みずたでぜんまいのブログ

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12019/03/23 『ライチ☆光クラブ』最終話(第九話)『ライチ☆光クラ..
22019/03/16 『ライチ☆光クラブ』第八話『薔薇の☆処刑』感想..
32019/03/09 『ライチ☆光クラブ』第七話『機械(マシン)が見る夢』..
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2019/03/23 (2019/04/06更新) 「『ライチ☆光クラブ』最終話(第九話)『ライチ☆光クラブ』感想」
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『暗闇で果てた者の声』

暗闇から誰かの声が聞こえる。その人物は床に横たわり、自分の腹部から飛び出した臓物の内、
大腸を掴みながら、ぼんやりと呟いた。「醜いな・・・・・・。これでは・・・・・・と
同じじゃ・・・。どうして、こんな事に・・・・・・。どうして・・・・・・」

※光クラブの人数に合わせるのを狙っているのか、本作は全9話構成となっております。
リーダーのゼラと、番号の付いた部下8人で全9人となります。便宜上、ライチとカノンも
含まれたりもしますが、あくまでイレギュラーな存在です。ライチは光クラブ全員に服従するロボット、
カノンはクラブの美の象徴と、明らかに正式メンバーとは区別されて扱われていますので。


『浸水と復讐の進行』

この自身の腸を掴んで果てた人物の死より数十分前。基地の入口でゼラを待ち構えていたタミヤは、ジャンプすると
鉄パイプを振りかざして襲いかかる。「ここは俺の「ひかりクラブ」だ!!」「ひっ、タミヤか!」部下も平常心も
対抗手段も失くしたゼラは、青褪めて逃げ惑うしかない。「ひい。うわぁ」「ゼ・ラ・ア~!死〇ええぇ!」「ひっ」
「もう終いだ、ゼラ!!」「まっ、待て。ゆっくり話そう。なっ、タミヤ」容赦なく鉄パイプを何度も振り下ろす
タミヤの気迫に、ゼラは腰を抜かす。その隙を逃さず突いたタミヤはゼラを押し倒し、首に鉄パイプを押し当てて追い詰める。

※あの穏和だったタミヤが本気で人を殺そうとする様になって、少々やり切れない思いをしました。
過激思想ですが「仇打ち等、正当な目的さえあれば復讐は正義」だと考えているので、彼を批判する
気持ちはありませんが。それに「世の為、人の為に消えねばならない命」だって、ありますからね。


情けなく命乞いするゼラに、本来の温厚さを捨て去り復讐鬼と化したタミヤは一切、容赦しない。やっとの事で
追い詰めたゼラに、不敵な笑みさえ見せ付ける。「へ。良い気味だ、ゼラ。水が、お前をじわじわと沈めて行くんだ!!」
仲間達を理不尽な死へと追いやった彼への復讐に王手をかけたタミヤに、どうする事も出来ないゼラは泣きじゃくる。

「ひっ。やっ、やめ・・・。おおお前が裏切るから悪いんじゃないかあ・・・。あっ、あっ。
ひぐ。ひっ。返せよ・・・。ひっ。僕のライチ、返せよ~~」幼児の様な醜態を晒し、未だに唯一人、
真実に気付かないゼラ。彼に怒りを爆発させたタミヤは、ついに真実を語り始める。

『真実の弾丸の行く末』

「ゼラ!お前は、まだ気が付いてねえのか?真の裏切り者に!!」
「な、な、何言ってんだよぉ。お前が」「よく聞け、ゼラ。この光クラブを、ここまで
崩壊させたのは俺じゃない。3人の少女を逃がし、その罪をダフに擦り付け、無実のダフを
処刑にまで追い込んだのは誰か!?」「3人の少女・・・。ダフじゃないのか?」

「俺の妹タマコを凌辱したのは誰か!?」「い・・・妹・・・?僕はそ・・・そこまでしてないぞ」
「そしてライチ畑に火を点けて、俺とニコを焼き殺そうとしたのは誰か!?」「え・・・」
「全ては、たった1人の男に仕組まれてた事だったんだよ。奴は裏切りと憎しみの種を撒き散らし、
お前を疑心暗鬼にし、ライチ畑を燃やし、光クラブを血に染めたんだ」「ま、ま、まさか・・・」


タミヤの叫びによって、朧気ながらゼラにも真相の輪郭が見えて来る。タミヤの怒号は激化し、
背後に「真の裏切り者」が立っている事も知らないままに、親友だった3人の無念をゼラに訴える。
「真の裏切り者」はパチンコでタミヤの後頭部を狙い、ギリギリと限界まで引き絞る。

「無実の罪で死んで行ったダフ・・・カネダ。そしてニコ。あいつらの無念、解るか!?ゼラ!!」

この言葉をタミヤが発した時。ゼラも彼の背後でパチンコを構える「真の裏切り者」の存在に気付いた。
その直後にパチンコの弾丸は発射され、タミヤの後頭部を撃ち抜き、額の中心にめり込んだ。「あ゛。
あ゛・・・あ゛?」何が起きたのか解らずに疑問の声を上げるタミヤも、貫通した弾丸が額に空けた穴から、
スプリンクラーの様に大量の血が吹き出す光景を目にして、ようやく自身の身に起きた事を理解する。
吹き出した血がゼラの顔面を真っ赤に染める中、タミヤの意識は次第に薄れて、今わの際に亡き友への無念を語る。

「ダフ・・・。カネダ・・・。俺達のひかりクラブ・・・取り戻せ・・・なか・・・」

※本作随一の人格者タミヤは惜しくも、ここで退場となります。本当に彼の人生や思いは
「無念」の一言に尽きます。力を尽くしてはいましたが、随所で詰めの甘い所があったのが命取りに
なってしまいました。最期の場面でも真犯人を誰か知りながらも、彼への注意を払っていませんし。
それでもタミヤが、現実でも架空でも存在する「善良であるが故、不幸を体現する人物」には
変わりないだけに殊更、悲しみを感じます。本作で一番可哀想なのは彼だと言えます。


『光クラブ崩壊事件の真相』

ゼラにのしかかる様にして倒れ込んだ時、もうタミヤは息をしていなかった。非業の死を遂げた後も、
額から止めどなく血を流すタミヤが腹の上に横たわる中。ゼラは「真の裏切り者」との対面を果たす。
当初は眼鏡にべっとりと付いたタミヤの血が目隠しになるも、段々と血がずり落ちて相手の正体が見えて来る。

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ。お前なのか?はっ。はっ。
まさか、まさか。はぁ、はぁ、はぁ。お前なのか!?ジャイボ!?」
「そうだよ。僕がやったんだよ。きゃは。どうして気付かないの?」


狂気を孕んだ瞳で妖艶に微笑みながら、ジャイボは「光クラブ崩壊事件の真犯人は自分」だと自白した。
自分を裏切る可能性は、最も低い所か皆無と見ていたジャイボが全ての元凶と知って茫然自失となるゼラ。
さっきまでジャイボは棺の中に潜んでいた為、全身が水浸しで何枚も薔薇の花弁が纏わり付いている。
普段にも増して色気を醸し出す彼の瞳は今、凄まじい狂気を宿している。用済みとなったパチンコを
床に捨てると、ジャイボは「光クラブを壊滅させた張本人」としての自供を哄笑して始めた。

「黒のキング、折ったの僕さ!カネダには筋弛緩剤を打って喋れなくしたんだよ。
致死量だったから、あいつ処刑しなくても死んだけどね。ニコの財布、抜き取ってね。
戻って来た奴に僕達の事、見せたりもしたよ」


一昨日のライチ畑炎上もジャイボの仕業であった。彼は手紙を使ってタミヤをライチ畑に呼び出した。
「ゼラについて話があるって、何だ?ジャイボ」無防備にも用件を尋ねたタミヤの前で、ジャイボは火を放った。

「タミヤをライチ畑に呼び出したのも僕さ!!付いて来たニコ諸共、焼き殺してやろうとしたさ!!」

『真の裏切り者にして真犯人の告白』

自白を終えた途端、ジャイボは冷めた表情を浮かべ、カノンの元へと歩き出す。光クラブ崩壊事件の経緯こそ
判明したものの、ゼラには未だに彼の動機は皆目、見当も付かない。他のメンバーであれば多少の察しは付くが、
相手は恋愛関係にあった上、誰よりも深い仲であったジャイボである。彼の意図を読めないゼラは問い掛ける。
「ジャ・・・ジャイボ。何故・・・何故なんだ」タミヤが倒れた地点から一歩も動かず、腰を抜かしたまま叫ぶゼラ。
対してジャイボはのろのろと棺の中からカノンを抱き上げると、ゼラの元に戻って心情の吐露を続ける。

「いらない・・・・・・。全部いらないよ。光クラブなんて無くなっちゃえば
良いんだ!!この女も、ライチも、全部無くなっちゃえば良いんだよ」


絶句するゼラの前に立ったジャイボは、カノンの肩を片手で支えて真横に立たせる。そして床から拾った
大型の三角定規の様なガラス片を彼女に突き付ける。2人の真後ろには機能停止したライチが、
今にも襲いかかりそうなポーズを取っている。意識の有無の差はあれど、銅像の如く動かないゼラと
ライチの間に立って、ジャイボはガラス片でカノンの頬や首筋を軽く引っ掻いて行く。

「ゼラの心を奪うものなんて、全部無くなっちゃえば良い!!」「や、や、やめろ」
「憎い・・・。ゼラの心を奪う、こいつが憎い・・・。僕を機械(きかい)にすれば良いのに」


ゼラが止めるのも聞かず、ジャイボは憎しみを込めてカノンの遺体を傷付ける。棺に沈めた直後、
死亡が確認されたというのに、ジャイボが恋敵と認識しているカノンへの憎悪は治まらない。
彼女を光クラブの女神であり、自分を救う鍵として見ているゼラは、カノンの遺体を死守しようと
口先だけの抵抗をする。「や・・・やめろっ。ジャイボ!!その子は」「随分と真剣になるんだね。
そんなにこの子が良いの?ねえ、ゼラ・・・。ゼラ、僕のゼラ。ゼラ、ねえ」「なっ。お・・・おい」

『狂おしいまでの一途な愛』

ジャイボの目に涙が滲む中、実は生きていたカノンが密かに動き出す。彼女はタミヤに託されたライチの実を、
こっそりと背後に立つライチの口へと運ぶ。カノンの行動に気付かずに、涙ながらにゼラへの愛の告白に至るジャイボ。

「ゼラ・・・。もう僕、綺麗じゃない?僕・・・もう声変わりが始まって来たよ。
あ、あ。あと、うっすら髭(ひげ)も生えて来たよ。あああ。僕は大人になって行くよ・・・・・・。
醜い大人に・・・」「お、おい」「やだよ・・・ゼラ。僕だけを見てて欲しいんだ。
あ、あ。愛してる。あ、あ。愛してるんだ、ゼラ・・・。あ、あ、あ」


咽び泣きしながら、ゼラへの一途な愛を言葉で示すジャイボ。光クラブ崩壊事件の全ては、彼が「ゼラへの
狂おしいまでの愛」から暴走して引き起こされたものであった。以前のジャイボは、ゼラにとっては
唯一の恋愛対象として、彼の寵愛を独占していた。だがカノンの登場によって、その自信は揺らぎ出す。

ゼラの手でカノンが「光クラブにおける最も美しい存在」として祭り上げられると、ジャイボはクラブの
美の象徴の座を追われてしまった。それ故に彼は「ゼラの恋愛対象がカノンへと移った」と感じた。

嫉妬心を爆発させたジャイボはカノンのみならず、光クラブのメンバーにもゼラの関心が向くのも
我慢出来なくなった。嫉妬に狂って暴走した末に、光クラブを壊滅させるに至ったのだった。

『漆黒の薔薇の散る時』

これらの真相を思い知らされたゼラは、ジャイボの背後から再起動したライチが迫り来る事に気付く。
ライチは両手を組んで作った特大の拳骨を、ジャイボの頭頂部に振り下ろす。ライチの拳はジャイボを
頭部から、グシャグシャに折り畳む様にして叩き潰す。最終的にはジャイボの体は、原型を留めていない
グチャグチャとした丸い肉塊に、無傷の両手足が生えた恐ろしい物体へと変わり果てた。
その姿には生前の美貌は欠片も残っておらず、人型すらも保っていない醜悪なものであった。

※雷蔵もジャイボも「美貌に強い自信を持つ絶世の美少年が、美貌を台無しにされて惨殺される
末路」なのが、また残酷ですね。ジャイボは気の毒とはいえ、当然の報いを受けたと言えますが。

彼の自信喪失はカノンだけが原因ではありません。『ぼくひか』で具体的に描写されますが、ゼラは大人を
醜い生き物として嫌悪しており、肉体的成長すらも否定しています。成人するのは普通は喜ばしい事なのですが、
ゼラにとっては大人に成長する事も、老化の一環でしかありません。だからこそ成長に伴い、体が大人へと
近付くにつれて、ジャイボは美が損なわれたと自信を失くし、恋人ゼラに見捨てられると不安視していたのも原因です。

いつも飄々としていた姿からは考えられない程、人知れずジャイボは苦悩していたのです。
「ゼラの大人否定思想に、最も翻弄されていた人物」と言えるだけに悲惨です。この後の展開も含めて。


『廃墟の恋人達の再会』

ジャイボの死によって解放されたカノンは涙を流して、返り血まみれのライチに抱き着く。普段は怖いもの知らずな
彼女も流石に殺されるとあっては、恐怖故に涙を禁じ得ない。再会した瞬間、カノンは言った。「怖かったよ、ライチ!」
「カノン生きてる。??どうしてカノン生きてる?」「初めて会った時、私、言ったわ。「水泳、習ってる」って。
タミヤ君がくれた1粒のおかげね・・・。ライチにまた会えた」亡骸となったタミヤに目をやりながら、
ライチに自身の生存理由を明かすカノン。廃墟の恋人達が再会の喜びを分かち合い、固く抱き締め合う中。

※第五話でのカノンの「潜水が得意」発言を、しっかりと記憶していた私は、彼女が薔薇の棺に
沈められるシーンで「あ。こりゃ助かるな。生きてるな」と確信して、安堵感に浸っていました(笑)


