みずたでぜんまいのブログ

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12019/02/16 『ライチ☆光クラブ』第四話『ぼくらの☆ひかりクラブ』..
22019/02/09 『ライチ☆光クラブ』第三話『少女☆降臨』感想..
32019/02/02 『ライチ☆光クラブ』第二話『優美なる☆機械(マシン)..
42019/01/27 『ライチ☆光クラブ』第壱話『エラガバルスの☆夢』感想..
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1.
2019/02/16 「『ライチ☆光クラブ』第四話『ぼくらの☆ひかりクラブ』感想」
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今から4年前。当時は小学四年生だったタミヤ、ダフ、カネダによる、光クラブ結成秘話の一端が語られる。
3人が10歳の夏。タミヤは赤子時代からの幼馴染ダフとカネダを伴い、立入禁止地区へと出向く。
行き先も告げずに先頭を走る、タミヤを追いかけながらカネダが聞く。「ねぇ、タミヤ君。どこへ行くの?」

「良いから!」戸惑い付いて行くのをダフが躊躇う。「あそこ、立入禁止って・・・・・・」
「大丈夫だって!」「怖いよぅ」「早く来いって」目的地の入口に着いてからも「怖い」と口にするダフ。
カネダもまた怯えているのか、ダフの後ろに隠れている。二の足を踏む親友2人に、タミヤは見せたい物を見せる。

「見ろよ、ダフ、カネダ!」「え」「ここが今日から俺達の秘密基地だ!!」

タミヤが見せたのは後に光クラブの中心地となる、廃工場の一室であった。工場の大半はスクラップで
埋め尽くされていたが、この一室には子供の遊び場としては広大な程にスペースが残っていた。ここを運良く
発見したタミヤは、ダフとカネダと共有する「子供の遊び場としての秘密基地」にしようというのだ。

出入口のベルトコンベアーから一室の広間へと下りると、タミヤは親友の2人にあらかじめ考えておいた
この秘密基地の名前を紹介する。3人はしゃがみ込んで、地面に基地の名前の由来を書き込むタミヤを
ダフとカネダが見守る。「田宮博(たみやひろし)。田伏克也(たぶせかつや)。金田りく(かねだりく)」
3人の名前を言うと同時に、平仮名にして縦3列に並べて書いたタミヤ。次に彼は各自の名前の頭文字を〇で囲む。
〇で囲まれた文字を左から読むと「ひかり」と読める。これに気付いたダフが反応する。「ひかり?」

こうしてタミヤが前もって考えていた、秘密基地の名前が発表された。基地の名前は3人の友情の証として、
各々の名前の頭文字を組み合わせて「ひかりクラブ」と名付けられた。「ひかり」は「光」と結び付けられて今に至る。

※『ライチ』での光クラブの過去描写は僅かで、今回のタミヤが基地を作って、ゼラを加入させる所しか
描かれていません。どの様にしてクラブが変貌して行ったかの描写は全く無いので、詳細を知りたくば
今回のサブタイトルやエピソードを由来とする前日譚『ぼくらの☆ひかりクラブ』を読むしかありません。
「光クラブ」の表記も重要な演出となっていて、タミヤとダフとカネダの3人が「ひかりクラブは本来、
自分達の秘密基地」だと主張する際は「光」が漢字から平仮名に変更されています。


時は現在へと巻き戻る。美少女の捕獲から数日後。光クラブの現リーダー、ゼラが宣言する。
「この光クラブに一筋の光がもたらされた!!美しい少女の捕獲に成功したのである!!少女一号だ!!」
この宣言をもって、美少女は「少女一号」と呼ばれる様になった。少女一号は昏々と眠り続けたまま、
帝王の玉座に座らされている。彼女の両手には手枷が嵌められて、両の手首と肘かけを繋いでいる。

帝王の玉座は二段構造で、大型の台座の中央に玉座が設置されている。台座の内部には1人専用の小型の
牢屋となるスペースがあり、3人の少女が別々に収容されている。彼女達も少女一号と同じく制服姿で、
猫ちゃんマスクを被らされたまま寝入っている。マスクに染み込ませた睡眠薬のおかげで、少女の誰にも
気付かれる事なくゼラの演説は続く。「しかもライチの働きは素晴らしく、既にあと3人もの少女を捕えて来た!!」
帝王の演説の合間に8人の部下が連呼する。「ライチ」「ライチ」「ライチ」「ライチ」

名を呼ばれたライチは何をするでもなく事態を静観している。「しかしながら一号を上回る程の少女はいなかった!!
一号を傷付けたりしない様、大切に崇めるのだ!!」ここでタミヤがゼラに疑問を呈する。「ゼラ、質問があります!!
少女一号以外の少女達に食事が与えられていないのですが」「それで良いんだ、タミヤ」「しかし長い子で、
もう3日です。このままでは彼女達が死んでしまいます!!」良心の呵責から詰め寄るタミヤをゼラは一蹴する。
「放っておけ。眠っている間は大丈夫だ。それに死んだら死んだで仕方がないじゃないか」「なっ」

口封じ目的で故意に少女達の餓死を待つゼラ。平然と非情な思考に及ぶ彼に、タミヤは絶句する。
ゼラが少女一号についてニコに尋ねる。「アインツ・ニコ。少女一号について解った事はあるか?」
「はい、ゼラ、それが・・・。言われた通り、毎日、給食の残りを出しているのですが。
マスクを取ったにも関わらず、ずっと眠っているんです」少女一号には給食を口にした形跡すら無い。

