしょうこの作品は。「自分を見失った」や「心の漂泊」という言葉にもとても共感しました。 by cipherxx

[推薦数:2] 2012/12/20 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:147(70%) 普通:47(22%) 悪い:15(7%)] / プロバイダ: 8030 ホスト:8318 ブラウザ: 5143
DVDで視聴。安く売っていたのでDVD買いました。

【総合評価】
近年の惜しい守監督の秀作のひとつであり(他の秀作は「スカイクロラ」)、しかし観る価値の無い駄作でもある。

いや「人間と人形の関係性うんたら」とか、僕の人生に死ぬまで関係ないから。CG頑張りすぎてセル画とのマッチング失敗してるから。タイトル変えるだなんて原作蔑視も甚だしいし(これは鈴木プロデューサーの犯行)、しかも前作見ていないと肝心なトリックが無意味になるし、しかもオチはSACでも使われた原作漫画の1エピソード。

難しそうな事を難しく語るとインテリに憧れる愚者は「そうそう、そうなんだよねーさすがぁ」と相槌を打つ事しか出来ない。自分の無知さを露呈するのが怖いからだ。抽象的だから見る側が勝手に補足して解釈してくれる。惜しい守監督作品は常にその恫喝の為に難しそうな事を難しく語り続ける。いやでもやっぱ人間と人形の〜とか関係ないから。っていうか変な引用はエヴァの真似でもしているつもり?
実際の惜しい守はインテリでもなんでもなく、単なる映画コンプレックス持ちの全共闘時代乗り遅れ世代の亡霊でしかないと思われる。それに賢い人なら難しい事でも簡単な言葉で語る。

そもそも惜しい守作品はマニア以外には「強烈な睡眠剤」でしかない。知人が惜しい作品を観たと知れば「どうだった?」と尋ねるが、ほぼ100%の確立で「それが途中で寝ちゃって…」と返事が返ってくる。
しかしマニアは我慢して惜しい守作品を見なければならない。「こんな作品の為に何年もの間この有名アニメーターの仕事が見られなかったのか…」という歯痒さを噛み締めながら。

しかしこの「イノセンス」は個人的には結構気に入っている。
はっきり言って「狂っている」からだ。
本作は珍しく脚本自体も押井守監督が手がけているが、その為なのか構成がしっちゃかめっちゃかなのだ。うっかりしていると「この刑事たちは何の事件を追っていたんだっけ?」と悩む事になる。実はひとつの事件しか追っていない。えーっ? いやいや、そうだったそうだった。謎の事件を追う刑事2人と同様、見る側も思いっきり混乱させられる事になる。そここそが映画としての本作の真骨頂だろう。インテリぶっているつもりの監督が脚本家というフィルターを失ったが為に、監督の狂っている感覚がストレートに映像化されているのだ。これは相当レアな事だ。

小難しい事を延々と語ったのに全く意味が無かったり、デジャヴュの世界を迷走したり、グロテスクに暴走する擬体少女、監督の飼い犬、無駄にバイオレンスなヤクザ襲撃と、感覚の狂っている監督が視聴者に理解させる努力を放棄したまま全力で映像化してしまった妙な濃密さがある。言わば「監督の包み隠さぬ姿」で、それは他の殆どの監督が隠している姿だ。だって、そんなの売れないから。売れるためにきちんと脚本を構成し、無駄を排し、予算とスケジュールを考えながら大衆に求められる作品を作る。しかし本作は監督の脳内妄想を2時間にまとめただけの濃密なマスターベーションでしかない。そんな作品がきちんとした予算と有能なスタッフで超大作として製作される事など普通ではありえない。アニメに限らず映画映像作品全てにおいても相当珍しい事だろう。