とうとう部下を1人残らず失った廃墟の帝王は、寵姫の様に扱っていた8人目の部下の残骸へと目をやる。
頭と胴体を叩き潰されたジャイボは、赤黒い小山の如き肉塊へと成り果て、トプントプンと緩やかに
噴水さながらに血を吹き出している。無残な肉塊に変わり果てたジャイボを前に、ゼラは笑いが込み上げる。

「はっ、はっ。ジャイボ。ジャイボ・・・。あっ、あっ、あっ、あ。
はっ、はっ、はっ、はっ、は。はっ、はっ、はっ、はっ。ひっ。
いーひっひっひっ!あっはっはっはっ!ひひひひひひひひひ!」


ジャイボの屍を前に、狂気を前面に押し出した大笑いをするゼラ。彼は一頻り笑った後、
既に物言わぬジャイボに、これまで誰にも言わずにいた本心を打ち明ける。

『真実の愛と虚偽の愛』

「ひっ、ジャイボの奴・・・。はっ。愛してる・・・って・・・。はっ。はっはっはっはっ。
馬鹿。はっはっはっはっ。こいつ玩具のくせに、感情持ってやがる!!しかも、ぺっしゃんこー!!
ひっひっ!あっはっはっはっはっ!はっはっはっはっ・・・。と・・・止まらない。はあはあ」


ゼラはジャイボを心の底から嘲笑し、大げさな身振り手振りを交えて爆笑する。ずっと前から本気でジャイボが
自分を愛していると知りながら利用し、腹の底では「性行為、疑似恋愛を楽しむ為の玩具」と思っていたのだ。
一見ゼラの恋人として最も寵愛を受けていたかに見えて、実際には他7人と異なり、部下とすら扱われず
「只の玩具」だと最も見下されていた存在。それがゼラにとってのジャイボだったのだ。

※ジャイボは思い込みが激しいですが、切れ者なので恐らく「本当はゼラは自分を玩具としか
見ていない」と気付いていたと思います薄々、察してはいたが、苦悩から目を背けていた」という形で。
「ゼラがカノンを性愛・恋愛対象として見ていた」のも、ジャイボの思い込みではありませんでしたし。
「性処理係」として任命されたのは、愛情を評価されたからではなく「美少女の代理品となり得る
容姿の持ち主だから」と『ぼくひか』で確定しているのが、また気の毒に思えてならないです。

ゼラは部下全員に残酷極まりない仕打ちをしましたが、精神的に最も酷い仕打ちを受けたのは
ジャイボかもしれません。彼は歪んだ愛から恐ろしい過ちを犯しましたが、それでも可哀想でなりません。
せめて「ゼラとの交際期間中、少しでもゼラと心が通い合っていた時期があった」と切に願いたいです。


「まさか、お前まで言わないだろうな。その少女を愛してる
なんて言うなよ。玩具が感情、持つんじゃないよ」


部下は全滅。残す敵は、策を投じれば葬るのは容易いライチとカノンのみ。非力な敵しかいない状況で、
高笑いでフラストレーションを発散したゼラは、幾分かの冷静さを取り戻す。今までずっと
座り込んでいた彼も、身の安全を確認するや余裕の笑みを浮かべ、腹の上にいたタミヤをどかす。
眼鏡のブリッジを触ると共に、立ち上がったゼラは血まみれの顔で、じりじりとライチとカノンに
接近して行き宣戦布告する。警戒してライチの袖を片手で掴むカノンだが、男子の腕力には敵わない。

ゼラに片手で掴み上げられてしまうカノン。一連の惨劇を経て、すっかり精神崩壊したゼラは未練がましく、
カノンに救いを求めてダンスへと誘う。「お嬢さん、僕と踊ろうではないか!」にやけてダンスに誘った直後
「そうはさせるか」と言わんばかりに、ライチは躊躇なくゼラの左腕をもぎ取る。「ぐっ!」地面に落ちた
左腕に大して動じた様子もなく、ゼラが呻く。「あ゛、あ゛あ゛。手が!!これでお前は、もうお終いだ!ライチ」

これまで完全にやられっ放しだったゼラ。だが、ここで終わる男ではない。ゼラがライチの名を叫ぶと、
彼の仕込んでいた勝算が顔を出す。開発当時からライチに内蔵されていた、自動発火プログラムが発動したのだ。
ライチの胴体にボンッ!と小爆発が起きると、たちまち彼の体は炎に包まれる。「ライチー!」

カノンはライチを救おうとして右手を伸ばすが、もう左手をゼラに掴まれている為、幾ら伸ばそうとも
手は届かない。自分を離さないゼラに、カノンはライチの発火の原因を問いただす。「ライチに何したのよ!?」
「僕に危害を加えると。はぁはぁ。自動発火する様プログラムされていたのさ!来い!」

『残酷劇の舞踏会(グランギニョルのダンスパーティー)』

諦めずにライチに救いの手を伸ばそうとするカノンを片手で引っ張り、ゼラはダンスステージと見定めた
帝王の玉座へと連れて来る。どこもかしこも基地は水浸しで、薔薇の花弁まみれとなって、所狭しと光クラブの
死体が転がっている。台座のすぐ側には、メンバー中ツートップの醜い姿へ変わり果てたジャイボと雷蔵の遺体がある。
こんなにも恐ろしい空間の中心地と化した、帝王の玉座をステージに見立てて、ゼラはカノンと踊ろうというのだ。
おぞましい行為に誘う狂人に、カノンは拒絶反応を示すが、それでもゼラはお構いなしである。

ゼラはカノンの肩や背中を押しながら、台座の上を歩き回って鼻歌を口遊む。本人としては「メロディを流して、
ステップを踏んでいるつもり」なのだが、当然カノンには伝わらない。「さあ踊ろう」「ライチ」
「ズンチャッチャ。ズンタッタ。ズンチャッチャ」「嫌」「ズンチャッチャ」踊ったつもりで
玉座の中央へとやって来ると、体を強張らせるカノンの肩を抱いて、ゼラは狂喜のままに宣言する。

※このシーンは、第七話でのライチとカノンのダンスシーンとの対比になっています。
彼女のゼラとライチに対する、極端な思いの差が顕著に表れています。ライチには自ら好意を寄せて
ダンスに誘って、ゼラには強引にダンスを迫られて嫌がると、構図も正反対となっています。


「死んでしまった・・・。皆、死んでしまったよ。何という
残酷劇(グランギニョル)だ!!ここも、やがて沈んでしまう。僕ら2人で
新しい光クラブを作ろう!!僕達がアダムとイブとなって、創世紀を創造するのだ!!」


屍となった部下達の中心で、カノンをパートナーに誘い、新たなる狂気の道を突き進もうとするゼラ。
「軽蔑している相手に勝手にパートナー認定されて、更なる凶行へと付き合わされては堪ったものではない」
この心境も露わに怪訝な表情を浮かべて、沈黙して項垂れるカノン。己の体を焼き尽くす炎の中、
身動きの取れないライチ。最早ゼラを止められる者は誰一人としていないと思われた。

『廃墟の帝王の最期』

しかし背後からゼラの胴体を「巨大な凶器」で刺し貫く者が現れた。ゼラの胴体と同じ位の凶器は、
彼の背中から胸と腹をメリメリと突き破る。「え」ゼラが気付いた時には、胴体に走った裂け目から
大量の臓物が溢れ出して、貫通した凶器に絡み付いた。腹を貫通して姿を現した凶器は、思いも寄らない物だった。
「便器・・・?」凶器に使われたのは以前ライチが「美しい」と称し、それからもガラクタ置き場に
放置されていた便器であった。こんな代物で自分を突き刺したのは一体、誰なのかとゼラが背後を振り返る。

「ニ・・・コ」

そこにいたのは最後の力を振り絞り、ゼラへの復讐を果たしたニコであった。密かにガラクタ置き場の中で
息を吹き返し、主君の一連の醜態を目にして失望したニコは、便器でゼラを刺し殺す報復に至ったのだ。
かつて忠誠を誓った男を濁った瞳で睨み付けるニコ。かつて最大の忠臣と認めた男を虚ろな瞳で見つめるゼラ。
お互いを見つめ合う内に2人の意識は薄らいで、ニコがゼラを突き刺した体勢のまま、共に台座から落下する。
ゆっくりと台座から落ちて行く中で、ゼラは尊敬していた人物の最期を、自分の最期と重ね合わせる。

「ローマ皇帝エラガバルスは、親衛隊の手によって、便所で殺されたという・・・。
醜いな。これでは・・・あの女教師と同じじゃないか・・・・・・」


床に落ちると同時に事切れたニコの隣で、帽子も眼鏡も外れたゼラは、腹に突き刺さった便器に絡んだ
大腸を弱々しく掴む。死に際に「自分も萩尾の様な一般人と大差ない、取るに足らない存在」と
悟るとゼラは息絶える。奇しくも彼は14歳の誕生日に少年のまま、世界の帝王になれないまま、
命を落とす事となった。その死に顔は、己の愚かさを悟ったからこその虚無感を漂わせていた。

※結局ゼラは「光クラブという、小さな空間でしか王様になれない存在」として
描写されているのが物悲しいですね。エラガバルスとは彼が18歳、ゼラが14歳と
享年も異なりますし。最終的には廃墟の帝王からも失脚し、全てを失いましたから。


『恋人から贈られる、最初で最後のキス』

光クラブ全員の死亡後。ようやく自由となったカノンは急いで恋人を助けに向かう。彼女はライチを押し倒し、
浅瀬と化した床の水をかけて消火に当たる。「ライチ!しっかりして、ライチ!」バシャバシャと水をかけてやると、
彼の全身を覆っていた炎は消えた。だが時既に遅くライチの体は半分以上が溶けてしまい、意識を保つのが
やっとの状態であった。曖昧とする意識の中でライチは、カノンの呼びかけに応じて声を絞り出す。
「カ、ノ、ン」「しっかりして、ライチ!」恋人と交わした約束を守れなかったとライチは嘆く。

「私、殺した。沢山、殺した。だから、もう、人間には、なれない」
「いいえ、違うわ。ライチは人間だわ。本物の人間だわ」


瀕死となった恋人に縋り付いて、カノンはそう言った。体が生身なのか否か。殺人を犯したか否か。
それだけが人間であるか否かの判断基準にはなり得ない。あくまでも心の在り方こそが分岐点なのだ。
自分を肯定してくれるカノンの言葉から、この事を察したライチは救いを得る。死を迎えつつある
ライチの視界の中では、ドット絵で描かれたカノンの姿が徐々に黒ずんで行く。「最後まで自分を深く愛し、
勇敢に戦って守り抜いた末に、生涯を終える恋人」に万感の思いを込めてカノンはキスを贈る。

「人・・・間・・・。カノンと・・・同・・・じ」「そうよ、ライチは人間にあったわ。
素敵よ。とても格好良いわ」「カ、ノ。とて・・・も、きれ・・・。ずっと、一緒に・・・」


出会ったばかりの頃、恋人と交わした誓いを守ると、ライチは生涯の幕を閉じる。「本当に好きな人にしか
「綺麗。一緒にいたい」と言ってはいけない」と彼に教えたのは、他ならぬカノンなのだ。この教えを
守ってくれた事からも「如何にライチが本気で自分を愛してくれたか」を実感するカノン。
彼女はライチの死後、数分間に及ぶ別れの口付けを終えると、オルガンを演奏しに向かった。

『悲しき人々へ捧げる鎮魂歌(レクイエム)』

カノンは愛しき人、そして哀れなる少年達の為に鎮魂歌を捧げる。光クラブ最後の日となった今日、
演奏されるのは『最後の審判の日』だ。いつも愛用していたオルガンを弾きながら、カノンは死んで行った
全ての者達を悼んで静かに歌う。これが彼女がライチと光クラブに出来る、せめてもの弔いなのだ。

沈没の時を待つ基地の中で、カネダ死亡時と同様の構図で演奏が開始される。カノンの頬を伝う涙が
ポタポタと落ちて鍵盤を濡らす。基地内にはカノンの歌声とオルガンの音色。涙が滴り落ちる音。
そして床に横たわる光クラブと基地全体を沈めて行く、地下水の水音だけが響き渡る。

「伏して願い奉る。灰の如く砕かれし心も。我が終わりの時を計らい給え。
涙の日なり、その日こそ。灰から蘇えらん時。人、罪ありて暴かれるべき者なれば。
願わくば神よ。それを憐れみ給え。願わくば神よ。それを憐れみ給え」


鎮魂歌を捧げ終えると、カノンは基地を去って行った。既に時間帯は真夜中となり、満天の星空が
住宅街から廃工場に至るまで、蛍光町を照らしている。星月夜の下で失意を胸に1人、帰路を進むカノン。
その頃、扉を閉ざされた光クラブの基地は完全に水没し、満杯の水槽の様相を呈していた。
水底に鉄製故に浮かびはしないライチを残して、メンバー全員の遺体が浮上してユラユラと浮かんでいる。
凄惨な最期を遂げた恋人と少年達を哀れんで、カノンは寂しくポツリと別れを告げた。

「さようなら。ライチ・・・・・・光クラブ」

『終劇』

※かくして「エログロバイオレンス満載の残酷劇」は幕を閉じます。『終劇』は原作通りの
演出ですが、漫画ではクラブのシンボルだった、巨大な五芒星の中央に大文字で書かれています。
作者の古屋先生のブログでは、本作の「完結記念インタビュー」が掲載されています。
インタビューは一問一答形式で、四コマ漫画『常川君の日常』と纏めて読めます。
ネタバレ満載なのですが、内容的に目を引くのは「古屋先生からのメインキャラに対しての一言」です。

カノンは「この子、この出来事ちゃんと覚えててくれるかな?ちょっと弱いから心配」と言われています。
私としては途轍もなく辛いですが、ずっと彼女には光クラブとの出来事を覚えていて欲しいものです。
カノンにとって、いつまでも「ライチは素敵な初恋の人」として心に残っている事も望みます。
それこそが非業の死を遂げた「ライチ、光クラブの数少ない救い」となり得るのですから。

個人的には原典からして、本作はテーマどうこうではなく「とことん残酷な作品を描きたかった」という、
原作者の欲求に従って制作された作品」だと捉えています。凄惨極まりない内容ですが、それだけに
刺激の度合いは激しいですし、カタルシス効果は確かなものです。メインキャラの人間ドラマは胸打ちますし。
謳い文句にもある様に凄惨な物語故、非常に人を選ぶ作品ですが、1人でも多くの人が楽しめたら幸いです。