※貧乏な中学生だから仕方ないとはいえ、給食の残りを人質の食料にする所が、何とも
稚拙に感じられてしまいました。家から食料を盗んで来る余裕も無い位、皆は貧しいのでしょうね。
もしも高校生だったら働いて稼いだ金で、食料を調達して与えていたと思われます。


「何故、少女一号は目を覚まさないのか」メンバー間で議論が交わされる。先陣を切るのはダフだ。
「星華女子中だから、うちの給食やなんだよ」ニコが雷蔵に食ってかかる。「雷蔵!眠り薬の量、
多かったんじゃねぇの?」「そんな事ないわよ~~~。寝たふりしてんじゃないの?」腕まくりした
ヤコブが張り切って言う。「どれどれ、僕がくすぐって起こしてやろう」「ヤコブ。そういう冗談、僕は嫌いだ」

ヤコブを咎めると、ゼラが雷蔵に特別な任務を与える。「雷蔵。お前が今日から毎日、一号の髪の毛と
顔を拭いてやるのだ」少女一号は光クラブの美の象徴だ。メンバーには彼女の神格化を保つべく、
少女一号との交流も接触も全てが禁じられている。ただし雷蔵は性同一性障害なので、本質的には
女性と言っても良い。彼が少女一号を相手に過ちを犯す可能性は限りなく低い。だからこそゼラは雷蔵を
少女一号の世話係に任命したのだ。ゼラは雷蔵の指名から話を繋げて、少女一号の存在は何たるかを語る。

「そして、それ以外の者は絶対に触れる事は許されない。ましてや性的な欲望の対象として見る事も
決して許されない。この玉座は今より少女一号の物となった。我々、光クラブに美の女神が降臨したのだ!!」


話が終わると早速、雷蔵はゼラの言い付けに従って、少女一号の髪を布で拭いてやる。彼の周りにはダフとカネダ、
デンタクとヤコブが集まり、揃いも揃って少女一号に見惚れている。彼女は髪の毛一本に至るまで美しい。
磨き抜かれた少女一号の美貌に、思わず雷蔵も溜息を漏らす。「はあ。綺麗な髪ね~~~」
ダフとカネダとデンタクが口々に彼女について語り出す。「何か信じられないよ・・・。
女の子が、すぐ近くにいるなんて・・・」「うち男子中だしな」「凄いな、流石ゼラだ」

少女一号に興味津々となったヤコブとカネダが「代わってくれ」と雷蔵にせがむ。「な・・・なぁ、雷蔵。
ちょっとだけ代わってくれよ」「ぼ・・・僕も」「だっ、駄目よ~」馴れ合う3人を、オイル片手に1人で
ライチの点検に当たるニコが一喝する。「お前達ゼラに言われた事は守れよ!ゼラの言う事は絶対だ!」
「本当にそうかな?」声のする方へニコが振り向いた先にはタミヤがいた。「タミヤ!?」
「自分の考えを失くしちゃ駄目だぜ、ニコ」タミヤは台座の前に座り込んで、鞄からパンを取り出した。

そして台座の中の牢屋にいる、少女の1人のマスクを外すとパンを差し出した。「ん・・・」「ほら食いな」
堂々と命令違反をやってのけるタミヤに激昂するニコ。「タミヤ、てめえ!その3人の子達には
何もやらないって、ゼラが言ったろ!」叫び散らすニコを無視して、タミヤは残りの2人にも同じ様にパンを差し入れる。

「ほら、君も食べろ」「タミヤ!この事はゼラに言うからな!」ニコからの注意勧告にも動じず、
彼に背を向けたままタミヤは反論する。「ニコ、こんなの間違ってる」「間違ってるって、おま・・・」
「こんなの、こんなの光クラブじゃない・・・・・・」2人目の少女がすすり泣きながら、パンにかじり付く。
彼女の様な被害者の影も形も無かった、在りし日の光クラブをタミヤは思い浮かべていた。

光クラブ結成から1年後の小学五年生の夏。チェスを覚えたタミヤ達は連日、基地内で小さなガラクタを
駒に見立てての対戦に夢中だった。タミヤの手腕はダフとカネダでは太刀打ち出来ない程、抜きん出ていた。
ある夏の日、いつも通りタミヤがダフを相手に完勝する。「これでどうだ!!ナイトでチェックメイト」
「わ~、負けた~~。タミヤ君、強過ぎるよ~~~」「何してるの?」盛り上がる3人を、
ベルトコンベアーの上から1人の少年が見下ろしていた。彼はチェスに興味を持った様子だ。

「面白そうだね、そのゲーム」タミヤは少年を知らないが、カネダには見覚えがあった。「誰あいつ?」
「転校生の常川だよ。いつも1人でいる子」「ふーん・・・」この常川という少年こそが、後のゼラである。
彼が「孤立している転校生」と知るやいなや、タミヤは親切心から仲間に誘う。「来いよ」「良いの?」
「チェス教えてやるよ」基地の中心地に降り立ったゼラを、タミヤが親友2人と引き合わせる。

「こいつら親友。カネダとダフ。で、俺が光クラブのリーダー、タミヤ」「よろしく。タミヤ君」
親指で自分を指差して、朗らかに自己紹介するタミヤ。彼の好意に知的な微笑を浮かべるゼラ。
これがゼラと幼馴染トリオおよび光クラブとの出会いにして、クラブの一大転機であった。

今夜のクラブ解散後、高架下の資材置場にてタミヤとダフが密会する。先に来ていたタミヤは
資材置場の柵にもたれて、地面に座ってダフを待っていた。親友を見付けたダフがタミヤに近寄る。
「タミヤ君」「おう、ダフ。誰にも見られなかったか?」「うん。何、話って?」
タミヤは座ったまま、ダフは立ったまま会話が進む。タミヤが衝撃的な発言を言い放つ。

※遅ればせながら第三話の感想も完成しました!