なので、著名なクリエイターの偏執的な部分を観たいのであれば本作は相当の価値を持つ。
本作の評価すべき部分は、その「濃さ」にしかないだろう。
エンタメを求める普通の人は出来るだけ避けたほうが良い作品である。
[共感]
2013/10/30 >著名なクリエイターの偏執的な部分を観たいのであれば本作は相当の価値を持つ。 ←これがあるから、安易に人にお勧めできないんですよね……^^; by 狗が身
2012/12/26 この評価で「ああ、地獄の番犬ケルベロスもそんな感じだったかも」と思い出しました。「濃さ」も間違いなく映画の価値観のひとつですね。広く受け入れられるかはまた別ですが・・・ by N2

[推薦数:1] 2012/07/08 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴 / プロバイダ: 12213 ホスト:12430 ブラウザ: 5599
【良い点】違和感のすくないCG、手描きのハイブリットアニメである点。コンビニのシーン。

【悪い点】音楽のイメージが前作と同じ。演出作画ができてない点。

【総合評価】この作品は、一言で言えばデジタルの世界と、アナログの世界の融合をテーマにしている。また、その表現を演出の方法論で、挑戦したアニメである。
この世界の人間は、常にネットつまり、デジタルの世界とつながっている。意識を他人と共有できるが、まだ人間の本来持っている性を捨てられずにいる。つまりまだ、進化途中。絶対的に人間である。そこに、留意しなくてはならないと思う。

そんなイノセンスの世界観。
人間達、義体(体は機械でも脳は人間)達=一人では生きてはいけない性、ものを食べなければいけない性、死から逃げられない性、愛を求める性、その繰り返しの毎日=輪廻。
対比
素子(前作でデジタルの世界と融合した女)=人間の持っている性を超越した存在=永遠。
高度に進化した、デジタル社会を「輪廻」と、「永遠」に昇華した、押井監督のセンスは素晴らしい。
素子の存在つまり、前作の主人公を理解しなければ、イノセンスの世界観を理解するのは、難しい。だから敷居が高い。反面、理解できればとても楽しめるアニメとなる。素子とバトー(本作品の主人公)の愛の物語でもあるため。
バトー私生活もしっかりと、丁寧に描かれているのは、美点。
次に、主なキャラクター達。

バトー=守るべきものや、確固たる目的意識を持たない=命を大切にしない。
対比
トグサ(妻子持ちバトーの相棒)=守るべきものがある。生への執着心がある=命を大切にする。
バトーは、前作で好きだった素子と別れて自暴自棄になっている。しかし、一人でいることは、さびしいようで「犬」と一緒に暮らしている。
トグサは、きわめて常識人。
また、キム(ハッカー)の話で、人間の「輪廻」、または、「人の業」を象徴している。また、その世界から救ってくれたのは「輪廻」を超越した素子であった。あの何度も繰り返しのシーンである。
つまり、人間達が「輪廻の性」から抜け出したこと、を表現している。

次に作画表現に関して。
この作品は、手描きの作画とCGパートの整合性をとるため、実験的にキャラクターデザインを単なる立体的な造形として表現している。したがってそのキャラクター達は、性や色っぽさ、感情を感じさせない。
しかし、その反面、CGパートに移行した時の違和感は少ない。その上設定上多くの人間が「義体」なのだからそれで言いと言っている様な気がする。
しかし、人間達や、義体も含め、人としての性が捨てられないものとして劇中では同じ者として、確実に表現されている事は事実。
そこに、論理矛盾がある。つまり、人の性を巧く、演出作画で表現できていないのだ。
動画の線には、それらしい手書き風のタッチが加えてあるが・・・。
あまりに、手描きとCGとの整合性を目指した結果、キャラクター達が、単なる造形になってしまっている。
その造形が、美しい芸術性を持っていなくてはならないのに、ただの抑揚のない「形」になってしまっている。CGとの整合性を突き詰めるあまりに、人体の持っている造形美、つまり前作にあったルネッサンス的な美しさが、ない。
義体とゆう事を、逃げ場にしては、いけないと思う。キャラクター達には、ちゃんと演技させてほしかった。
表現なのだから・・・。
今思うと、バトーを助けに出てきた時の素子の「戦闘用の義体制御システムでいっぱい、表情と顔は、このくらいで勘弁して・・・」とゆうセリフが全て物語っているような気もする。