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2.
2019/03/16 (2019/04/06更新) 「『ライチ☆光クラブ』第八話『薔薇の☆処刑』感想」
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『廃墟の恋人達の反抗』

けたたましい警笛の音色に包まれて、廃墟の恋人達ことライチとカノンは目を覚ました。警笛を吹き鳴らす
4人の部下の中央に立って、ゼラは2人を糾弾する。今まで残存する光クラブのメンバーで、ライチとカノンが
恋仲に発展したと知る者はいなかった。だがロボットと人間という種族の違いはあれど、恋をする年頃の男女が
寄り添って睡眠を共にする光景は「彼らが深い仲に至った」と知らしめるには十分な光景であった。

カノンを神聖視する反面、密かに仄かな独占欲まで抱いていたゼラは憤慨する。「おはよう、廃墟の恋人達。
全く迂闊だったよ。まさか君達が、その様な仲だったとはな!タミヤとニコを逃がしたのも、少女一号・・・。
お前なんだな!!おいで一号。僕の手で処刑してあげよう」傲岸不遜にカノンを死へと導く手を差し出すゼラ。
警笛が続く中カノンはライチの服をギュっと握り締め、敵意を露わにしてゼラを睨み付ける。ライチもまた恋人を守る為に
ゼラに反逆の意を示す。「カノンは渡さない」ライチの裏切りを前に、またしてもゼラはみっともない姿を晒す。

彼が光クラブのメンバーでさえも未だに知らない、カノンの名前を知っているのも予想外だった。「カノン・・・。
カノンというのか!わ・・・渡さない?渡さないだと・・・?僕は機械(きかい)にまで裏切られるのか。
ライチ・ラライチ・ララライチ。裏切りマシン・ララライチ」苦し紛れに今更、ライチの操作パスワードを
唱えるゼラだが、当然その程度では服従させるには至らない。そこで彼は「もしもライチが命令を
聞かなくなった場合の対策」を用意する。この秘密兵器はゼラの命令の下、デンタクが作成した物だ。

『洗脳ヘッドギア』

それは曲がりくねった電線の束で頭部を包んだ、鉄製のヘッドギアである。デンタクは持って来たヘッドギアを
「ライチ」と一言かけると、すっぽりと彼の頭に被せる。ライチのヘッドギア装着後、今度はデンタクは真っ黒な
新作リモコンを取り出す。「ごめん、ライチ」生みの親としてライチに申し訳ないと思いながらも、デンタクは
リモコンを起動させる。ライチのヘッドギアにはリモコンから激しい電流が流し込まれる。頭部から全身に迸る
電流に心と体の自由を奪われたライチは悶え苦しむ。「ア゛!ア゛!ア゛!ア゛!」「ライチ!?」

電流によって洗脳されてしまったライチには、もう傍らの恋人の声も届かない。彼は光を失い真っ白になった瞳で
カノンを抱き上げると、一歩一歩ゼラ達に近付く。ライチの異変の原因は何なのかを、ゼラがカノンに告げる。
「この装置でライチの自動制御はOFとなり、もうライチはコントローラーの指令でしか動けない。廃墟の恋人達も
これで終わりだ!!」ゼラによる非情の勝利宣言は、カノンの一言によって、あえなく突き崩される。
「貴方、最低ね!」ライチに抱き抱えられたまま、カノンが覚悟を決めて言い放った言葉に、光クラブは騒然となる。

皆カノンが起きて話す姿を見るのは初めてだったからだ。言葉を失うジャイボの隣で、不安気に雷蔵が呟く。
「しゃ、喋った・・・」彼らの前に立つゼラは、自分を全否定するカノンの台詞に、怒りとショックで
ワナワナと震える。「最低?この僕に対する第一声が、それかね?この僕が最低!?け・・・け・・・
蛍光中だからって馬鹿にするのか?」「違うわ!人殺しだからよ!ライチの方が、ずっと人間らしいわ!」

自分が軽蔑される理由に、見当違いな学歴コンプレックスを上げるゼラにも、カノンは堂々と至極真っ当な
正義感を持って反論する。彼女の発言を打ち消し、失態を取り繕う為にも、ゼラは処刑の時刻を早める。
「うるさい、うるさい!やはり生きてる少女というのは幻滅するものだな。では、お前が信じているライチの
手で処刑してやろう!!」光クラブ5人とカノンを抱いたライチは、あの薔薇と水で満たされた棺の前へと移動する。
例によって執行人はライチで、指示を下すのはゼラだ。ゼラが死刑執行を命じると共に、処刑方法を説明する。

『エラガバルスと薔薇の処刑』

「薔薇の処刑だ。この薔薇の棺に沈み、お前は生まれ変わるのだ。さあライチ、沈めるのだ!!」

この「薔薇の処刑」とはゼラが尊敬する人物である、ローマ皇帝エラガバルスによる処刑方法を自己流にアレンジしたものだ。
薔薇愛好家だったエラガバルスは、大量の薔薇の中に客人を埋もれさせて窒息死させた事があった。この光景を描いた
名画は『エラガバルスの薔薇』と名付けられ、現代にも逸話と共に語り継がれている。人を窒息させる程の大量の
薔薇を集めるのも、薔薇の花弁だけで人の命を奪うのも、現代の貧しい少年である、光クラブでは土台無理な話である。

そこでゼラは薔薇の量は町中の花屋から盗んだ量で抑え、カノンの致死性を高める為にも「大量の薔薇と水を入れた
棺の中に、カノンを沈めて溺死させる」という妥協案として「薔薇の処刑」を考案したのだった。ゼラの号令で再び
ホイッスルが吹き鳴らされる。笛の音とライチのヘッドギアの電流の音が混ざって、部屋中に「ピーピー」
「ピーガー」という音が満ちる。ライチは無意識のまま、カノンの肩と膝裏を持って、ゆっくりと棺の中に沈める。
沈み行く中カノンは恋人を信じて、穏やかに微笑んでライチに呼びかける。「ライチ、思い出して。ライチは人間でしょ」

『取り戻された自我と完成された精神』

カノンの訴えも空しく、ライチの両腕の力が急速に強まり、彼女を水底へと押し付ける。「え・・・。んっ、う。
ラ、ラ、ラ」もがいたものの、とうとうカノンは棺の底に押さえ付けられてしまう。暫らくはゴポゴポと
水泡が浮かぶも、やがて途絶えてしまう。水面から呼吸の痕跡が消えると、カノンの死を確信してゼラが叫ぶ。
「良いぞ、ライチ!!僕らの殺人機械(きかい)ライチ!!」ひっきりなしに警笛と電流の音が流れる中。
何を思ったのかデンタクは緊張した面持ちで、ヘッドギアのリモコンを落として踏み潰してしまう。

破壊の物音から状況を察し、しきりにデンタクに声をかけるゼラ。「!デンタク!何してる!?デンタク!!」
何をするでもなく、無言、無反応、無表情を貫くデンタク。直後にカノンの死に顔が浮かび上がる。
口を半開きにして、眠っているかの様に穏やかな表情であるが、呼吸は停止しており、死んでいるのは明らかだ。

最愛の人カノンを手に掛けたショックを実感する内に、ライチは悲哀の芽生えと共に自我を取り戻す。
彼の体内では人間の血肉に当たる、大量のコードや部品が一箇所に集まって、胸の中で絡まり合い
「機械の心臓」を形作る。言うまでもなく「機械の心臓」は「ライチの人間としての心の完成」を意味している。

『光に重なる、地下室の道化師』

その瞬間、目の光を取り戻したライチは、ヤコブの頭を鷲掴みにして遠く離れた壁に向かって叩き付ける。
ヤコブは壁の上方にある「光」の字に重なって、全身を叩き付けられた結果、両目と口と後頭部と背中から
出血多量を起こして即死する。彼の死体は壁からずり落ちて、真下にあったガラクタの中に埋もれた。
ヤコブの突然の死に、彼とは特に親しかった雷蔵は青褪めて、ゼラは絶句する。

「ひっ、ヤコブ!?」「!」「ひっ、ひいい!」光クラブが異変を察して振り返ると、ライチはヘッドギアを脱いで、
片手で力任せに握り潰すと暴走を始める。デンタクがリモコンを破壊した為、制御システムが無効化されたのだ。
愛する人を奪われた激しい悲しみと憎しみに駆られたライチは、光クラブに復讐する道を選び、激昂し絶叫する。

「ガガ、ガ、ガガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガガガ!!死ん!ガ、ガッ!
カノン殺し!私が、カノン殺!ア゛、ガ、ア゛、ガア゛、ア゛ガ!」


『暗闇の乙女の美貌』

言葉にならない叫びを上げながら、ライチは次に雷蔵の襟首を掴んで抱き寄せると、頭部に向けて片手を振り下ろす。
「頭部への攻撃で顔が損傷する」と危機感を覚えた雷蔵は、両手で顔を庇いながら懇願する。「ひっ。や・・・嫌よ!!
や・・・や・・・やめて。せめて顔だけは」「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」懇願は聞き入れられず、生きたまま
顔の顔を引き剥がされた雷蔵は、生前の美貌は見る影も無い姿へと変わり果てる。命も美貌も失った彼は、
雄叫びを上げるライチに、片手で首根っこを掴まれて持ち上げられる。「ア゛ア゛ア゛ア゛!!ガッ、ガッ!!」

※サブキャラなので、滅多に言及されていない事柄ですが「ライチの顔の皮を作った雷蔵が、自分の顔の顔を
引っぺがされてライチに殺される」という、実に皮肉な展開となります。鬱展開のお約束ですが「大して悪い事
してないのに、悲惨に死んでしまう人」が、ある程度いるものです。本作の死亡キャラの大半は該当者ですが、
雷蔵は恐怖からゼラに反抗もせず、ひたすら忠実に従って来ただけなので、理不尽さは一際強く感じます。

不謹慎ですが、きっと雷蔵にとっては「お葬式で「綺麗な顔してるわね」と褒められるまでが理想の人生」
だったんでしょうね(苦笑)本人逝去後のイベントとはいえ、お葬式だって人生の大事な一部なんですから。


『科学少年の成果』

見せしめの様に雷蔵を残虐に殺害したライチに、恐怖を感じたゼラは血相を変えてデンタクに指示する。
「ひっ。デ・・・デンタク!奴の暴走を止めろー!!」普段なら真っ先に主君の指示を忠実にこなし、
ゼラが命令口調で助けを求めているにも関わらず、デンタクは何もしない。只じっとライチの暴走を
眺めているだけだ。あろう事か彼は静かな狂喜に身を任せて、肩を震わせて信じられない言葉を発した。
「い・・・い・・・い・・・良いぞ、ライチ・・・」今まで胸に秘めていた狂気を段々と露わにして行くデンタク。

彼の前にライチは雷蔵の遺体を叩き落とす。更に見るも無残な姿となった雷蔵の返り血を全身に浴びながらも、
デンタクの狂気と歓喜は留まる事を知らない。ライチは両手を振り上げてデンタクにも襲いかかる。
死が目前に迫る最中、デンタクの「最高の研究成果を得たが故の狂気と歓喜」は頂点に達する。
彼の頭を右手で掴んだライチは、左手でデンタクの腹部に手を突っ込んで、下半身を引き千切る。
上半身と下半身を真っ二つに引き裂かれて死を迎える中、発明の喜びに酔いしれてデンタクは言った。

「僕は、僕は成功したんだ!!まだ誰もやってないプログラムを、
僕は作ったんだ!!人間の・・・心を・・・」


デンタクの上半身も下半身も床に投げ捨てられる。他の面々が恐怖や絶望等の感情を浮かべていたのに対し、
デンタクだけは狂喜と達成感に満ちた死に顔であった。彼には「ライチに人間の心を与える」という長年の夢があった。
前々から仲間達を犠牲にしようとも、自身も命を落とす事になろうとも「待ち望んでいた研究成果」を手にしたかったのだ。
主君でありながら、今になってデンタクの本心、彼が忠臣の仮面を被っていたと悟ったゼラは、すかさず非難に及ぶ。
「何て事を!デ、デンタク!お前が真の裏切り者じゃないか!」光クラブは残す所、ゼラとジャイボの2人のみとなった。

※初登場時の台詞からして「マッドサイエンティスト気質のある子なのかな?」とは思っていたんですが・・・。
デンタクのマッドサイエンティストぶりは、想像を絶する領域に到達していただけに度肝を抜かれました。
てっきり「ニコに次ぐ、ゼラの忠臣」とばかり見ていたものですから。デンタクは「ゼラへの忠誠心や敬愛」
「メンバー間の仲間意識」「ライチへの親心」といった、良心は持ち合わせていたのは確かです。
作者の古屋先生もインタビューで仰っていた通り「根は良い子で純粋」だとも思います。

ただ、この「純粋さが可笑しな方向に突き抜けている」のは否めません。仲間への人情も備えていますが、
「研究の為とならば迷いなく切り捨てる覚悟」の方が遥かに上回っているのでしょう。この2点がデンタクを
マッドサイエンティストたらしめている主因なのでしょうね。科学者って世間に知られなくとも、偉大な発明に
成功さえすれば満足する人が多いですし、デンタクにすれば「科学者冥利に尽きる最期」だったと言えます。
ゼラとは違って死をも恐れていない分「彼の狂気は作中トップクラス」と言っても過言ではないですがね。


『棺の中の美少女』

いつの間にか逃げたジャイボを除けば、残りのメンバーはゼラだけだ。ターゲットの本丸を見据えたライチは、
いよいよゼラに迫る。距離を詰めて両腕を振り下ろそうとするライチを前にして、何の術も持たないゼラは恐怖で
身動きが取れなくなる。「あ・・・くっ。あ、あ、あ、ああああ!」ライチがゼラに掴みかかろうと、
あと一歩の距離まで迫った瞬間。突如として燃料切れとなったライチは静止する。時が止まったかの様に微動だにせず、
声も起動音も出さないライチの体からは、殺害した光クラブのメンバーの返り血がポタポタと滴り落ちる。