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2.
2019/02/09 (2019/02/15更新) 「『ライチ☆光クラブ』第三話『少女☆降臨』感想」
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※いきなりネタバレしますが、今回は全編ギャグ回です(笑)しかも第壱話の血生臭さは
どこへやらな位、全編ほのぼのギャグです(笑)ついでに言うと前日譚『ぼくひか』の途中で
挿入された、番外編の4コマ漫画劇場2本立ても、全編ほのぼのギャグ回です(笑)


「私の名はライチ。私の目的は少女の捕獲・・・」光クラブが待ち望んだ誕生の時を迎えたライチ。
自我が芽生え出した、彼の体内にある電子回路が「パチッパチッ」と音を立てる。
開発者のデンタクがドライバーを使って、ライチの動作確認をしている為だ。目覚めたライチの目に、
光クラブが自分を取り囲んでいるのが見える。彼の目には世界が初代ゲームボーイの様な、
モノクロのドット絵に変換されて見えている。確認を終えたデンタクがゼラ達に告げる。

「歩行良し。各部位の動きも正常。外部の認識も正常。ゼラ、動作確認、完了しました」
今までデンタクから一歩引いた所で見学していた他のメンバーが、好奇心を露わにしてライチに近寄る。
「凄いわー。本当に見えてるの?」ライチの顔の前に右手をかざす雷蔵。「すげえよ、これ・・・」
至って普通の感想を述べるヤコブ。「なあ、ライチ。俺、誰だか解るか?」「ニ・コ」「うはっ」

自分を指差してライチに誰かを質問するニコ。彼も普段の自他共に厳しい態度が嘘の様に、今では普通の
少年の様に大型ロボットを前におどけている。目覚めたばかりなのに、ニコからの質問にも即座に正解する、
期待を遥かに上回るライチの知性に、ニコとヤコブと雷蔵は大はしゃぎする。「やったー、すげえ!!」
「格好良い~!!」「全員の名前を言えるかしら?」試しに雷蔵が与えた問題にも、元から可能な限り高度な
知能を搭載されたライチは、次々と難なく正解を出す。名前を言い当てられた者の反応は、驚きと喜びに二分される。

「雷蔵」「当ったりー」「カネダ」「おぉ」「ダフ」「よろしくな、ライチ」「ヤコブ」「そこはボケて欲しかったなぁ」
「デンタク」「僕、忘れてたら泣くよ~~」「タミヤ」「お・・・おう」「ジャイボ」「きゃはっ」
「ゼラ」「ようこそ、光クラブへ」見事に全問正解したライチだが、彼には光クラブの部下ロボットとして
活動するのに必要な知識は殆ど、あらかじめ付属してあるのだから、当然と言えば当然である。
それでも快挙を成し遂げた事には変わりない、ライチを帝王は褒め称え、部下達はライチの名を連呼して歓迎する。

「ライチ。光クラブに夢の機械(マシン)が降臨したぞ!!」
「ライチ」「ライチ」「ライチ」「ライチ」「ライチ」


早速ゼラはライチに任務を命じる。この任務とはライチが生まれて来た意味でもある。

「君の目的は?」「捕獲。少女の捕獲」
「そうだ、ライチ。美しい少女を、ここに連れて来るのだ!!」


ゼラが命令を下すと、ライチに円滑に任務を遂行させるべく、デンタクと雷蔵がサポートに乗り出す。
2人共、自身が制作して持っている特製アイテムを使う点は同じだ。先にデンタクがライチの
リモコン用電卓、略して「リモコン電卓」を片手に説明を始める。「ライチには蛍光町中心の
地図情報は、全てインプットされてます。すぐにでも実行可能です!!」

※作中ではライチのリモコン専用の電卓は、単に「電卓」と呼ばれています。普通の電卓とも
差別化したいですし、名前が長いと面倒なので、これからは独自に「リモコン電卓」と呼びます。


毅然とした態度の電卓とは真逆に、浮ついた態度で雷蔵が近付いて来る。彼は両手でリアルな造形をした、
猫のマスクを広げて持っている。「ちょっと待って~~。その前に、これの説明があるわぁ。これはこの天才、
雷蔵様が作った捕獲マスクです。この「猫ちゃんマスク」の裏には眠り薬が染み込ませてあるから、
これ被せたら皆スヤスヤ寝ちゃうわ!!」鼻高々に自信作を紹介する雷蔵。彼の趣向で滑稽なデザインに
なってしまったが、これもゼラに命じられて制作した、美少女捕獲用の重要アイテムなのだ。

とはいえパーティグッズの様な見た目に、やたらと原始的な仕掛け。おふざけにしか聞こえない開発者のコメント。
この3点から猫ちゃんマスクは、ヤコブとダフの笑いを誘う。ゲラゲラと自慢の逸品を笑い飛ばす2人に、
雷蔵はムッとして反論する。「随分、原始的だな。雷蔵」「まぁ失礼ね!これが一番、効果的なんだから!」
はしゃぐ部下達を横目に、ゼラがライチを出発を言い渡す。「ではライチ。行きたまえ」跪(ひざまず)いていた
ライチが「ゴゴン」という音と共に立ち上がった。全長220cmのライチにメンバー達は圧倒される。