CGに関してもイノセンスは、公開当時でもすでに、衝撃的とゆうほどでもなかった。
すでにファイナルファンタジー、スターウォーズなどで、美麗なCGには見慣れていた印象。
とは言っても、その手描きとCGの整合性や、テーマである「デジタルとアナログの融合」を、違和感なく表現したのは、素晴らしい。
反面、人間のアナログの部分をあまり表現できなっかたのは、とても惜しいと感じる。
その、押井監督の志は、高く評価したいのだが・・・。多少実験的になりすぎた気も・・・。

2012/05/28 とても悪い(-2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:3(50%) 普通:1(17%) 悪い:2(33%)] / プロバイダ: 1779 ホスト:1599 ブラウザ: 5345
【良い点】
重厚なストーリー
素子
待ち望んでいた、攻殻での身体論
【悪い点】
↑のように期待していたのですが、結局言葉遊びに終始した気が…
盛り上がりに欠ける
【総合評価】
この作品は言葉遊びに執着しすぎて、視聴者を選んでしまった感がありました。アニメを愚弄された気がしました。自分は攻殻自体は大好きなのですが、これはいただけない。これは、アニメという表現方法を用いて放たれるべき作品だったのでしょうか。確かに映像はきれい。世界観もよくできている。だけど、アニメのもつ「軽さ」なんてものはどこにもなく、ただ鬱屈した空気がそこには沈殿しているだけ。観ているこっちも不快になってきます。もちろん、そうした鬱屈した作品も必要かもしれない。だけど、これまでの攻殻シリーズのように、難解な問題、事件が解けていく疾走感、躍動感を以てアニメの良さを引き出すような素振りも見せず、ただただ小説のように先達の言葉を羅列しているだけ。もっとバトー自身の声を聴きたかった。重厚なストーリーと書きましたが、それもコミックに似通ってました。期待していただけに、現実との落差が激しい作品でした。評価はとても悪いで。

[推薦数:1] 2012/05/17 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴 / プロバイダ: 16716 ホスト:16626 ブラウザ: 4894
【総合評価】
この「イノセンス」は前作「GOHST IN THE SHELL」で培った話をもとに続編として作られたが、文芸面でもビジュアル面でも全てにおいて押井映画の集大成に相応しい最高傑作となった。2000年以降でこんなに凄いアニメに出会えるなどとは思いもしなかった。もうただただ目の前で繰り広げられる世界の前に私は黙るしかなかった。語る言葉を持ち得なかった。それでも何とか言葉にして語ることはできないものかと一生懸命あれこれ文献を探り、必死に勉強し、何回も徹底的にこの作品を見直した。実際この作品を全て自分のものにするために、この作品だけで100回近くは見直している。それでもまだこの映画の持つ圧倒的なパワーには毎回驚かされてばかりだ。泣いたわけでもない、笑ったわけでもない、ただ只管にこの作品を受け止めるだけだ。

この作品は「パト2」以上に押井氏の日本及び人間に対する絶望感が露骨に出ている。この作品ではそれを全て言葉にし、時には偉人の名言を引用してまで全て言葉にして語らせている。それでありながら前作から続いている「バトーと草薙のプラトニックな恋愛関係」、「人形と人間の区別の曖昧さ」、「人間という生き物の不確かさ」を一本の刑事ドラマの中に尺として見事に収めきっている。と同時にこの作品はもはやこれまでに出てきたロボアニメも含む全てのSFアニメを総括しかつその行き着く究極の世界までをも示して、これ以上のカッチリした世界観は魅せられないという限界点をも示してしまった、まさに「SFアニメーションの頂点」なのである。富野も宮崎も庵野も高橋もありとあらゆる日本のSFアニメ作家が行き着こうとして誰も辿り着くことが出来なかった世界観とお話に押井氏は己の持つ作家生命の全てを賭けて行き着いたのである。この作品が織りなす重厚な世界観とCGと手書きの融合による美麗なアニメーションには押井監督とProduction.I.G.のスタッフの並々ならぬ意気込みと熱意がひしひしと伝わってくる。結果として興行収入自体は並みだったにせよ日本SF大賞を受賞しカンヌにまで出品され(日本アニメでは今のところこれだけ)海外でも高い評価を得ている。また、今再評価の兆しがあるように思う。