命拾いしたと察したゼラは荒い息遣いの後、薄笑いしてライチを挑発する。「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ。
と・・・止まった・・・。は・・・はは。ははは。燃料切れか!残念だったな、ライチ!」ライチの燃料である
ライチの実は1粒も残されていない。彼に燃料が供給される事はもう無い以上、ライチの脅威から逃げ延びたゼラ。
平常心を取り戻した彼はライチに背を向けて、ジャイボを捜しながら独り言を言う。「ジャイボ、出て来い。ジャイボ。
はっ、はは。逃げたか、ジャイボ。あいつらしいな」余裕を取り戻しつつあるゼラは、高笑いと共に勝利宣言に及ぶ。

「くくくくくく。少々、予定は狂ったが、まあ良い。僕は生き延びた。やはり僕には黒い星が付いてるんだ!!
計画の遂行だ!!」1人きりの勝利宣言後。ゼラは美しい死骸となったカノンの元に向かい、棺の上から彼女を見下ろした。
「美しいものだな。死んだ少女というのは。この美しさに比べたら。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ジャイボなんて所詮は男だ」
部下達には「カノンへの懸想も欲情も接触も厳禁」としておきながら、密かに劣情を催していたゼラ。彼は周囲の
邪魔者不在で、カノンが死んでいるのに付け込み、興奮を露わに彼女の唇に触れると口付けをしようと迫る。

『濁流と共に帰って来た男』

「は。は・・・・・・は、はあ。はっ。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」ゼラがカノンに気を取られた直後。
何故か天上から濁流音が聞こえて来る。ドドドドド!!という轟音のする方へゼラは振り返る。その隙に、実は棺の中で
カノンの隣に身を隠していた、ジャイボが彼女と同じく顔だけを浮かべる。轟音の正体を見て一大事に気付くゼラ。
「!な、何!?な、何故!?何故!?」天井には大穴が空けられ、帝王の玉座の真横に滝の如く濁流が降り注いでいた。

濁流の出所は基地の上部に広がる地下水路で、何者かにパイプを破壊し尽くされた為に決壊し、至る所から
鉄砲水の様に地下水が噴き出した。そして地下水は天井に空けられた大穴から、洪水の様になって基地へと押し寄せる。
まるで光クラブの終焉を告げるかの様だ。メンバーほぼ全員が死亡、基地が水没とあっては、クラブの崩壊は避けられない。

動揺したゼラは為す術も無いままに、ベルトコンベアーを上ると呆然として言った。「あ、ああああ!?
水が、水が・・・。だ・・・誰の仕業だ!?ぼ、ぼ、僕の光クラブが沈んでしまう!」ベルトコンベアーの
先にある入口前でゼラを待ち構えていた人物が、鉄パイプを縦に構えて彼の言葉を否定する。

「なーんか間違ってねぇか?ここは俺の「ひかりクラブ」だ!!」

ゼラを待っていたのは、親友達の仇討ちと光クラブの奪還に燃えるタミヤだった。彼は今度こそ悲願を達成する為、
ゼラを殺す事を決意し、新しいシャツと武器に選んだ鉄パイプを調達すると、基地へと戻って来たのだ。
鉄パイプで地下水路を破壊したのも、仲間の仇であるゼラを追い詰める為である。光クラブが完全なる崩壊を
迎えつつある中、長年に渡りゼラに苦渋を味わわされて来た、タミヤの復讐劇の幕は上がるのだった。

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3.
2019/03/09 (2019/04/06更新) 「『ライチ☆光クラブ』第七話『機械(マシン)が見る夢』」
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『眠って見る夢、思い描く夢』

※今回での「機械」という文字は全て「きかい」と読みます。今回は日頃からライチを「機械(マシン)」と
呼ぶゼラとデンタクの出番が僅かなので。代わりにタミヤとニコ、ライチとカノンの関係性に焦点が当てられます。


カノンとの触れ合いにより、日増しにライチの胸の中で彼女への思いが募る。今となってはライチとカノンは、
すっかり恋人となった。元より生みの親である光クラブからは「人間と同じ知能や感性を持つ様に」と願われて
来た身の上であったが、今や彼の「人間になりたいという思い」は、いつしか「義務」から「願望」へと変わっていた。

「私の名はライチ。私は人間になりたい。カノンと同じ本物の人間に・・・」

この頃ライチはスリープモードに入ると、奇妙な幻覚を目にする様になっていた。
これは正しく人間が見る夢そのものである。今夜は体内の電子基板に血脈が絡み付くイメージ
映像が映し出された。勿論これは「ライチが精神的に人間に近付きつつあると証明する演出」である。
彼の体はニコが提供した右目を除いては、全て人工物なので血脈が入り込む余地など無い。

身体的に人間になるのは到底、不可能なのは、ライチ自身も最初から理解している。それでも、
せめて精神的には恋人カノンと寄り添える位には人間になりたい。それこそが今、彼が望む事である。
そんな事を夢の中でも考えながら、ライチは地面の上に寝転んでいた。タミヤとニコの処刑を拒否して
気絶した際、そのまま放置されて自動的にスリープモードに入っていたのだ。彼を呼ぶカノンの
声が聞こえる。「・・・チ。・・・イチ。ライチ!」「カノンの声・・・・・・」

『ライチとカノンの救助活動』

時刻はゼラによる狂気の演説の終了後。彼の宣告通りにゼラ、雷蔵、デンタク、ヤコブ、ジャイボは町中の薔薇を
盗みに向かった。彼ら5人が確実に長時間、基地を離れる間にカノンは磔(はりつけ)にされたタミヤとニコを、
ライチの手を借りて救助しようとする。「ライチ、この手錠外して!この人達、助けてあげないと!」「カノン!」
玉座から離れたカノンはライチと2人がかりで、大柄なタミヤとニコを磔刑(たっけい)から解放する。

先に咳が止まらないタミヤの上半身をライチが持ち、下半身をカノンが持って、ゆっくりと柱から引き離される。
「ライチ、ゆっくり」次に同じ要領でニコが柱から引き剥がされる。彼の方はゼラに見捨てられたショックと、
タミヤよりも重度の火傷による苦痛から、濁った呻き声が途切れない。「お願い、我慢して」磔から逃れたタミヤと
ニコは地面に並べて寝かされる。横になった事で幾分か楽になれた様だが、瀕死の重傷を負っているには変わりない。
おそらく全身の火傷と同程度には心に深手を負っているであろう2人を見て、カノンは同情を寄せる。

「可哀想・・・・・・。酷い火傷だわ。ライチ。君、偉かったわ!この人達、殺さなかったもの!
何としても助けるわよ!」「解った」カノンからのタミヤとニコの救助依頼に、当然ライチは快諾する。
まずは応急処置をすべきと考えたカノンは、タミヤに救急箱の在りかを聞いた。「ねぇ、君。救急箱ないかしら!?」
「はあ、はあ。あ・・・ああ・・・」タミヤが指差す方を見ると、作業台の下に置かれた救急箱が目に留まる。
「あの箱ね!」カノンは救急箱から消毒液と包帯を取り出すと、タミヤとニコの応急処置を始めた。

「我慢なさい!男の子なんだから!ほら脱いで!」タミヤの背中を押して上半身を起こしたカノンは、
彼の服を脱がせて消毒液を吹きかける。上半身の火傷に消毒液が染み込む痛みに彼が悶える。「あぐ」
消毒が済むと、再びタミヤを学ランを枕にして床に寝かせて、今度は丁寧に包帯を巻いてやるカノン。
彼女の献身的な行動に、彼の意識も鮮明化して来た様だ。「痛かったぜ・・・。優しく・・・・・・
やれよな・・・・・・。はぁ、はぁ、はぁ」「君、喉、治ったのね!!次は君よ」

今度はニコの治療に取りかかるカノンだったが、見るからに様子がおかしい。「ぜえぜえ」と熱い息を吐きながら
虚ろな瞳でカノンを見上げるニコ。彼女の頭上からは証明が差していて、今のニコには「救いの女神の後光」に見えた。
彼の背中をライチに支えて貰い、タミヤと同じ治療を施すカノン。これで彼女が出来得る最大限の処置は終わった。
横からニコを抱き起こしたまま、カノンは言った。「よいしょ。よし。今は、これが精一杯ね」

『タミヤの正論、ニコの嗚咽』

ニコの治療を終えた途端、いきなりタミヤが「あ゛あ゛あ゛」と雄叫びを上げて、細い鉄骨を振り上げる。
「!きゃ」とっさにニコを庇って回避するカノン。だがタミヤが標的とするのはライチだけだ。
彼は力任せにライチの胸元と後頭部を1発ずつ殴り付ける。「ガン!ゴッ!」と鈍い音が響き渡るが、
当然ライチは無傷で無反応だ。「やめて!」カノンが制止に入った所で、
タミヤは腹の上に鉄骨を置いて座り込んで、何故ライチを殴ったかの理由を明かす。

「1発はタマコの分。もう1発はカネダの分だ。はぁ、はぁ、はぁ。解ってる!お前だってゼラの命令で
動いてるだけだもんな。あの気〇いめ!!」やり場の無い怒りやゼラへの憎悪をぶちまけるタミヤ。

ライチはゼラに絶対服従する仕組みのロボットなので、彼個人に罪は無い。そんな事はタミヤにも解っている。
それでも妹誘拐、親友殺害の実行犯には変わりない、ライチには憤りをぶつける他なかったのだ。タミヤは
ゼラやライチへの攻撃を果たした事で、落ち着きを取り戻す。ところが、この期に及んで「主君ゼラへの非難は
聞き捨てならない」とニコが反論しようとする。彼の反論は主君に裏切られた事からの現実逃避の一環でもある。
最早ニコは自力で起き上がる事すら出来ず、床の上でジタバタしながら、言葉にならない悲鳴を上げる事しか出来ない。

「ア゛、ガァ、ア゛ア゛!ア゛ガッ!ア゛ア゛!」カノンの膝枕の上で抵抗の意を示すニコ。「彼の目を覚ますには、
現状を打破するには、これしかない」とタミヤは、ニコの傍らで両手と両膝を付いた姿勢になり真実を叫び散らす。

「ニコ!ゼラの悪口を聞きたくないか?いい加減、目を覚ませよ!
誰だって、お前が火を付けてない事位、解るぜ!!たった1人を除いてな!!」「ア・・・」
「お前が命を賭けて、忠誠を尽くして来た男ゼラだ!!ゼラはお前を殺そうとした!
いや・・・。このままじゃ殺される!良いのかよ!?俺達このままで良いのかよ!?」


タミヤの口から放たれたのは彼の称号通り、正しく「真実の弾丸」と言うべき発言であった。
「真実の弾丸」に心を撃ち抜かれたニコは、何もかも失ってしまった現実に絶望し、目からは大粒の
涙が溢れ出る。「ア゛・・・。あ゛っ、あ゛っ、あ゛ぁ。あ゛ぐ。あ゛ぐ」心も体も震わせて嗚咽するニコの次に、
タミヤはカノンに指差して警告する。「そして、お前!お前も必ず殺されるぞ!」「でも機械(きかい)に
なって生まれ変わるんだわ」「馬鹿!そんな事、世界中の科学者が集まったって出来ねぇよ!」

※常に強気だったニコが全てを失い嗚咽するシーンは、とても切なくなりました。
初見時は「ニコはダフを告発した張本人なのに、どうしてタミヤはここまで気遣うんだろう?」と
不思議に思っていました。この理由も『ぼくひか』で知ってからは益々、切ないと感じられました。
なお私のパソコンでは「あ」に濁点を付けるには、この表記しかないのをご了承下さい。


極度のロマンチスト故に、ゼラの計画を真に受けて危機感を持たないカノンを、叱り飛ばすタミヤ。
彼は最後にカノンと揃って危機感を抱いていない、ライチにも警告を発する。「そしてライチ!
ゼラは別の燃料で動く様、直したりはしないぞ!あいつは一度ケチが付いた物は捨てる男なんだ!」

『4人の脱出計画』

「皆で脱出しよう」

このタミヤの一言によって、今ここにタミヤ主導による、ゼラに命を狙われている4人の脱出計画が幕を開ける。
最優先事項は一刻も早く、何としても基地から脱出するに他ならない。基地内を知り尽くしているタミヤが
リーダーの為、自然と脱出ルートは定まって来る。今なお悲嘆に暮れるばかりのニコを除いた、3人の目にはある物が映る。

光クラブが頻繁に監視用として扱っていた、潜望鏡である。おあつらえ向きに潜望鏡の真上には、ライチだって
出入り可能な大穴も空いている。基地は廃工場の地下1階にあり、梯子(はしご)代わりになるのは潜望鏡1台しかない。
タミヤは決断を、そのまま発言する。「あの潜望鏡を上って行けば、外だ!!」タミヤとカノンは備え付けの梯子を上って、
潜望鏡の設置された台へと上ると、身動きの取れないニコをライチに持ち上げて貰って、台の上へと運ぼうとする。

『忠誠の騎士の殉死』

火傷の度合いはタミヤよりもニコの方が重症で、今や会話も歩行も困難な状態にある。タミヤはライチから受け取った、
ニコを背後から抱き上げて自分の側に置いた。「アガ・・・。ガッ。グッ。ゲホッ・・・」「しっかりしろ、ニコ!」
タミヤの声も空しく、ニコは喉に詰まっていた灰を「ブホッ」と吐き出すと、その場に倒れて痙攣してしまう。

ガクガクするニコにタミヤとカノンが寄り添う。タミヤは先刻同様ニコの真横に座り込み、カノンはニコに縋り付く。
2人共ニコの生存を願って必死に呼びかける。「ニコ!!くそ・・・。脈が止まりそうだ・・・」「駄目っ。
死んじゃ駄目よ」ゼラによって「光クラブの女神」として扱われて来たカノン。彼女の慈悲を受ける立場となった
今となっては、ニコも彼女の存在に救いを見出しているのか、彼はカノンの唇に2本の指で軽く触れると、
目を見開いて涙を流した。「ゼッ、ゼッ、ゼッ」呼吸も痙攣も激しさを増している、ニコはもう長くはない。

カノンはニコの腹に顔を埋めて咽び泣き、タミヤは少しでも、かつての仲間の未練を減らそうと口を開く。
「ニコ!よく聞け!ライチ畑を燃やしたのは俺じゃない!火を点けたのは」放火犯の正体を聞き届ける事なく、
ニコは力尽きた。口からは泡が漏れて、見開かれた目から光が失われた彼の遺体に、そのまま縋り付いて
カノンは泣き崩れ、タミヤは男泣きしながら「お前も含めた仲間達の無念は必ず晴らす」と強く誓う。