「でかい・・・」光クラブでも中学でも大柄な170cmのニコからも、この言葉が自然と漏れる。
「頼むぞ、ライチ!」出発するライチをダフが応援する。ヤコブ、ダフ、ニコという周りにいた坊主3人に
背を向けると、ライチは基地から出発した。これからライチが連れて来る美少女に、3人は期待に胸を膨らませる。

「なぁ、女の子って、どんな匂いなのかな?」おずおずと隣のダフに尋ねるヤコブ。「ぼ、僕は杏子の匂いだと
お、思う・・・」甘酸っぱい想像を巡らせつつ、赤面して返答するダフ。「お前ら、慌てるなって!
もうすぐ解るんだから!」2人に注意しながらも、心境は同じなので頬が真っ赤になっているニコ。

※今回は光クラブのメンバー数人が、ごく普通の男の子らしい一面を見せています。
ゼラとジャイボは通常運転ですが。ロボットや美少女を前にして、素の少年らしい部分が
引き出されたのか、全編に渡ってロボットのライチと美少女のカノンの事で盛り上がっています。
ニコやデンタクといった個性派も、年相応の少年らしい部分を見せるのが微笑ましいです。

ニコがライチとカノンに興奮したり、デンタクがライチの教育に右往左往したり。普段の厳格なニコと、
冷静なデンタクからは考えられない姿でした。いつもは「ゼラの両腕となる優秀な人物」として
描かれている2人が『ライチ』で普通の少年らしさを見せるのは今回だけです。


ロボットだの美少女だの、興奮冷めやらぬ部下達とは真逆に、帝王は一貫して冷静であった。
「皆。ライチは、まだ生まれたばかりだ。学習しなければ良い結果は得られない」

闇夜に覆われた蛍光町に足を踏み入れたライチは、町中のありとあらゆる物を観察しては美少女を捜す。
彼には町の景色もモノクロのドット絵に見えている。目に映った物を一つ一つ確認しながら、
ライチは誰もいない町を1人行く。「空。フェンス。車。タイヤ。工場。煙突」歩き回る彼の前に
「少女」というよりは「幼女」の様な影が映り込む。「少女。少女。少女発見」幼女の影をした何かを
少女と誤認したライチは、それを持ち帰って速やかに基地へと帰還したのであった。

出発から僅か数分後。余りにも早過ぎる帰還を果たしたライチの姿を、望遠鏡でデンタクが確認する。
「ゼ・・・ゼラ。ライチが戻って来ます!!手・・・手に何か抱えてます!」静観するゼラの前で、
ダフとヤコブが歓声を上げる。「えっ、もう!?」「凄いぞ、ライチ!!」ライチが「ゴゴン、
ゴゴン」という足音と共に部屋の中央へと進む。光クラブに緊張が走るが、その緊張はライチが
持って来た物を置くと瞬く間に消え去った。彼が持って来たのは洋菓子店のマスコット人形だったからだ。

※猫ちゃんマスクで丸ごと顔が隠れていますが、このマスコットは不二家のペコちゃんです(笑)
舞台である時代(昭和末期)を反映して、白ブラウスに吊りスカートという、地味な服装をしています。
台座には店のマークがプリントされていますが「M」としか書かれていないので、店名は不明です。


マスコット人形は「ボヨヨーン」と首を振るが、その顔は猫ちゃんマスクに覆われて見えない。
見えない顔は勿論、白ブラウスに吊りスカートという少女らしい見た目だったのが災いして、
ライチは人形を少女と間違えて連れて来てしまったという訳だ。「少女・・・」不穏な空気を察してか、
どこか自信なさげに立ち尽くすライチ。彼をダフ、雷蔵、デンタクの3人が囲んで、代わる代わる責める。
「違ーう」「これは少女でもなければ、美しくもないわ!」「ライチ!生きてる少女だよ!!」

叱られて反省したライチは、生体反応の集積データを整理し直す。「生きている。命。生命・・・。
血液。体温。理解した」「本当かよ!」ツッコミを入れたダフと入れ替わりに、ゼラが目的地を指差して
ライチに新たな指示を下す。「ライチは、まだ子供と同じなんだ。さぁ行け、ライチ」再び町に繰り出すライチ。
「月。電線。パイプ。木」歩道に移動したライチの目に、手前から歩いて来る人間の女が留まる。
「人間。命。生きている。女」前回に続いて、今回もライチはターゲットを早く連れ帰る事が出来た。

やっと人間の女を捕えるのに成功したライチであったが「人間の女」を除いては、まるで合格条件は満たしていない。
連れて来た女はとうに30は過ぎているであろう年齢で、若作りでもあるのか厚化粧で香水臭い上、
派手で品の無い格好だ。おまけに肥満体型で顔立ちも、お世辞にも美人とは言えない。猫ちゃんマスクを外され
「すーすーすー」と寝息を立てる派手な女は知らぬ間に、光クラブからの非難を浴びる。「ライチ、これは大人の女だ」
「うわっ、香水臭え!!しかも美しくもないぞ!!」ライチに指摘するゼラの隣で、ヤコブが叫んだ。

一連の流れを見かねて、ここぞとばかりに雷蔵が己の美貌を自己アピールした上で、ライチに美を教えようとする。
「ライチ。美っていうのを教えてあげる。私やゼラやジャイボは美しいけれど、ヤコブやカネダは美しくないでしょ」
真顔で自信満々に痛烈な一言を繰り出した雷蔵に、真後ろにいたカネダは困惑し、失礼な発言にヤコブは怒る。
「う」「こら~~~!!」ゼラは眼鏡の中央に手を当てて、捕獲対象の具体的な説明を付け加えた上で、
改めて指令を出す。「ライチ。僕達が求めてるのは若く美しい女だ。僕らと同じ位の年齢の美しい女を連れて来るのだ」