さて、前置きはこれぐらいにして本格的にこの作品の批評に取り掛かろう。まず、文芸面で見て行くと、このストーリーは前作「GOHST IN THE SHELL」で草薙が行方不明になって三年、バトーが隊長の座を引き継ぎトグサがそのパートナーになっている。そうした世界観でバトーは表には出さないけれどもあの頃より円熟味が出て優しいキャラクターになり、トグサも青臭さがなくなって一端の刑事になっている。そんな中で今回出てくるのは人形の話である。少女型の愛玩用アンドロイド「ハダリ」が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した。その大元を追ってバトーとトグサは捜査を開始するわけだが、この作品において一番の根幹を織りなすのは「究極の身体論」である。バトーとトグサが捜査の中で出会う多くの人物達はそれぞれに身体に対する確固たる哲学や主張を持っており、引用がちりばめられた会話によって身体論は複雑になっていく。だが、どの主張も一見して筋が通っている反面、どれも個人的感情を越えることはできないままだ。他者の思想を肯定することも否定することもできないまま、主人公であるバトーにも答えは見出せず、ただひたすらに個人的な葛藤や職務と戦い続けるのみとなってしまう。

特にこのアニメで一番痛烈だった主張は一番の大ボス的存在だったキムの「人間の認識能力の不完全さは、その現実の不完全さをもたらし、そして、その種の完全さは意識を持たないか、無限の意識を備えるか、つまり人形あるいは神においてしか実現しない」という台詞である。要するにこの台詞でもって押井氏は「もう人間なんて人形と同じだ。全部自分で勝手に世界を作り上げて、その結果こんなろくでもない世の中になっちまったんだ」というところに至る。そう、我々人間とは何ともいい加減で不完全な生き物なのである。このように偉そうな作品批評をしている私ですら、自分が書く作品批評が偏っていることなど自覚済みだしからよらない批評など存在しないのである。これは小津安二郎映画にも共通して言えるテーマであり、映画監督でもあり批評家でもある吉田喜重は小津安二郎生誕100周年記念のシンポジウムで、「小津監督は現実がいかに無秩序でかつ人間という生き物の見る目がいかに不確かであるかを知っていました。しかしそんな世界の中に敢えて小津監督は秩序を与えようとしたのでしょう。それがあの徹底したローアングルや真正面の切り返しショットに出ている」と語っている。

そう、人間とはどこまで行こうと結局完璧にはなれない存在なのである。本当に完ぺきになるならば意識すらも捨てるか、人形か神になるほかはない。つまり魂を与えられ自分という立場を与えられている限り人は自分以外の視点で物事を見ることも語ることも出来ないのである。想像や推測はできても結局それは個人が出来る領域を超えることはできないのである。だからこそその行き着く究極が無限の強さを得るために自分や愛する人と似た人形を作り、そこにオリジナルを基にした偽人格(この作品ではゴーストと言う)を吹き込んであたかも人間であるかのように生きさせるのである。そしてこれに留まらずキムの主張は続き「外見上は生きているように得るものが、本当に生きているかどうかと言う疑惑。その逆に生命のない事物がひょっとして生きているのではないかという疑惑。人形の不気味さはどこから来るかというと、それは人形が人間の雛形であり、つまり人間自身に他ならないからだ」「間が簡単な物質に還元されてしまうのではないかと言う恐怖。つまり人間と言う現象は本来虚無に属しているのではないかという恐怖」「人間もまた生命と言う夢を織り成す素材に過ぎない。夢も知覚も、いやゴーストさえも均一なマトリクスに生じた裂け目や歪みだとしたら」と続いていく。