「ニコ・・・。ニコ?ニコ、お前は馬鹿野郎だ!!お前の無念、俺が必ず・・・」

タミヤの目からも大粒の涙が流れ落ちる。ニコへの涙の誓いを終えたタミヤは、彼の遺体を「誰の目も届かない
安全な場所」へと運び出す。ニコの死体は昔タミヤが「光」と書いた壁の一角に置かれ、全体を覆う布で隠された。
「ゼラの奴、ニコの遺体に何するか解んねえからな。じゃあな、ニコ。行くぞ」「うん・・・」

『潜望鏡と地下水路』

ニコに別れを告げたタミヤは台から下りると、ライチとカノンとの脱出計画を再開させる。梯子と潜望鏡をよじ上って
地上を目指す3人の計画はこうだ。最初にタミヤが上へ行き、次にカノンが上からタミヤ、下からライチに持ち上げられて
上に上る。最後にライチが自力で上れれば計画は成功だ。この計画に基づいて3人は行動する。いの一番に潜望鏡の上部に
上ったタミヤが、ライチにカノンを渡す様に促す。「ライチ、その子を!」カノンが潜望鏡の上から差し出された、
タミヤの腕を取る。ここでタミヤは彼女に問い掛けた。「お前、名前は?」「カノン。私カノンよ」

タミヤによって抱き上げられたカノンは、工場用水の地下水路に辿り着く。抱かれたまま地面に下ろされたカノンに、
タミヤはこう言った。「ちゃんと食えよ。俺の妹と同じ位しか体重ねえぞ」「女の子に体重の事、言うなんて失礼ね」

お互いに軽口が終わると、この場所についてタミヤが説明する。「ここは工場用水の地下水路だ。出口はこの上だ。
ライチ、潜望鏡に掴まって上がって来い」「解った」タミヤの指示をこなそうとするライチだったが、潜望鏡は彼の
巨体を支え切れず、すぐさま千切れて落下してしまう。脱出ルートは長い長い潜望鏡のパイプを梯子にして、
ひたすら地上を目指して上るしかない。ここでライチの脱出はパイプ同様、切断されてしまったと言って良い。
切れたパイプを持ったまま仰向けに倒れたライチを見て、タミヤは即座にロボットである彼を見放す。

『恋人達の決意』

「ライチ!ライチはもう上がって来ねぇ。行くぞ、カノン」だがカノンの決断はタミヤとは違った。
彼女はタミヤの誘いを蹴ると、ライチと運命を共にする事を選び、瞬時に恋人の元へと舞い戻った。
倒れ伏すライチの上にカノンは飛び降りる。「ライチ!」「カノン!」舞い降りた愛しい人を
ライチは、しっかりと抱き留める。恋人達の間に自然と笑顔と喜びが浮かぶ。その様子は、
ほぼ2人の関係を知らないタミヤから見ても、非常に仲睦まじい間柄なのは明白だ。

ライチとカノンの身を案じてタミヤが忠告する。「馬鹿っ!何してんだよ!!」「良いの。
ライチ1人だけ置いてけないもの」「お前、そのままじゃゼラに殺されちまうんだぞ!」
幾ら厳しい言葉を浴びせた所で、カノンの決断は揺らがない。彼女の心は、とうに決まっているからだ。
「どんな結末を迎えようとも、恋人ライチと運命を共にする」と冷静に決意表明するカノン。

「私は大丈夫よ。私にはライチがいるんですもの」

ライチと2人で寄り添い座って、彼に抱き着いた上で決然と言い放ったカノン。「愛する人と傍にいたい」
「愛する人が私を守ってくれるから大丈夫」彼女の気持ちはライチへの信頼と愛情で一杯だった。色恋沙汰には疎い
タミヤも、この発言から2人の仲を察して、言葉は乱暴ながらも気持ちを酌んでやる。「勝手にしろっ!じゃあな」
「貴方も元気でね」タミヤはライチとカノンに背を向けて、地下水路へと進む。手を振って送ってくれたカノンに、
タミヤは去り際に心遣いとして1粒のライチを托す。投げ渡されたライチの実は、カノンの膝の上に乗った。

「ライチ畑の最後の1粒だ。いざという時の為に取っときな」「ありがとう」

『運命の日の前夜』

朗らかな顔でカノンは礼を言った。タミヤの基地脱出後。再びライチとカノンは2人きりの時を過ごす。
彼らは潜望鏡の台座に座ったまま会話を始める。明日はゼラの宣言した通りならば、カノンが機械に
改造される日である。運命の日を前に恋人達は、そわそわしていた。タミヤに全否定されたが、
生まれついての重度のロマンチストであるカノンは「明日になったら私は機械に改造される」と夢想する。
「ねぇ、ライチ。私、明日、機械になるのよ。私が機械になったら君は嬉しい?」

「嬉しくない。機械になったカノンは人間のカノンと違うから」恋人への理解も人間への理解も深まった今、
即答するライチ。彼の傍らでカノンは人形の様にカクンと肩と両手を動かすと、胸の前に両手を掲げて
高らかに歌い出す。まるでオルゴール人形の様な彼女が披露したのは『青い目の人形』だ。『青い目をした
お人形は♪亜米利加(アメリカ)生まれのセールロイド♪』歌声はこの一節だけだが、相変わらず見事なものだ。
歌い終えるとカノンは螺子の切れた人形を模して、両手はそのままに肩をガクンと落として静止する。

人形になりきる事で、疑似的に機械化された状態を想像してみたのだ。シュミレーションの結果、カノンは
「機械の体になるのも悪くはない」との気持ちが幾分か強まった模様だ。瞳を閉じてカノンは述べる。
「私が機械になったら、お婆さんにならなくて済むじゃない。そしたら君に嫌われないで済むじゃない」
カノンが機械と化すのを夢見るのは、機械の体を持った愛する人に、年老いた自分を見られて
幻滅されたくないからであった。それ程までにライチとカノンの間には深い愛が芽生えているのだ。

「私はカノンを嫌ったりしない」恋人に誓いを立てるライチに「未来は誰にも解らない」とでも言いたげな
顔をしてカノンは答える。「ライチには解らないわ。でもライチなら、私をずっと守ってくれそうな気がするわ」
語り合う2人の頭上にある地下水路に通じる穴から小雨が降り注ぐ。「あ、雨。いけない、ライチが濡れちゃう!」

茶化す様にしてライチの後ろから首元に抱き着いて、小雨からガードしようとするカノン。それを見て
ライチは、あっけらかんと述べる。「大丈夫。生活防水だから」彼の台詞がツボに入ったカノンは
ケラケラと笑い出す。「あはっ。あはははは。生活防水。あはははは。可愛い」「?」どうして自分が
笑っているのか解っていないライチを、可愛らしい笑顔を浮かべてカノンはダンスに誘う。

『2人きりのダンスホール』

「悲しいお話は、もうお終いよ!踊りましょう、ライチ!」「踊り・・・」

『らららららー♪らんらんららら♪らんららら♪らんらららー♪』


2人は帝王の玉座を舞台に選び、恋人達だけの舞踏会を開く。常に真上から照明で照らされる帝王の玉座は、
今夜は普段にも増して特設ステージと化している。常に帝王または女神の玉座とされる、この場所も
今宵限りは「廃墟の恋人達の特別舞台」だ。カノンの歌声や指導に合わせて、2人は手を握り合って踊る。
指導を受けつつ、ぎこちないステップを踏むライチに、目をつぶったカノンは夢見心地となって語りかける。

「ライチ。私達は大きなお城にいるのよ。そして私はお姫様。ライチは魔法で
怪物に変えられてしまった王子様なの」「王子」「ライチ・・・。私には見えるわ。
ライチは踊ってる間だけ人間に戻ってるの。人間の貴方、素敵よ。とっても素敵・・・」


恍惚とするカノンには、基地が宮殿のダンスホールに、自分が豪華にドレスアップした姫に、そしてライチは
背丈と髪型はそのままに、長身痩躯の美青年の王子に見えていた。2人きりで踊るのは、現実も空想も変わらない。

※漫画版ではダンスの曲は未設定ですが、映画版では『鎮魂歌』という題名で作詞作曲されました。
『登場人物』でカノンの項目にて紹介していますが、このダンスの曲に「伏して願い奉る」で始まる、
『最後の審判の日』の文章が、歌詞として使用されています。カノンが想像した擬人化ライチの顔は
影に覆われていますが、20代前半位に見えます。私は当初、人間だと30過ぎ位かと想像していましたが、
映画版の声は杉田智和さんなのもあり「これ位は若くないと、カノンも彼氏にしないよな」と思い直しました。


『恋人を思い夢見る夜』

これまでで最も絆が深まったと実感し、気の済むまで踊り明かした2人は玉座で眠りに着く。
ライチは階段の最上段に両足を置いて、カノンは膝枕をして貰いながら眠り始める。
「久しぶりに踊ったら疲れちゃったわ。今夜はライチも一緒に眠りましょう。そしたら同じ夢が
見れるかもしれないもの」「夢・・・」「おやすみ、ライチ」「おやすみ、カノン」
彼女と挨拶を交わすと、ほぼ同時にスリープモードに入るライチ。その夜、確かに彼は「夢」を見た。

「スリープ状態の中。メモリー内部に残っている、カノンとの色々な
情景が次々と浮かんでは消えて行った。これが夢・・・なのだろうか?
カノンも同じ夢を見てるのだろうか」


翌朝。いつもは深夜限定で活動する光クラブだが、今日だけは違う。「ゼラの14歳の誕生日である
今日中に、カノンを機械へと作り変える」この特殊任務の為だけに、例外として早朝から開始されたのだ。
ゼラ、雷蔵、デンタク、ヤコブ、ジャイボ。光クラブの残り5人は基地に入ると、速やかにカノン改造計画の
準備に移行する。彼らは玉座の真ん前に、絨毯の様に大きな白いシーツを広げて、中心に黒い棺を置く。
次に棺の中を水と紅薔薇で一杯に満たすと、シーツ全体にも大量の紅薔薇を敷き詰めた。

※本作の舞台は1985年の設定なので、この年に中学二年生だったゼラ達は1971年度生まれです。
屋外で普通栽培しているライチ畑の成長具合からして、作中終盤の時間軸は1985年6月でしょう。
私としてはライチの実が生るのは6月で、収穫されて間もなく誕生日なので「ゼラの生年月日は
1971年6月」「本作は1985年4月から6月までの3ヶ月間の物語」と推測しています。
個人的には天才イメージから「ゼラは6月生まれの双子座で、A型かAB型」を想像しています。


『帝王の誕生日の朝』

ゼラが棺を確認する中、他の4人は目を覚ましたライチとカノンを取り囲む。ジャイボ達が警告を告げる
ホイッスルをピーピーと延々と鳴らす。一方、玉座の2人は周りにいる者を睨み付ける。昨日の錯乱が嘘の様に
落ち着きを取り戻し、準備万端と判断したゼラは玉座の前へと移動して、ライチとカノンに堂々と宣言する。

「おはよう、廃墟の恋人達!!処刑の時間だ!!」

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4.
2019/03/02 (2019/04/06更新) 「『ライチ☆光クラブ』第六話『アインツ☆ニコ』感想」
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『親友達の無念を胸に』

カネダ処刑から数日後。彼の死は蛍光中の同学年の間でも話題になっていた。
国道に死体遺棄された彼の死は、世間的には「交通事故」として扱われている様子だ。

「なあ、聞いた?2組の金田、死んだって!国道で背骨ポッキリだって。
轢き逃げかな?」「そう言えば3組の田伏も一生、植物人間だろうって」


ダフは一命を取り留めたものの、パチンコの衝撃で脳を損傷してしまい植物状態に陥っていた。
ベッドの上で頭に包帯を巻かれたパジャマ姿のダフは最早、呼吸器無しでは生きて行けない体だ。
何も映していない瞳を天井に向けている彼の、生命維持装置が「ピ、ピ」と起動音を鳴らす。
生きてはいるが、死んでいるに等しい、見るも無残な姿に変わり果てた親友を見舞いに、沈痛な面持ちで
タミヤはダフの病室を訪れる。もう親友の存在すら認識出来ないダフに、タミヤはカネダの死を告げる。

「なあ、ダフ・・・。カネダも、やられちまったよ。
良いよな?ゼラに復讐しても、良いよな?」


『燃え上がるニコの忠誠心』

その日の夜。またもやニコは独自にライチの点検に当たる。これも一重にゼラへの忠誠心がなせる業だ。
ライチの目をドライバーで点検する途中、珍しくニコは彼に語りかける。点検中はスリープモードなので、
ライチにはニコの声は聞こえていないにも関わらずである。「なあ、ライチ。お前は知っているのか?
お前の右目は人間の目玉なんだぜ。ここはゼラの、こだわりでね。どうしても人間の目を固めて
埋め込みたいって。そうさ、俺の目玉さ!!ゼラに頼まれたら、目ン玉の1つ位、何でもないさ!!」

普段は胸の内にしまい込んでいる、隻眼への思いを告白するニコ。心情を吐露して我に返ったニコは、
ゼラとジャイボが肌を重ねている場面を思い出して思考を巡らせる。2人の情事の目撃者となって以来、
何をしても例の光景が目に焼き付いて離れない。「ジャイボがゼラのペ〇スを口に・・・。何だ・・・?
あれは何なんだ・・・?」ニコも性行為の意味が解らない年頃ではない。重要なのは「何故ジャイボが
自分とは違う形とはいえ、自分よりもゼラからの信頼を得ているのかの理由」である。

ニコのゼラへの忠誠心は失われてはいないが「俺こそがゼラの最大の忠臣である自信」には揺らぎが生じていた。
「お前が一番だ、ニコ」主君から最大の忠臣と認定された時の言葉も、思い出した所で気分を晴らす効果は無い。
幾ら考えようと、ゼラとジャイボの情事の真相はニコには解らない。彼に出来るのは、自分なりの解決策を
編み出して実行に移すしかない。狂気の帝王に仕える男もまた、狂気の忠臣であった。

「俺のゼラ・・・・・・。俺のゼラじゃないのか!?足りないんだ!!
片目程度の忠誠では足りないんだ!!このニコの命、ゼラのもの!!
俺が本物の1番(アインツ)になるんだ!!」