この後ライチは2回任務をこなすが、光クラブの説明の甲斐もなく、どちらも失敗に終わった。
生きた人間だけを連れて来る様になったは良いが、それ以外の進歩は見込めない。1回目は眼鏡をかけた
地味な中年女性で、2回目に至っては不細工な浮浪者の中年男性であった。任務に何度赴いても失敗を繰り返し、
仕舞いには論外と言う他ない結果まで至ったライチ。光クラブはゼラを中心に横並びに立って、ライチの処遇を
思案して見つめる。「このままでは平行線にしかならない」と判断したゼラは一計を案じ、静かに口を開いた。

「ライチ。お前に時間をやろう。君は美を学ばなければならない様だ」現状を打破すべくゼラの提案により、
しばらくライチは美少女の捕獲を中止して、基地内にて「美とは何か」を学習する事となる。翌日からデンタクを
教育係に据えて、ライチの美の学習が始まった。ライチは自身が制作された作業台に腰かけて、デンタクが
持って来た約10冊の分厚い美術関係の書物を、ひたすら読みふけっている。基地内では作業台がライチの
定位置となっていて、休息時間には寝床にもなる。デンタクは参考資料の説明をしながらライチに手渡す。

「元から高度な頭脳を持ったライチならば、この手の本を熟読させていれば、自動的に「美の概念」も
学習してくれるであろう」と考えての事だ。「はい、ライチ。次これね。これがポッティチェルリの画集。
これがラファエル前派。これがウィーン幻想派で、これが・・・・・・」作業台に散らばる美術書を
黙々と読み続けるライチが疑問を発する。「美の定義とは?」いきなり美の概念を解答するという
難題を突き付けられたデンタクが、珍しく焦って発言する。

「そ、それは、つまり・・・あれだな。バ・・・・・・バランスとか?色とか柔らかい曲線とか・・・?」
「バランスと色と曲線。理解した」「うわ~、絶対に違う気が」相変わらず美に対して記号的な捉え方に
終始するライチに、デンタクは文字通り頭を抱えてしまう。玉座と作業台の間にはチェス用ミニテーブルと
2脚の椅子があり、タミヤとカネダが座っている。2人はゼラからチェスセットを借りて、
タミヤが白い駒、カネダが黒い駒を用いて対戦していた。奇妙な事に今日のタミヤは何故か不機嫌だ。

※ゆるいネタバレをすると、普段は穏やかなタミヤですが、この時には既にゼラへの
不信感やストレスが高まっていたのが原因で、この時は酷く不機嫌だったのです。
この辺りのタミヤの心境は『ぼくひか』で詳細が語られています。


デンタクとライチの一連のやり取りを聞いていたタミヤは、駒を動かしつつ怒鳴り散らす。
「無理無理。機械(きかい)に美を教えるなんて無理な話さ!人間には感情があるから解るんだよ!
ゼラも結構、馬鹿だよな!」「タ・・・タミヤ君」ゼラがいないのを良い事に、言いたい放題のタミヤに、
何も言い返せないデンタク。彼の事などお構いなしに、タミヤはチェスで優勢となって、
不敵な笑みを浮かべてカネダに勝利宣言する。「これでどうだ!カネダ!降参か?」「う・・・・・・」

打つ手が無くなってしまったカネダ。彼の代わりに横から黒い駒を動かす者が現れる。「ポーンをここに」
「ゼラ!」「カネダ、僕と代わってくれ」ゼラに言われるがまま、カネダは選手交代する。盤面はタミヤの
白い駒が支配しており、ゼラの黒い駒には圧倒的に不利な状態から試合は始まった。自分を凌駕する
実力者なのは周知の事実であるゼラの登場に、若干タミヤは怯むものの次の一手に打って出る。
「ビ・・・ビショップをここに」ここからは交互に自身の駒の動きを宣言しながら、2人は対決を繰り広げる。

「クイーンをここに」「じゃあルークをここに」「ポーンをここに」「ビショップをここに」予想外の一撃を
繰り出したタミヤに、ゼラは感心を示すと奇策を投じる。「やるな、タミヤ君。仕方が無い。ナイトをここに」
「あ」「今度はナイトとビショップで、僕の方がダブルチェックだ」ゼラの鮮やかな手腕に、観客と化した
デンタクとカネダも圧倒される。「凄い、ゼラ」「これは逃げるしかないかも」まんまと形勢逆転されてしまった
タミヤを挑発するゼラ。「さぁ、どうする?タミヤ」とうとうタミヤは隠し持っていた最強の駒を投じる。

「クイーンをここに!!」だが起死回生を狙っての最後の手段は、難なく突破されてしまう。
「ポーンでチェックメイトだ。君はポーンに殺された。どうやら感情が高ぶって冷静な判断が
出来なかった様だね。勝つ手は39通りもあったのに・・・。残念だよ。とても残念だ」ゼラはタミヤ、
カネダ、デンタクへの説明も兼ねた勝利宣言に及ぶ。最後にゼラはこの一言を付け加えて、タミヤを冷笑する。