しかし、是でさえも結局キム自身が自分で作り上げた都合のいい理論に過ぎず最終的にバトーにハッキングされ見破られてしまうのだ。ここが押井映画の凄いところであり、いくつもの人格に自分の言い分を語らせながらもそのいずれにも与さないという徹底して突き放した立場を取っているのである。キューブリック映画同様この映画も事ほど左様に台詞をメタにメタを重ねて成り立っている。そして、それでありながら最後の最後に出てくる草薙少佐とバトーの肉体を持たないが故の、でも確実に深まっているプラトニックな信頼関係は実にストレートに語られており適切に我々の中に響いてくる。そしてそのような禅問答には作中でだれも答えを持ち得ない。しかし、最終的にバトーは犬を抱きかかえ、トグサは自分の愛する娘の元へ帰っていく。そう、押井監督の行き着きたかったところは結局ここなのだ。なんだかんだいって結局人間というものは完璧である必要なんかないしかといって生きることをやめる必要もない。自分を埋めてくれる他の存在の中で自分の存在を確認できればそれでいいのである。実に当たり前で凡庸極まりない結論かもしれないがこれでいい。結局あれこれ悩みながらも人生ってシンプルなんだよってのが答えだったのだろう、少なくとも私はそう思う。当たり前ということは逆にいえば真っ当ということなのだから。

そしてこれらを可能にしているのが手書きとCG、そして音響で魅せるアニメーション技術なのである。この作品で使われているCGは他にアニメや特撮で使われているものとは趣を異にしている。『イノセンス』のCGは「虚栄」であり実体がない。我々はCGというと「現実にある事物では表現できないものを表現できる魔法の道具」という認識をどこかに抱いている。だがそれは逆に言えば「仮初めの偽りの道具」ということでもある。そのようにCGに対して妙な幻想を抱かずにその使い方を適切に見極めて効果的に使い、このような位置づけをしたアニメや実写、特撮も含め他に私は知らない。普通、CGは「夢の道具」である。この作品におけるCGの存在意義は圧倒的な映像美だけにあるのではない。この作品の真の魅力は「手書きとCGを巧みに使った映像美」だが、実はそれだけではない。確かにそれは半分は当たっているが本質ではないのだ。この一見して圧倒的なビジュアルもまた所詮は儚いものであるという冷徹なものでしかないという押井監督のスタンスに基づく静謐な存在なのだ。

そして動く存在は一貫して手書きのセルアニメーションで描かれている。バトーたちも人形も魂の宿っているものは全て手書きで書かれている。そしてこの人形の動きもまた面白く、前作「GOHST IN THE SHELL」で特徴的だった「リアリティコントロール」が群を抜いて素晴らしいのである。音響は勿論本物を使っているから今さら言うまでもないが、銃弾を食らって無表情にやられていく人形の断末魔の動きが実に凝っていて面白い。この人形の動きは当たり前に思えるかもしれないが、アニメーターはこの動きを実現するのに相当苦労しはずだ。今まで表情で出していた「撃たれている状況」を一切表情に出さず動きだけで伝えるというのは一番アニメーションにおいて難しいことである。しかもこれは押井映画なので当然ながら現実のそれっぽく動かす必要がある。だから「肩上げてごらん。腕だけで上がるんじゃないんだろ?こっちの肩が上がればこっちの肩は下がる」という人間の常識が人形の場合全然通じないのである。しかし、終盤での次々襲いかかってくる人形の動きは間違いなくその人形らしい動きを再現しておりアニメーターの血と汗と涙の結晶がここに詰まっているのである。これはいかにもアニメアニメした動きを見せるジブリアニメには出来ない芸当だ。