翌日からニコは光クラブの裏切り者と目され、ダフの処刑を最後にクラブに姿を見せないタミヤの尾行を開始する。
「真っ先に真っ向からゼラに反逆し、親友2人も殺害された身の上とあっては、今後は確実に何らかの攻撃を
仕掛けて来るに違いない」と睨んだのだ。放課後になると別のクラスにいるタミヤを、ドアに隠れてニコは監視する。
タミヤは思い詰めた表情で机に頬杖を付いていた。その様子はニコには何かを企んでいる様にしか見えなかった。
「タミヤ。あいつは、このまま泣き寝入る奴じゃない。あいつの動きを牽制しなければ!!」

『ライチの実が齎す甘美な夜』

その夜。三日月が煌々と夜空を照らす頃合いとなっても、カノンは眠れなかった。毎晩の添い寝相手の
ライチと寝転んだまま、カノンは彼に声をかけた。「ライチ、起きてる?」「私は眠らない。
カノンを見張っているから」「何か、お腹空いちゃって・・・」眠れない理由を話し、カノンは何か
食べ物はないかと、作業台を下りようとする。作業台の端に座った格好となった所、彼女は台の下に
大量のライチの実が入った木箱を見付ける。この間、光クラブが大量に採取して来た物の残りだ。

収穫から数日が経っている為、熟したライチはもぎ立ての頃よりも、赤味、芳香、甘味が増している。
迷わずカノンは座ったままライチの実の1粒を取り出して口にし、美味なる果実に小さく身を震わせる。
「美味し~。ほら、ライチもどうぞ」横になったままのライチの上で、四つん這いになって彼の口に
ライチの実を入れてやるカノン。「美味しい?」「私に味覚は無い。だが、何故か美味しいと感じる」

カノンが差し出したのは、普段は光クラブがライチに燃料として食べさせている物の残りである。
同じ物とはいえ、仕事の上で与えられる物と、好きな人から贈られた物とでは印象が異なる。
光クラブの知らぬ間に、そうした人間の感情の機敏すらも、ライチは感じ取れる様に成長を遂げているのだ。

『6番(ゼックス)を追跡する1番(アインツ)』

翌日もニコは昼間の休み時間からタミヤを尾行する。2人共、学校を抜ける場合を考慮し、
学生鞄を肩にかけている。タミヤは廊下で誰かからの手紙を立ち読みしていて、数メートル離れた
壁の奥から尾行するニコには気付いていない。タミヤは手紙を読み終えると、黙々と手紙の送り主の
元へと向かった。「タミヤの奴、何か変だ!!」白昼堂々、学校をサボってまで待ち合わせ
場所へと向かう、タミヤの後をニコは数メートルの間隔を空けて追い駆ける。

学校を抜け出したタミヤは延々と何も無い線路の上を歩いて行く。彼を追うニコもまた、同じ様に歩いて
タミヤを尾行する。「こんな昼間にサボって、どこに行く気だ・・・?おかしい。これは絶対におかしい!!
ゼラに知らせるべきか・・・?いや・・・。俺1人で奴の企てを阻止してみせる。手柄を上げてやる!!
俺は1番(アインツ)ニコだ!!」タミヤの思考は読めないものの、決意を固めて帽子の向きを直すニコ。
彼に気付いたのか突然タミヤが走り出す。線路上を走り抜けるタミヤを追跡すべく、ニコも彼に続いて線路上を疾走する。

「あ!くそ、早い!タミヤ、こっちは!まさか、タミヤ!」タミヤの向かった先はライチ畑であった。
ライチの動力源の生産工場を担うライチ畑は、光クラブの生命線と言える。ゼラに反旗を翻したタミヤが、
そこで何をする気なのか。すぐにニコには察しが付いた。彼らがライチ畑に辿り着く少し前。
ライチ畑には蛍光中の制服を着た謎の少年が潜んでいた。謎の少年はライチ畑の中心地に
灯油をまくと、着火したマッチを落として、ライチ畑に火を放ったのだった。

『夢の終焉を告げる、炎上するライチ畑』

ライチ畑の放火から数分後。ライチ畑を覆い尽くす炎は、蛍光中からも見える程に拡大していた。
火災現場が蛍光町郊外の広大な森林なのもあって、遠方からも炎上する光景が容易に見られる。
学校の窓から炎上に気付いたデンタクと雷蔵が、慌ただしくゼラへの報告に向かう。
無人の図書室で立ち読みするゼラを、ドアからデンタクと雷蔵が呼び出す。「ゼ・・・いや」
「常川君!」「どうした?」「あ、あれを」図書室の窓を開けて、デンタクがライチ畑を指差す。

※「常川」とはゼラの本名の名字です。あくまで「ゼラ」はクラブ活動中のコードネームで、
学校では部下達に「常川君」と呼ばせている設定です。「ゼラ」という名の由来は『ぼくひか』で
説明されます。ゼラは「不満ある日常生活との決別目的で、秘密組織での活動中は本名を捨てて、
コードネームを愛用している」のです。この点は『Caligula(カリギュラ)』のウィキッドと同じです。
ウィキッドが暴力型なのに対し、ゼラは支配型という違いはありますがね。

「家庭環境が原因で、後天的にサイコパス化している」のも共通しています。奇しくも「一部のファンから
「本名の名字とコードネームを組み合わせた仇名」を付けられてイジられている所」まで同じです(笑)
「ゼラ→ゼラ川」「ウィキッド→ウィキ口さん」と呼ばれているのが笑いを誘います(笑)
こんな事、本人達の前で言ったら確実に怒られる所か、殺されてしまいますがね(苦笑)


3人の目の前には燃え盛るライチ畑が広がった。3年前から町の郊外にある、公的には誰かの
私有地とは見なされていない森林は、ろくに消火活動もされずに全焼への道を突き進む。
際限なく焼き尽くされるライチ畑を前に、顔面蒼白となったゼラは両掌を顔に当ててショックを受ける。

「ライチ畑が・・・。あ・・・。燃えて・・・る・・・。ああああああ」

『決死の突撃』

同時刻、ニコとタミヤは業火に包まれたライチ畑の中を彷徨っていた。炎の中でさえニコは、
タミヤを捕えようとして執念を見せる。「ゼラに唯一、明確な反抗を示したタミヤこそが
一連の事件の元凶であり、彼さえ捕えて動きを封じれば全ては解決に向かう」と睨んでの行動であった。

「タミヤ!くそ、熱いっ。ゼラの為、絶対タミヤを捕えてやる!!タァミィヤァァァァ!!」

タミヤの名を叫ぶと、ニコは彼を背後から羽交い締めにする。2人は炎の中で揉み合いとなって、
取り残されてしまう。数分後、火災現場に変貌したライチ畑に残りの光クラブのメンバーが駆け付ける。
ゼラと雷蔵とデンタクとヤコブが到着した時には、一足先に来ていたジャイボが炎上する
ライチ畑を前にむせび泣きしていた。「ゼラ・・・。え、え。僕達のライチ畑が・・・」

全焼の時を迎えつつあるライチ畑を前に、誰も彼もが為す術なく立ち尽くす他ない。
呆然としてゼラが無念の言葉を零す。「ああ、僕が3年かけて育ててきたのに・・・」「ゼラ、あれを!」

『見放される瀕死の忠臣と反逆者』

デンタクの指差した方向には、全身に大火傷を負いながらも生還したニコとタミヤだった。
彼らは全身が焼け爛れていて、多量の灰や煙を吸い込んだので「ガハ、ゲホ、ゴホ」と大きく咳き込んでいる。
ニコは凄まじい執念でタミヤの頭頂部を掴んでおり、主君ゼラに「タミヤを捕えた」と報告しようとする。
だが焼かれた喉から出る言葉は、何もかも大きな咳に変わってしまい、誰とも意思疎通は叶わない。

火傷まみれのニコとタミヤに、デンタクとヤコブと雷蔵は応急処置を施す。「上着を!!」「お、おうっ」
デンタクが主導して3人は上着を脱いで、地面にうずくまるニコとタミヤを「バサッ、バサッ」と扇いでやる。
学ランの風によってニコとタミヤに付いた、熱の残りや燃えカスが取り除かれるのを、ゼラとジャイボは黙って見ていた。
ひとまず応急処置が終わるとゼラが口を開く。「随分と大それた事をしてくれたじゃないか。タミヤ」

ゼラもニコも「一連の事件を影で糸を引いていたのはタミヤ」だと根拠も証拠も無いのに決め付けている。
自分に疑いの眼を向ける者が何を言おうとも、今のタミヤには「ガボゲボ」と止まらない咳しか出来ない。
それはニコも同じだった。反論不可能なニコにとって、最も残酷な言葉をゼラが言い放った。

「ニコ。お前は1番に信頼出来る男だ。そのお前が、まさかこんな事をするとは。
まさかタミヤと組んでライチ畑を燃やすとはな!!2人を基地に連れて行け!!」


ライチ畑放火事件の犯人を早合点して、ニコとタミヤだと断定したゼラは即座に2人の処刑を決定した。
ゼラの暴言に彼以外の誰もが耳を疑ったが、ここにはゼラに歯向かえる者はいない。忠臣であった自分に
愛想を尽かして背を向ける主君に、うずくまったままニコは届かない手を伸ばす。疑惑を否定しようにも
言葉を紡げない口からは「ゲホゲホ」と大きな咳だけが漏れ出る。ニコがゼラにとって最大の忠臣であり、
それ故にライチ畑の放火犯では有り得ないのは、ゼラを除く光クラブのメンバーには周知の事実である。

それでもデンタクとヤコブはゼラの命令には逆らえず、恐怖から服従するしかない。2人はロープで
彼の両手を縛りながら、ニコに同情して交互に謝罪を述べる。「ごめん、ニコ」「解ってる。
解ってる・・・。ニコ」「でも僕達もゼラには逆らえないんだ」「ごめんよ、ごめんよ」

『疑心暗鬼の暗中模索』

光クラブは拘束したニコとタミヤを連れて、基地へと帰還する。ゼラは台座の階段部分に腰かけ、
手前には顔に布を被せられ、両手を縛られたニコとタミヤが突き出されている。その奥には雷蔵、デンタク、
ヤコブの3人が並んで立っている。3人も「ライチ畑やニコとタミヤの件」にショックはあるものの、
至って落ち着いている。この緊急事態において最も冷静さを欠いているのは、他ならぬリーダーのゼラであった。

またしてもゼラは状況をチェスに置き換えて推理する。幾ら思考を重ねようと、状況の把握すらも困難であり、
事態に好転の兆しは見えない。「まさかキングス・ギャンビット・アクセプケット。ポーンで来たか・・・。
これは僕の定石の予想を超えるゲームだ」ライチ畑が全焼した今となっては、ライチに関する計画も
保管してある燃料が尽きた時点で頓挫せざるを得ない。長年、苦労して進行させて来た計画の終焉を帝王は嘆く。

「ああ、ライチ畑が・・・。僕達の機械(マシン)を動かすには、
大量のライチの実がいるというのに。もうお終いだ!!」


『1番(アインツ)、6番(ゼックス)の処刑失敗』

ゼラは項垂れて悲痛な叫びを上げると「この終局しか見えない事態を引き起こした元凶だけは、
何としてでも処刑してやる」と決意し、反逆者と見なしたニコとタミヤの処刑に動き出す。
今回も死刑執行人はライチの役目だ。ゼラに起動パスワードを発動されたライチは、
うずくまってジタバタと抵抗するニコとタミヤの背後から忍び寄り、彼らの体に触れようとする。

「ライチ・ラライチ・ララライチ。処刑をしよう、ララライチ。2人を殺せ、ララライチ。
内臓えぐれ、ララライチ。骨を砕け、ララライチ。首をもぎ取れ、ララライチ」ゼラに命じられるまま、
タミヤとニコに手を伸ばした瞬間、ライチはカノンと目が合った。誰であれ殺人は良しとしない
カノンは寝たふりを止めて、玉座から冷たい視線を投げかけて意思を訴える。

この視線を受けて数日前「本物の人間になりたいなら、人を殺してはいけない」という、
カノンの教えを思い出したライチは混乱してしまう。キュルキュル音を響かせて、
のけぞるライチは途切れ途切れにカノンの言葉を復唱し、仕舞いには絶叫すると気を失う。

「本物の人間になり、人を、殺・・・・・・。いけないわ。本物の人間になりたいなら。
いけない。人を殺、人を殺してはいけないわ。ああああああ!!」


ショートして地面に倒れ伏したライチ。これまでは彼は必ずゼラからの任務を忠実に遂行していた。
この期に及んでライチまでもが自分に歯向かった事に、ゼラは激しく動揺しデンタクに八つ当たりする。
「デっ、デンタク!こっ、これは一体どういう事だ!?ちゃんとコンピューターの制御をしておけ!
でないと次はお前を処刑だ!!」今度はライチの教育係だからと、デンタクに一方的に疑ってかかるゼラ。
主君からの疑惑の目よりも、当のデンタクにはライチのバグ発生の方が気にかかった。「ライチ・・・・・・?」

ニコとタミヤはというと、全身が火傷まみれにも関わらず、満足な応急処置も受けられずにいる。
もがき苦しむ2人は、今すぐ病院に運ばないと命すら危うい。「ニコとタミヤは放置しておけば、
死ぬのは時間の問題」と判断したゼラは、彼らを玉座の前で磔刑(たっけい)にして死亡を待つ事にする。
ニコとタミヤは顔に袋を被せられたまま、木の柱に両手を縛られてしまい、2人並んで同じ罰を受ける。
「まあ良いさ。裏切り者には餓死が相応しい!ライチの力は温存しておかなければな」

『帝王発狂』

玉座に座る美少女の前に、全身火傷で死にかけの2人の少年を並べるという、惨々たる光景を作り出した後。
窮地から錯乱状態に陥ったゼラは独り言を繰り返し、無茶苦茶な打開策を捻り出す。「エネルギー。太陽・・・。
太陽神エラガバルス。永遠の美。このタイミングでライチ畑が炎上!成程・・・。合理的な考えが見付かったぞ。
何だ・・・。解った・・・。簡単じゃないか。くっくっくっ」右の人差し指を咥えて、狂気を孕んだ笑みを零すゼラ。