「タミヤ。それでも君は・・・我々、光クラブのリーダーなのかい?」

ゼラの言葉に沈黙するタミヤ。ゼラの言う通り、かつての光クラブでは名実共にタミヤがリーダーであった。
しかし紆余曲折あってゼラに光クラブを乗っ取られ、彼がリーダーを越える帝王として君臨する様に
なってからは、リーダーの地位は形骸化してしまっている。皮肉にもリーダーの肩書だけは残されたタミヤも、
今となってはゼラの部下の1人に過ぎない。ここまで屈辱的な仕打ちを受けても耐えるしかない程に、
ゼラとタミヤの力量の差は大きい。改めて惨めな現状を思い知らされて項垂(うなだ)れるタミヤ。

親友の彼を心配してカネダが一声かける。「タミヤ君・・・」チェス観戦が終わると、デンタクはライチの
教育を再開する。ゼラがデンタクに教育状況の確認を取る。「デンタク。ライチの教育状況はどうだ?」
「はい、ゼラ。今、目から様々な美術作品や写真集等を認識させています」試しにゼラは一輪の紅薔薇を
ライチに向かって差し出す。「ライチ、これをどう思う?」「これは花だ。美しい」
無言で教育の成果を実感するゼラの隣で、デンタクは期待に沿った結果が出たと喜ぶ。

「良いぞ、ライチ!じゃあ、あの白くて長い物は?」デンタクが指差したのは、ガラクタ置き場にある和式便器だった。
基地は廃工場の一部だけを使用しているので、大半の部分が手付かずのままとなっている。ライチのパーツも基地や
周辺から入手した、スクラップを改造して作られている。「あれは便器だ。美しい」「何故、美しいと思うんだい?」
「曲線だから」率直に疑問を述べるゼラに、これまた率直に解答するライチ。教育の甲斐あって、段々と美醜に
理解を示す様になって来たとはいえ、まだまだライチの価値観は人間には遠く及ばない。

理想に伴わない思考から抜け出せないライチに、文字通り閉口してしまう天才眼鏡2人。
美術作品の鑑賞で、ある程度は芸術的な美に関しては把握したらしい。可能な限り高度の知能を
搭載させたロボットとはいえ、便器に美を感じる内は、人間の美貌を理解するのは夢のまた夢である。

※「少年達が美少女誘拐を画策」というと卑猥な目的がある様に見えますが、光クラブは違います。
あくまでクラブの女神として奉りたいだけなのです。とはいえ小学校から男子校で、女の子とは無縁の
生活をして来たのもあって、誰も彼もが美少女の登場に目を輝かせている所が微笑ましいです(笑)

「理想的な美少女が欲しいなら、自分達で拉致すれば良いのに」とツッコミたくなる人もいるでしょう。
直接、自分達が動き出すと犯行露見の恐れがありますから。何よりもゼラが良い意味で「期待を裏切り、
予想を超える美少女」に強いこだわりがあるので、ライチの成果を粘り強く待つしかないのです。


その夜。クラブ解散後に帰宅したデンタクは、自宅から持って来た大きなノートを片手に、
人知れず基地へと戻って来た。作業台にスリープモードで座っているライチに、こっそりと
デンタクは改造を施す。彼は持って来たノートを広げると、びっしりとノートに書き込まれた
大量の計算を元にして、リモコン電卓での高速プログラミングを始動する。キーボードが延々と
「カタカタ、カタカタ」と音を立てて、素早く押されると同時に難解なプログラミングがライチに記録されて行く。

この物音に玉座の影に隠れていた2人が気付いた。デンタクが来る前から情事に及んでいたゼラとジャイボである。
今夜の2人は肌を重ねている途中でデンタクが戻って来た為、玉座の影に身を隠したのだ。ジャイボは裸に
靴と靴下だけの状態で、ゼラは上半身をはだけて、ズボンと下着を片方脱いだ格好だ。ジャイボが警戒心を込めた目で、
玉座に隠れてデンタクの様子を伺っているのに対し、ゼラはというと玉座を背もたれにして、余裕の表情で座っている。
2人共、盛り上がっていた最中を邪魔されて、早く続きがやりたい気持ちが下半身の屹立に表われている。

※「光クラブは全員、童貞」という設定ですが、ゼラとジャイボの童貞に関しては意味合いが
違うと感じられます。「童貞&処女」には2つの意味があります。1つ目は「誰とも性行為をした事が無い人」
2つ目は「異性と性行為をした事が無い人」です。どう考えてもゼラとジャイボは2つ目だと思います。
作中での描写は口淫で留まっていますが、年齢的にも関係的にも「最後までやっている」としか考えられません。


デンタクがパスワード「6245525194」を入力する。これは解読すると「PO89=ヒトニナレ」となる。
膨大なプログラミングが終わり、キーボードを打つ音が止んだ。いよいよデンタクが最終調整に取りかかる。
彼はまたも現在の心境を反映したパスワードを入力する。数列は「3491521525919493」で、
解読すると「PO90=ゼラニシカラレル」となる。「これで良し・・・。吉と出るか凶と出るか。再起動!!
6・6・6!!」再起動コマンドの入力完了後。ライチの目にボッと光が灯り、ピーカチカチと音が鳴る。

※「ゼラに次いで、人間離れした冷静沈着な人物」「高い知能を持った、ゼラの忠実なロボット」といった
印象を与えるデンタクですが、今回ではライチの成長に一喜一憂したり、本心を潜ませたパスワードを作ったりと、
お茶目な一面を見せています。なお作者の古屋兎丸先生は「良い子で純粋。可愛い」と彼を評しています。