そして、若干の違和感はあるが、少なくともパッと見た限りでは分からないほどこの作品ではCGとセルが見事に融合している。実写、アニメ、CGの間に横たわるセルとCGという国境線を越えて、生命感はやってくる。ここまでやってくるともはやCGがどうのこうので争っていたことがもはやどうでもいいほどバカバカしく思えてくるのである。最後にはそんなもの全てを超越してこの作品の全てが一体となって生きていることを感じさせられる。人形の作り上げたでっち上げの世界でメタ的な台詞の応酬を交わしながら、それでも最終的に段々と生命感が宿っていくのだ。それは現代において魂のみが残り肉体的感覚を殆ど失った我々現代人に対する押井監督からの問いかけであり、そしてプレゼントなのだ。この生きることを実感することさえも難しい世の中で、ブレードランナー的な世界観を基に押井監督の持てる作家生命の全てが見れば見る程じわりじわりと伝わってくるのである。ここまで「生命」というものと一見真逆の世界観と話からこのような真っ当な答えにすんなり辿り着けた作品がほかにあっただろうか?少なくとも私は知らない。そして、この作品が証明してみせた人形に少しずつ魂の宿っていく過程には今までどんなSFアニメも成し得なかった「そこに世界がまるで存在するかのようだ」というリアリティを味あわせてくれるのだ。

だからもう、この作品の凄さが一旦分かってしまうともうそれまでの「ヤマト」「ガンダム」「エヴァ」などどんな御大層なSFアニメも、またSFの皮を被った荒唐無稽なアニメももはや石碑程度の存在感しか主張できない。文芸面においてもビジュアル面においても、これ以上に分かりやすくて価値があって、かつアニメーションとして突きぬけてる作品は他にない。少なくとも私はそう思う。この作品に今の時代出会えたことを感謝したい。恐らく今後どんなに画質やCGの優れた作品が出てきても、どんなに吃驚仰天のアイデアが出たとしても、作品世界の織り成す重厚さ・緻密さでこれを上回るリアリティを出せるものは存在しないと思う。まさにそんなアニメーション業界が目指した頂点へと行き着いた「最高傑作」、それが私のイノセンス評だ。今後この評価はずっとかわることなどないだろう。評価はもちろん「最高」である。最後に一言…押井監督、お見事です。

2012/02/23 とても悪い(-2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:1(50%) 普通:0(0%) 悪い:1(50%)] / プロバイダ: 29625 ホスト:29546 ブラウザ: 7353
・ストーリー性が皆無でした

・期待度が高かったからか本当に残念な作品でした

・引用ばっかで自分でセリフも書けないのか情けない、偉人の言葉を借りてるだけで残念
もっと少なく狙って使って欲しかった

2011/07/18 とても悪い(-2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:1475(50%) 普通:0(0%) 悪い:1501(50%)] / プロバイダ: 3334 ホスト:3198 ブラウザ: 4895
攻殻に興味がなく作品も前作の映画しか観てない者にとってははっきり言ってつまらなかった。
前作についても大分前に観たので設定も世界観もほとんど忘れてしまっているしついて行くのがしんどかったけど、それ以前の問題でこんなの小説で十分やん♪って感じ。
ストーリーも内容もなくセリフの大半がどっかから借りてきた言葉だったり、ストーリーに繋がりがあってその言葉を発するなら視聴者もついて行けるだろうがただ羅列したところでついて行ける訳もないし、その言葉自体に意味はあるのだろうが前後に意味が無ければその言葉を知りたいとも思わない。
つまり視聴者にとっては訳の分からない地名を言ってるに過ぎない。

肝心のストーリーを置き去りにして自分の中だけの言葉で説明に置き換えてるからいちいちテンポが止まるし、ストーリーも内容もその言葉自体も頭に入ってこない。
言いたいことが分かるところもあるけど、それが伏線になってる訳でもなしでただ置いてるだけだから言いたいことも伝わらないし、意味も持たない。
ストーリーの中で見せるからこそ言いたい事も説得力が持つ訳だし、これでは自分だけが分かってるセリフにしかならない。