普段にも増して狂気に目覚め、何をするか解らない状態となった主君に、雷蔵とデンタクはゾクッとする。
ゼラは立ち上がると咥えていた人差し指を使って、寝たふりのカノンの顔を囲んで、空中にクラブの
シンボル五芒星を描くと言った。恐慌から発狂へと至った彼は幼児退行まで起こしている模様だ。

「昔ね、僕ね。町で、おじさんにこう言われたよ。全ての鍵は1人の少女が握ってるって。
だから僕、解ったんだ!鍵って事は鉄って事じゃん!鉄にしちゃえば良いんだよ!
僕って何て頭良いんだろう!バレてるよ。もう眠るふり止めなよ」


ライチと目を合わせてからは、再び眠るふりをしていたカノンだったが、とっくにゼラには見抜かれていた。
両目を開けるも無表情に無反応を貫くカノンを、ゼラは「べー」と舌を出して挑発する。ゼラの狂気の演説は続く。

「我々に必要なのは時の移ろいで、すぐ萎えてしまう花の様な美しさではない!!
そうだ。我々に必要なのは、決して成長する事の無い鉄の少女。お解りか、諸君!
本物より美しい鉄製少女だよ!!少女を機械(きかい)に改造するのだ!!
美しいままの姿で永遠に生き続ける命!!これこそエラガバルスこと僕の夢だ!!」


冷や汗まみれでフラフラと歩きながら、支離滅裂な演説もとい計画を披露するゼラ。ここまで彼が
焦燥感に駆られているのは、裏切りやクラブ崩壊の恐怖だけが原因ではない。度重なる不幸から
「14歳で死ぬかもしれない」という、占い師マルキドの予言が現実味を帯びて来たからでもある。

「エラガバルスが皇帝に即位したのが14歳。僕も明日で14歳・・・。
明日・・・。明日じゃなきゃ駄目だ・・・。明日この少女を機械(きかい)にする!!
その為には、まず少女の処刑だ!!美しく・・・甘美な処刑が良いな・・・」


とうに正気も知性も失い、無理難題な計画を強要する帝王に、デンタクと雷蔵とヤコブは恐怖に苛まれる中、
精一杯の反論を展開する。「ゼ・・ゼラ。お言葉ですが、少女を機械(きかい)になんて、
技術的に無理です!しかも明日なんて」「ライチを作るのに1年もかかっているんです」「材料は?
それよりも設計図は・・・!?」余りにも唐突で無計画な命令に、困惑する部下3人。理性を維持する彼らと違い、
完全な狂気に染まったゼラには、現実逃避も兼ねて「少女改造計画」の成功しか見えていない。

「相変わらず君達は理論性、合理性に欠くな・・・。どうやって作るかより、
どうやって殺すかだろ?ククク・・・。そうか、薔薇だ・・・。薔薇が必要だ!!
今宵、町中の花屋から全ての薔薇を奪いに行こうではないか!!」


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5.
2019/02/23 (2019/04/06更新) 「『ライチ☆光クラブ』第五話『オルガン☆ライチ』感想」
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『美少女の目覚めの時』

ダフの処刑から数日後の夜。光クラブが1人もいない中、ライチは寝台も兼ねる作業台に横になり、
少女一号を監視していた。メンバー不在中、彼女の見張りをするのがライチの義務なのだ。
今日も今日とて彼は寝転んで、顔だけを少女一号に向けたまま見張りに徹する。

ライチ1人だけの特別な視線を感じ取ったのか、ついに光クラブの眠り姫だった少女一号が目を覚ます。
彼女はゆっくりと起き上がると、ライチに気付いて問いかける。「ん・・・。君は・・・誰?」

『幼き日に運命を変えた予言』

ここで一旦、舞台は3年前へと切り替わる。当時は小学五年生だったゼラが、光クラブに加入してから
暫らく経った頃。ある日の街角で偶然、彼は運命を劇的に変えられる事となった。その原因を与えたのは、
マルキド・マルオという年老いた占い師の予言だった。占いの露店を営むマルキドは皺くちゃで
染みだらけの顔をした、胡散臭い小男である。服装も襟に毛皮の付いたダボダボの服で怪しさ満点だ。

マルキドは業務用テーブルの真横を通りすがった、ゼラをいきなり呼び止める。きょとんとする
ゼラをプルプル震える手で虫眼鏡で覗き込み、勝手に鑑定したマルキドは指差して予言を豪語した。

「そこの坊ちゃん、待たれよ!おおお。このマルキド・マルオ、
56年の占い歴で始めて見る相だ。坊ちゃんには「黒い星」が付いておる。
ヒトラーにも付いてなかった星だ・・・。坊ちゃんは30歳で世界を手に入れる。
または14歳で死ぬ・・・。その鍵は1人の少女が握っているだろう」


この時ゼラは「世界征服」の野望に目覚めた。ゼラにとっては神託とも言えるマルキドの予言が、
それまでは「常に冷静沈着な天才少年」でしかなかった彼を独裁者への道に駆り立てたのだ。
予言から計り知れない感銘を受けた結果として、現在の極悪狂人サイコパスのゼラが形成された。

ゼラは「14歳で死ぬかもしれない」を除いては、予言の実現を信じ込んでいる。
ヒトラーを目標の人物とするのも、黒い星が描かれた手袋を愛用するのも、
そして美少女を捜し求めていたのも、全てはマルキドの予言の実現化を狙っての行動なのだ。

※こんなインチキ臭い占い師の言葉を真に受けるなんて、馬鹿みたいに思う方もいるでしょう。
しかしマルキドに出会う以前にも、出会って以降にも紆余曲折あったからこそ、ゼラは独裁者への
道を突き進む事となったのです。ここで言う「紆余曲折」は過去編『ぼくひか』で判明します。
ちなみに『ぼくひか』では、マルキドは一方的に鑑定しただけなのに「小学生のゼラに鑑定料
500円をせびるも、終始一貫して完全無視される間抜けなシーン」が追加されています(笑)


『甘美なる機械(マシン)、囚われの白百合との出会い』

「野望実現の鍵を握る」と言われる美少女は今、ライチと邂逅を果たした。少女一号と呼ばれる彼女は
ライチに名前を問う。「君は誰?」ライチは寝転んだまま答える。「ライチ。私の名はライチ」
「ライチ・・・。ライチ。良い名前ね。私はカノン。カノンよ」自分を拉致した、得体の知れない
巨大ロボットにも臆せず、カノンは名乗り上げた。「カ・・・ノ・・・ン」「そう、カノン」
返事をした彼女の変化を観察しようと、ライチは起き上がって彼女の玉座の前へとやって来る。

「ピー、カチカチ」と小さな音を出して、カノンを認識するライチ。彼の目にはカノンが
攫って来た日と同様、精巧なドット絵に変換されて見えている。この視認状態からもカノンの
美貌は把握可能である。「ガンガン」と台座を上ったライチの巨体に、カノンは目を丸くする。
220cmもの巨体を誇るライチは、150cmと小柄なカノンには人一倍に大きく見える。

※ライチの目に映る世界は、最初から最後までドット絵で表現されています。
当初は初期型ゲームボーイ並でしたが、バージョンアップしてからは00年代前半の
パソコン並の高解像度に進化しています。人物もドット化されて見えています。
ドット化される人物では後に恋人になるだけあって、登場回数はカノンが断トツです。


「わあ。大きいのね、ライチ。何だかライチは機械の様に見えるわ」「違う。私は人間だ」「ねえ、ライチ。
お願いがあるの。これ外して。片手だけで良いから」カノンは自分を玉座に縛り付ける、手枷の片方を
外す様に促した。「片手だけ。逃げない。解った」ライチは彼女の要求に応じて、左側の手枷を外してやった。
解放された左手でカノンはライチの頬を撫でる。とても人間だとは思えない鋼鉄の感触がする。

「こんな固い人間、私は知らないわ」「私は人間だ」「どうして、そう言えるの?」「そうインプットされている」
何を言おうとも「私は人間だ」という主張を頑として譲らないライチに、少しだけムッとして顎に人差し指を
当てて反論するカノン。「ずるいわ、ライチ!私は難しい事、解らないもの!」今度はライチが
カノンに聞きたい事を聞く。「カノン、いつも眠っている。何故カノンは、いつも眠ってばかりいる?」

「だって目を覚ますと、恐い男の子達に囲まれているんですもの。だから眠っていれば不幸せな時間も、
どんどん通り過ぎて行ってしまうわ」両目を閉じて、眠っている時の表情を浮かべてみせるカノン。
彼女の眠りは「自分なりに不幸な時間をやり過ごす為の方法」だったのだ。そうまでしてカノンが
避けたい不幸とは何なのか。今のライチには幾ら計算しても解り様が無い。
「不幸せ・・・・・・。そんな言葉、私の頭の中どこにも無い。不幸せ・・・・・・」

『天真爛漫なカノン』

ライチの計算中、カノンが用意されていた食事に気付く。これは光クラブが毎日、給食の残りを
出している物で、今日は牛乳とパンのセットだ。「ライチ、あれ取って!」彼女はライチが
運んで来た給食を、あっと言う間に美味しそうに平らげてしまう。腹ごしらえしたカノンは舌を出して、
ライチに無邪気に笑いかけた。「ライチと話してたら、お腹空いて来ちゃった」「お腹・・・・・・」
ロボットであるが故に、解らない事だらけのライチは、カノンの発言に呆気に取られる一方だ。

カノンはライチと親しくなろうと、自分の特技について話し出す。お嬢様学校の生徒である彼女は
親の言い付けで塾にも通っている。底辺の男子校に通い、塾に行く余裕も無い程に貧乏な光クラブとは、
正反対の身の上である。「私、水泳、習ってるの。誰よりも長く潜っていられるんだから!
もう1つはピアノ!ねえ、あの弾かせて。でないと私の指は鉛の様に重くなってしまうわ」
カノンは部屋の隅にある、古びたオルガンを見付けると「演奏させて欲しい」とライチに要求する。

今の今まで誰も見向きもしなかった老朽化したオルガンに、おそらく数十年ぶりに演奏者が現れた。
オルガンは普段カノンが使用するピアノより格段に質は落ちるが、演奏者を満足させるだけの
音色は今なお奏でてくれる。オルガン演奏となると両手の解放は必然の為、ライチはカノンの依頼を拒む。
「カノンを、ここから出してはいけないとインプットされている」「それは「この部屋から出してはいけない」
という意味よ。言葉をそのまま捉えるなんて、ライチって子供ね!」「子供・・・・・・」

融通が利かないライチにまた少しムッとして反論するカノン。実年齢は生後数日とはいえ、生まれた時から
「高い知性を備えた大人」として設定されているライチは、自分を子供扱いする彼女の発言に面食らう。

『讃美歌の歌声、オルガンの音色』

拉致されてから初めて玉座から解放されたカノンは自由を満喫する。見張りとしてライチが背後に立つ中、
カノンは得意の賛美歌を披露する。演奏曲は『讃美歌463番』だ。彼女はオルガンを軽やかに弾きながら歌い出す。

「細やかなる雫すら、流れ行けば海となる♪細やかなる真砂すら、
積もりぬれば山となる♪愛の小さき、わざらすも♪地おば神の国となさん♪」

カノンの歌声と演奏はライチも聞き惚れてしまう位、美しく素晴らしいものだった。「綺麗。カノンの歌、綺麗」
「これは讃美歌って言うの。ライチ、隣に座って。私がやった通り弾くのよ」「解った」褒めてくれたライチに
優しく微笑むと、カノンは連弾に誘う。素直にカノンの隣に座り、ライチは連弾を始める。生まれて初めての
演奏だとは思えない位、ライチの演奏は上出来だ。「上手よ、ライチ。でも次の小節は難しいわよ」

長年ピアノを習っているカノンでも難関だった小説も、難なくライチは演奏した。カノンから感心の声が上がる。
「凄いわ。君すぐ覚えてしまうのね。私ここ泣きながら練習したのに!」カノンとの交流を経て、
ライチの胸に未知の感情が芽生える。彼とも楽しさを共有出来ると知った、カノンは明るく声を上げて笑った。

『生まれて初めて芽生えた感情』

「明るい・・・・・・。カノンとオルガン。明るい。目の前が、とても明るい」
「あは・・・。あははは。ライチ、それは「楽しい」って言うの」
「楽しい。楽しい。私は楽しい」「私も、とても楽しいわ!!」


カノンと出会い、初めて生まれた感情が何かを教わると、より一層ライチの胸に「楽しさ」が広がった。
連弾を終えると、久々に動き回って疲れたカノンは眠気に誘われる。現時刻は光クラブ解散後なので、
とっくに午前0時は過ぎている時間帯だ。「久しぶりに笑ったら疲れたわ。もう眠りましょう」
「私は眠らない。カノンが、ここから出ない様、見ていなければならない」言葉は厳しいままだが、
「部屋から出さなければ、カノンは自由に振る舞って良い」と学習したライチは、この時も彼女の要求に応じた。

今夜からカノンは作業台でライチと添い寝するのだ。カノンはライチに寄り添って、こう言うと、
すとんと眠りに落ちた。「あの椅子、とても疲れるの。だから夜は、ここで眠らせて」ライチは
「すーすー」と寝息を立てるカノンを見守りながら、彼女が教えてくれた事を反芻する。「楽しい・・・・・・」

※今回より開幕するライチとカノンの恋物語は、実にハートフルなストーリーとなっています。
2人の交流は光クラブの目を盗んで行われるので、まるで別世界のストーリーを見ている気分にもなります。
ライチとカノンの恋路は、光クラブの動向とは同時進行で描かれて行きます。「順調に愛を育むライチと
カノン」に対し「長年の結束に揺らぎが生じ、残酷なる内輪揉めに突き進んで行く光クラブ」とは正反対です。


『ライチの実の収穫と補給』

翌日の夜。ダフの処刑そしてタミヤの離脱から数日が経過したが、光クラブは何事も無かったかの様に活動していた。
今日の任務は郊外で栽培している、ライチ畑からのライチの実の大量採集である。ニコ、雷蔵、カネダ、デンタク、
ヤコブは学生鞄がパンパンになる程、ライチの実を入れて「ザッザッザッザッ」と歩いて基地へと戻る。
彼らは作業台に座るライチの前に現れると、彼の隣にある大型の木箱に全てのライチの実を入れた。
デンタクがライチの実が山盛りとなった木箱を、ライチに差し出す。「ライチ、燃料補給の時間だ」