スリープから再起動させて、新たにプログラミングしたというのに、ライチに目立った変化は見受けられない。
効果を確かめようと、デンタクがライチに話しかける。「ねぇ。どうだい、ライチ?」デンタクが基地に戻ってから
今に至るまで、ライチは微動だにしない。あれだけ厄介な作業をデンタクがこなしたにも関わらずである。
光クラブではリーダーのゼラに黙っての独断行動は原則禁止とされる。ルール違反をした者には厳しい処罰が科せられる。
この危険を冒してまで一か八かの作戦を実行したデンタクであったが、どうやら失敗してしまった模様だ。

かねてから「ライチに人間と同じ知能や感情を与える事」を目標としていたデンタクは落胆してしまう。
「はぁ。そう上手くは行かないか・・・」大きな溜息を1つ吐くと、肩を落として基地を後にするデンタク。
この場にいた誰もが「ライチの成長プログラミングは失敗した」と思っていた。しかし誰も知らない間に
ライチの中では大きな変化が生じていた。激変はデンタクが基地を去った直後から生じ、ライチの体からは
「ピー、カチカチ」「ゴウン、ゴウン、ゴウン、ゴウン」と変化を告げる音が体内に鳴り響いた。

今回からライチに大きな変化や成長が訪れる度に、彼の体内の電子基板が映し出され、
稼働する様子が描かれる演出がなされます。今回の1ページ目もそうでした。


翌日の夜。ライチ誕生から今日で3日目となる。不安点は残るものの、ある程度の学習を積ませた上、
デンタクも奥の手のプログラミングを施した今ならば、以前とは異なる結果を出せるに違いない。
そう確信したゼラは操作用パスワードを唱えると同時に、ライチに指令を下す。「ライチ・ラライチ・
ララライチ!我々、光クラブに光はまだ無い。ライチ、君がもたらすのだ!!行け、ライチ!!」

ゴンゴンと大きな足音を立てて、ライチは満月に照らされた町に赴く。彼は月夜の下に広がる無人の町を1人行く。
ライチの目に映る世界はドットで描かれた写実的な風景画に変わり、それらを見て抱く感情もまた変化していた。
「葉、柔らかい。工場の煙、黒く汚れている。空気、冷たい。月、美しい」薄汚れた町の中で一際、
光り輝く月に至上の美しさを感じて見上げるライチ。この後、彼は月に勝るとも劣らない美しい存在を手に入れた。

成果である少女を両手に抱えて即座に帰還したライチの姿を、望遠鏡でヤコブが確認しメンバーに報告する。
「ライチが戻って来た!!」報告を受けた光クラブ全員が、基地の中心部に集合する。他の面々がそわそわする中、
タミヤだけがライチに反発する。「どうせ、また上手く行かねえよ」「しっ。ゼラに聞こえちゃうよ」
両目を閉じて怒鳴るタミヤを、口の前に人差し指を立ててカネダが窘(たしなめ)る。光クラブの視線を
一身に受ける中、ライチがベルトコンベアーに乗って、彼らと同年代の少女をお姫様抱っこで運んで来る。

ライチが連れて来た少女は、猫ちゃんマスクで顔を隠され昏睡している。彼女は150cmと小柄で華奢な体型に、
白いセーラー服を着ている所からも、光クラブと同年代なのは明白だ。マスクからはみ出した長い黒髪も、
セーラー服から覗く白い肌も艶々としている。今までの人生で見て来た、どの女性とも明らかに異なる
オーラを放っている少女に、光クラブの目は釘付けとなる。少女を見てカネダが気付く。
「あ、あ、あの制服、星華女子中だ!!」「おっ、落ち着けって!」

普段の陰気はどこへやら。名門女子中の生徒登場に興奮するカネダ。騒ぐ彼の背中に手を添えて、
落ち着く様にと言うダフも、カネダと同じく頬を赤くしている。お調子者のヤコブも2人を宥(なだ)める。
「そ・・・そうだよ。マスク外してみないと」少女は玉座を背もたれにして地面に座らされる。
猫ちゃんマスクの発明者、雷蔵がマスクを取り外す。「マ・・・マスク、取るわよー」

マスクの下から現れた少女の顔は、正に絶世の美少女と言うに相応しいものであった。ソバカスもニキビも
一点も無い潤った肌。紅を指した様に紅い唇。眉毛の上で丁寧に切り揃えられた前髪。くっきりとした
大きな瞳は、豊かで長い睫毛に囲まれている。均整の取れた顔立ちは人形を思わせる程だ。
マスクを外されて数分経っても、一向に美少女は目覚める気配は無く、その姿はさながら眠り姫の様だった。

絶世の美少女の登場に、光クラブは言葉を失い静止する。この場が沈黙に包まれた中、真っ先に
驚嘆の声を上げたのは雷蔵だった。「な・・・何て綺麗な子なの・・・。こんな子、見た事ないわ・・・。
まさか、こんな子が・・・」性同一性障害であるが故に「美少女」として、自分の美貌に絶対的な
自信を誇っていた雷蔵も、この美少女の容姿には息を呑む。光クラブは、生まれて初めて見る
絶世の美少女を凝視する。そんな中で唯一、冷静沈着なゼラはライチに尋ねる。

「ライチ。何故この子を連れて来た?」「綺麗だと思った。とても綺麗だと思った」

ライチはゼラの方を見向きもせず、少女に視線を向けたまま、そう言った。この発言からライチの急激な
成長を読み取ったゼラは、今度はデンタクに確信に基づいた問いかけをする。「デンタク、お前の仕業だな」
「あ、あの」ゼラが昨晩の行動を知らないふりをしていると気付かずに、命令違反による処罰を恐れるデンタク。
「この光クラブにおいて勝手な行動は決して許されない。以前、僕を裏切る者がいると言っていたが、
お前だったとはな」「すっ、すみません、ゼラ」厳罰を覚悟するデンタクだが、ゼラは彼の予想を裏切る反応を見せる。