根本的に言いたいことを詰め込み過ぎていて、作品を借りて言ってるだけというのかまとまっていないし結局何が言いたいのか分からなくなってしまっているし、言いたいことを並べてるだけだからどうしても作品自体が説教臭くなってしまうし、一つのテーマに討論を見せられてるかのようでそこには内容とかキャラ性とか全く意味がなく発言に意味はあってもキャラに魅力は感じないし、その討論が面白く感じる部分もあるけど映画ではない。
しかも映画の場合、特に押井作品の場合は監督一人の考えの元で作られるだろうから向かうべき発言も一点しかないし、意外な方向からの着眼点とかもないからそういった面白さもなく結局のところ自己満足にしかないない。
だから偉人の言葉を羅列するだけになってしまうんだろう。

一番の根幹である人形の暴走や事件の内容を後回しにして、余計な説明ばかりで最後の方でちょろっと事件の説明があるのみ。
事件と直接ストーリーに繋がりがないからストーリーに入っていけないしそれで理解してくれって方が無理がある。
やはり視聴者ってのは口だけで説明するのではなく、ストーリーの中でやシーンで見せていかないと理解されにくいしそれを視聴者のせいにするのはお門違いだし単に視聴者に任せているというよりかは押し付けてるに他ならない。

映像も正直思ったほどではなくて環境が悪かったせいかも知れないけど、はっきりとした理由はどんなにスゴい映像を見せられてもストーリーが無ければ盛り上がりもないしスゴい映像に見えないということ。
特にアニメの場合は実写と違って身近に感じるようなリアリティがないから、スゴい映像を置いただけではあまり意味がない。
映像だけで引き込むことは実写ほど簡単ではない。

説明とか語りが多いってのはこの作品らしかというのか雰囲気は良いんだけど、映画としてはストーリーが分からないから面白みがなかったし最初の助けてというセリフや最後の人形の表情、主人公の哀愁というのか内容(+相棒との関係)、自分と似たロボットだったり人間とロボットの違いとは何かとかそこら辺の内容をまとめ上げて一本のストーリーにして余計な偉人の言葉とか取っ払えば面白くなっただろう。
言いたい事は分かるのに響いて来ないのが惜しい。

これを観て攻殻に興味を持つことは絶対にないし、変な方向に行ってるのか奥に入り込み過ぎて細かくなりすぎてしまってるのか攻殻としての純粋な面白さは前作の映画の方があったかも知れない。

2011/04/12 普通の立場コメント [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:7(50%) 普通:4(29%) 悪い:3(21%)] / プロバイダ: 22624 ホスト:22603 ブラウザ: 12706
【良い点】
・映像、音楽が素晴らしい。劇場版というだけあって美しさはかなりのものだと思う

【悪い点】
・難解すぎる。
攻殻機動隊を見る前にこれだけ見てしまいただでさえ難解な意味がさらに良くわからなかったのを覚えています…

【総合評価】
全体的に良いと思います。難解ではありましたが映像と音楽の美しさだけで一応は楽しめました。
特に音楽はかなり良かったです。
あとこの監督の作品ではよくあるのですが、CGの背景や小物がリアルすぎてアニメキャラクターが浮いて見えることがしばしばあり、それが少し気になります…

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2017/10/08 好印象 by (表示スキップ) 投票履歴 / プロバイダ: 35967 ホスト:35775 ブラウザ: 8268 [編集・削除/これだけ表示]
感じた事格好良い/美しい/考えさせられた/勉強になった/道徳心&モラル 
ストーリーとても良い(+2 pnt)
キャラ・設定最高(+3 pnt)
映像最高(+3 pnt)
声優・俳優とても良い(+2 pnt)
音楽とても良い(+2 pnt)

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