すっかりライチの教育係が板に付いたデンタクが合図すると、ライチは燃料をガツガツと貪る。
箱の中に山程あった実は、みるみる減って行く。このライチの巨体を動かすには、学生鞄5つ分もの
ライチの実を食べ尽くす必要があるのだ。無心に食べ続けるライチを見て、ニコと雷蔵とデンタクが一言言う。
「こいつ結構、燃費悪いよな」「美味しそうに食べるわねー」「この巨体をライチの実で動かしてるんだもんね」

当たり障りの無い会話を繰り広げる3人であったが、これに難癖を付ける者がベルトコンベアーから現れる。
「君達!よく聞こえなかったんだが、今、僕の悪口を言ってたんじゃないだろうね?」ゼラはベルトコンベアーで
横向きに下降しながら、眼鏡のブリッジに指を添えて部下達を威圧する。気圧されたニコとデンタクは取り繕う。
「ゼラ・・・。むしろ逆です」「そうです。ライチの設計の素晴らしさを讃えていた所です」「そうか。フフフ。
讃えてたか。・・・ならば良い」部下のお世辞にご満悦となった帝王は、少女一号ことカノンの異変に気付く。

※前回の鬱展開の元凶なのに、コミカルで小物臭い登場シーンを見せたゼラに吹き出しました(笑)

『少女一号の変化の兆し』

「!少女一号の食事が無くなっている!!」「ライチが与えた様です!」間髪入れずニコが報告する。これまでは
眠り続ける一方で、食事を取っていたのかも怪しいカノンが変化の兆しを見せた事に、ゼラはこの上ない
満足感に浸る。彼はカノンの前に立つと、眼鏡のブリッジを人差し指で押さえつつ恍惚として語りかける。

※ゼラは眼鏡のブリッジを触ったり、抑えたりするのが癖なのです。ブリッジとは
眼鏡の中心部、鼻にかかる部分を指します。頭脳派眼鏡キャラには、お約束の設定ですね。
ゼラは天才美少年なだけに、この仕草が非常に絵になっています。


「そうか。僕は嬉しいぞ。お前には生きる意志が有るというのだな!お前が寝ていようが、
起きていようが、僕にはどうでも良い事だ。お前の様な美しい少女が同じ空間にいる。それだけで、
ここは祝福された場所になるのだ!ライチの誕生!!そしてライチは美しい少女を奪って来た!!
僕は全てを手に入れた!!この光クラブは盤石だ!そうだろう?」「はい!!その通りです、ゼラ!!」


台座の上から部下達に向けて、身振り手振りを交えて演説するゼラ。最終目標である世界征服には
果てしなく遠いものの、美少女の降臨によって彼が光クラブに必要とする物は全て揃った。
威風堂々とクラブの繁栄を約束する帝王の言葉は、部下達の心を鷲掴みにし「YES」としか言わせない。

『裏切り者が疑心暗鬼を生ず』

ところが、ここに来てゼラに異変が起きる。タミヤの裏切りを切っ掛けに生じた、疑心暗鬼から情緒不安定に
なってしまったのだ。突如としてゼラはワナワナと震え出し、冷や汗をかいて部下達に問いかける。

「次は・・・誰だ?」「は?」「何故・・・タミヤは僕を裏切ろうとした?
何故!?次は誰だ!?次は誰が裏切るのだ!?」


※今回からタミヤの離反を切っ掛けにして、ゼラの内に秘めた脆さが描写されて行きます。
『ライチ』本編のみだと「単なる強者を気取っていただけの弱者」に見えるかもしれません。
彼が裏切りを異様に恐れる訳は『ぼくひか』で語られます。ゆるいネタバレですが、
ゼラは『ライチ』『ぼくひか』『四コマ』で、最も印象が変わるキャラでもあります。


自分の思考に付いて行けずにいる、6人の部下をチェスの駒に見立ててゼラは推理を組み立てる。
ご丁寧にも脳内で計算するだけに飽き足らず、本物のチェスセットまで持ち出す有様である。
彼は台座の階段部分に座り、手前に置いたミニテーブルの駒を動かして理論を突き詰める。
「雷蔵がルーク。デンタクはナイト。ニコはポーン。カネダもポーン。ヤコブがビショップ。
ルークがd4だと、ナイトが取り返される。そこにポーンを・・・。こう来ると。ああ、そうか・・・」

裏切り者にある程度の目星を付けたゼラは、疑惑を向けた者達の名前を次々と呼ぶ。今の彼の耳には
自分を心配して「ゼラ・・・」と名を呼んだニコの声さえも届いていない。名前を呼ばれた部下達は皆、
痛くもない腹を探られて困惑する。「ビショップ・ヤコブ!お前が次の裏切り者か!」「えっ。そっ、そんな」
「いや・・・。ダニッシュ・ギャンビット。奇襲という手もあるか。ならばポーン・ニコ!」
「ゼラ!まさか!」「いや定石ならナイト・デンタク!!ナイト・フェークならば雷蔵だ!」「えっ」

幾ら計算しても埒が明かないと悟ったゼラは苛立ちの余り、盤上のチェスの駒を全て
ガシャンと引っくり返し、懊悩の果てに両手で頭を抱え込んで、こう言った。

「僕は許さないぞ!裏切り者は処刑だ!!」

『癒されない情事の目撃者』

クラブ解散後。苦悩から疲れ果てたゼラはジャイボに、性的にも精神的にも慰めて貰っていた。
2人はカノンが熟睡中だからと、玉座の前に寝そべって情事に及んでいる。上半身も下半身も
半裸のゼラは、全裸のジャイボに口で奉仕を受けつつ、うわ言を吐息交じりに繰り返す。
「人間とは・・・。はあ、はあ、はあ。必ず裏切る生き物なんだ。はあ、はあ、はあ。次は・・・誰が・・・。
はあ、う」基地の中にはゼラの熱の込もった吐息と、ジャイボが彼の下半身を舐める音だけが響く。

ゼラのうわ言が途切れると、ジャイボの口の動きが激しさを増す。「はあ、はあ、はあ。う」肉体的には
一定の満足はしていても、ゼラの心は曇ったままだ。同情したジャイボは健気にも「自分だからこそ
出来る方法で、一時的にでもゼラを苦悩から解放しよう」と、より一層の奉仕に励む。「可哀想なゼラ。
タミヤの所為で、とても疲れているんだね。ああ、ゼラ。僕が慰めてあげるから。もっともっと
気持ち良くしてあげる。だから元気出して」ゼラの胸を舐め始めると、笑顔を浮かべて励ますジャイボ。

2人の交わりをカノンは目にしていないが、別の人物が目にしていた。財布を忘れて、運悪く基地に
戻って来たニコだ。彼は崇拝するゼラが快く思っていないジャイボと、一夜を共にする光景を目撃して
愕然とする。出入口で硬直する目撃者と化して数分後。ニコは用事も忘れて、何も言わずに基地から逃げ出した。

『演奏と恋愛の手解き』

数日後。カノンの指導を受けたライチの腕前は日を追うごとに上達していた。今ではカノンが彼の演奏に、
うっとりする程だ。「ライチ、ライチね。とても上手になったわ。あのゼラって男の子、絶対、変よ。
頭のネジが緩んでしまってるのだわ」怪訝な顔をしてゼラを批判するカノンに、オルガンを弾きながら
ライチが諭す。「ゼラは私を作った。ゼラの頭にネジは無い。「ゼラは絶対」そうインプットされてある」
「ふうん。インプットって何だか恐いものなのね」かねてからの疑問をカノンはライチに投げかける。

「ライチが私をここに奪って来たんでしょ?」「そうだ」「そうインプットされてたのね」
「違う。私がカノンを選んだ」「どうして私だったの?」「綺麗だと思った。一緒にいたいと思った」


顔だけをカノンの方に向けて、彼女を連れて来た理由を告白するライチ。真剣な彼の言葉を嬉しく思う反面、
両目を閉じてツンと澄ました顔をするとカノンは言った。「あら、ライチってプレイボーイなのね!」
「?プレイ・・・?」「駄目よ。そういうのは簡単に使っちゃいけない言葉なのよ。本当に胸の奥が
「ぎゅうっ」てなって「この人を死ぬまで守りたい」と思った時、使う言葉よ。解った?」「解った」

恋の手解きをライチに教えたカノンは、玉座から下ろして貰うと、今夜もライチと添い寝する。
「今夜も隣で眠らせて」「解った」「そういう時は優しく「おいで」って言うの!」「おいで・・・・・・」

『反逆の予兆、黒のキング』

翌日の夜。ゼラの猜疑心を加速させる出来事が起きる。彼愛用のチェスセットの黒のキングが、
何者かに頭を折られていたのだ。ゼラはチェス愛好家の上に黒のキングを自身の象徴として見ている。
これを折る事は、ゼラにしてみれば反逆行為に他ならない。ゼラが狼狽えて悲鳴を上げる。

「あ、あ、あああああ!誰だ!?誰だ・・・!?これは一体、誰の仕業なのだ!?」

当然の如く、再び部下達に疑いの目を向けるゼラ。「1番(アインツ)ニコ。7番(ジーベン)ヤコブ。
4番(フィーア)デンタク。2番(ツヴァイ)雷蔵。8番(アハト)ジャイボ」部下の誰もが主君に
同情の眼差しを向ける中、号令をかけると1人の姿が見当たらない事にゼラが気付く。

「!どこだ・・・。3番(ドライ)カネダは!?」「ゼ・・・ゼラ!今、捜して来るから待ってて!」

自ら名乗り上げたジャイボにカネダの捜索を任せると、ゼラは折られた黒のキングの頭を摘まみながら
犯人に怒りを燃やす。「黒のキング・・・。その首を落とすとは、僕に対する反逆の狼煙(のろし)。
許さない・・・!!絶対に許さない!!」ゼラが犯人への報復を誓った直後。早くもジャイボがカネダを連れ帰る。

「ゼラ!カネダの奴、逃げてた!!」

『鬱屈の瞳に映るもの』

先刻まで逃走していた為、汗だくになって呼吸を荒くしているカネダを、ゼラは正面から見据えて
黒のキングを掲げて見せ付けて詰問する。「3番(ドライ)カネダ。これをやったのは君かね?」
「はっ、はっ、はっ」独裁者の鋭い眼光に射抜かれて、元から臆病なカネダは口も体も動かせなくなる。
恐怖の余りガクガク震えて乱れた呼吸しか出来ない彼は、床に崩れ落ちてしまう。

肉体的にも精神的にも膝を屈したカネダを、光クラブは取り囲む。「犯人カネダの動機は親友タミヤと
ダフの仇討ちで、今の怯えた態度は犯行露見からの処刑を恐れての事」だと断定したゼラは、彼の処刑を言い渡す。

「ライチ!!カネダを処刑せよ!!」

カネダを囲んでいた5人のメンバーを割って入って来たライチが、彼を仰向けにして両手で持ち上げる。
胴体の全面からカネダの体を真っ二つにへし折る魂胆だ。高く掲げられたカネダの声が「はっ、はっ」という
荒い息遣いから「あああああ」という悲鳴に変わる。権力的にはゼラに、腕力的にはライチに到底敵わない、
他のメンバー達はカネダの処刑を黙って見ているしかない。最早「あああああ」という悲鳴の連呼しか出来ない
カネダを、ゼラは情け容赦なく責め立てる。ゼラの頭には「犯人はカネダ」という考えしか存在しない。

「お前とタミヤとダフの3人で光クラブを創った!今やそのタミヤとダフがいなくなった!!
だから僕が憎かったんだろう?犯行の芽は根こそぎ摘み取る!やれ、ライチ!やれ!」


これまで何が起きようとも睡眠を貫いていたカノンも、ゼラの叫び声で「ライチが殺人に加担させられる」と
察知すると目を覚ます。危機感にカノンが目を見開いた瞬間。カネダの体は「ゴキ」と音を立てて
真っ二つにへし折られ、背中と足の裏側がピッタリとくっ付いてしまう。腹部が裂けて出来た山折りの
折り目からは、大量の鮮血がスプリンクラーの様に吹き出した。カネダの口の中にも血液が溢れ出る。
「タ、タミヤ君・・・・・・」涙ながらにクラブを去った親友に思いを馳せて、カネダは事切れた。

ゼラは返り血まみれとなり、処刑人としての務めを果たしたライチを絶賛する。

「素晴らしい処刑だったぞ、ライチ!!ライチ・ラライチ。
僕らの万能機械(マシン)ララライチ!!」


『死者を悼む心』

クラブ解散後。顔に多くのカネダの返り血がこびり付いたまま、ライチはオルガンに没頭する。
カノンは悲し気な顔で、彼に演奏を代わる様に言い出す。「ライチ・・・。オルガン弾きたい・・・」
カノンはカネダの死を悼み、彼に捧げるレクイエムとして『世界の終末の日』と呼ばれる讃美歌を捧げる。
今までとは打って変わって、悲壮感に満ちた重厚な曲調と歌声に、ライチは静かに耳を傾けた。

「伏して願い奉る♪灰の如く砕かれし心も♪我が終わりの時を計らい給え♪
涙の日なり、その日こそ♪灰から蘇えらん時♪人、罪ありて暴かれるべき者なれば♪
願わくば神よ、それを憐れみ給え♪願わくば神よ、それを憐れみ給え♪」


演奏を聞き終えたライチの心も沈み込み、カノンがレクイエムについて説明する。

「この曲は目の前が、とても暗い」「それは「悲しい」っていうの。
これは鎮魂歌(レクイエム)と言って、死者の魂を慰める歌よ。この曲が悲しいのは
死んだ人が殺されて、とても悲しいからなの」「悲しい?カネダ悲しい?」


自分が殺したカネダの死を嘆き悲しむ、カノンの気持ちに寄り添おうとするライチ。
カノンはオルガンの椅子に座ったまま、涙を流して切々と訴える。

「ライチ。貴方、本物の人間になりたいんでしょう?」「私は人間だ。
そうインプットされている」「そうだとしたら、ライチはまだ赤ちゃんなんだわ。
本物の人間なら悪い事はしない。それが幾ら強い人間の命令であっても。
本物の人間になりたいのなら、人を殺してはいけないわ」「人を殺しては、いけない」


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