「その裏切り、僕は嬉しく思うぞ」微笑んで己を許して讃えてくれる主君ゼラに、デンタクの顔からも笑みが零れる。
ゼラの質問は続く。「しかし一体、ライチにどういうプログラムを施したのだ?教えてくれ、デンタク」
真顔となったデンタクが正面から答える。「ある概念をインプットしました」「概念・・・?」
「私は人間だ」・・・・・・と」未だに「すーすー」と何も知らずに寝息を立てる美少女を、
ライチはじっと見下ろしている。彼女の存在は、光クラブにもライチにも劇的な変化をもたらす事となる。

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3.
2019/02/02 (2019/02/08更新) 「『ライチ☆光クラブ』第二話『優美なる☆機械(マシン)』感想」
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※サブタイにもある様に、本作では頻繁に「機械」と書いて「マシン」と読ませます。
主にゼラの台詞に集中して使われる表現です。こちらでも原作に忠実に「機械(マシン)」と
振り仮名を表記します。少ないとはいえ、そのまま「機械(きかい)」と読む箇所もあります故。


ここはゼラ達の通う蛍光中学校。光クラブのメンバーは全員、この男子校に通い、同系列の
蛍光小学校の頃からの馴染である。クラスがバラバラなのも幸いし、先日処刑された2人を除いて、
クラブの存在を知る者は誰もいない。中学ではタミヤ、ダフ、カネダの幼馴染トリオを始め、
ごく普通の少年と化すメンバーも多い。学校でも友人とつるむメンバーは他にもいるが、
ゼラに至っては「クラブ活動は極秘任務だから」と、誰かと仲の良い素振りすら見せようとはしない。

ある日の夕方。下校時間となり、校門からゾロゾロと大勢の男子が出て来る。どの生徒も気楽に
歩いていたり、友人との会話を楽しんだりと、平凡な男子学生の日常を満喫している。呑気に歩いて行く
大群をかき分けて、そそくさとダフは1人で目的地を目指して走り出す。光クラブの活動は周囲に怪しまれない為、
授業終了後の夕方か、各家族が寝静まる深夜のどちらかに限られている。定められた活動時刻に遅刻すまいと
校門から走り出たダフは、同校性の4人組が向かいの歩道を歩く女子2人組について話す場面に出くわす。

「おい、見ろよ!「女・・・」「女だ!!」この蛍光町に住まう少年の大半は、蛍光小学校および中学校に進学する。
どちらも男子校なので、女子との出会いは非常に限られる。彼らにとっては、女子を一目見るだけでも一大事なのだ。
少年達の前を通りすがった2人の女子は黒いセーラー服で、何らかの事情で嫌々ながら蛍光中学の前を歩く羽目になった様だ。

「ごめんね、ひろみん。こんな所、付き合って貰って」「1人じゃ危ないよ、蛍光中なんて!!何か臭いし。
昌代ちゃん、蛍光中の人が見てる~」「蛍光中!!あの男子校の!?やだっ、気持ち悪い!!」「ジーっと
見てるよ・・・・・・」「蛍光中の男とだけは関わるな」って、ママが言ってた・・・。きゃー、怖ーい」
「待ってよ~、ひろみん」有らん限りの罵詈雑言を浴びせられながらも、男子4人は文句も言わず、
食い入る様に彼女達を見つめていた。彼らの影に隠れて、ダフも女子2人をチラリと見つめた。

女子のチラ見で時間を消費したダフは、案の定クラブに遅刻してしまう。出入り口のベルトコンベアーに
乗って下りて来るダフに、開口一番ニコが怒声を上げる。「遅いぞ、ダフ!」「ほ・・・補修が・・・・・・」
「関係ねえよ!今日は早く来る様、ゼラに言われたろ!?」遅刻理由を補修と説明されても、
ニコの態度は揺るがない。ダフへの叱責から作業の手を緩めるニコを、玉座からゼラが冷淡に諫める。

「もう良い、ニコ。感情の高ぶりは精緻な作業を狂わす」今日もまたゼラは一人チェスを嗜み、8人の部下に
指示を下すに徹する。ロボットを考案したのはゼラだが、彼が制作作業に加わる事は皆無である。全体を見渡す
指揮官役を担うのもあるが、ゼラの「帝王である僕が面倒な作業に従事すべきでない」との美学も理由である。
今日の作業とは、いよいよ最終段階に入った巨大ロボットの制作である。だからこそ遅刻厳禁を破った
ダフにニコは激怒したのだ。ニコを鶴の一声で沈黙させると、ゼラは作業の大詰めに入った部下達に喝を入れる。

「我々の作業は、ついに最終段階に入った!!慎重かつ迅速に作業を進めてくれたまえ!!」「はい、ゼラ!!」
8人全員が威勢良く返事する。ロボットの発案や設計はゼラとデンタクの2人が二分し、彼らが主導者となって
他のメンバーに、パーツの制作や組み立て作業を任せる方式で進められて来た。例外的にロボットに並外れた
研究意欲を抱くデンタクだけは、臨機応変に指揮官役と作業員役を両方こなす。天才的頭脳を持つゼラと
デンタクが下す指示は、知能に格差のある他7人にも正確に伝わり、彼らをも優れた作業員にたらしめている。

※本当に頭が良くて配慮も出来る人って、自分よりも知能が低い相手にも話を解り易く正確に伝えて、
指示通りに動かせられるのです。この点でもゼラとデンタクは突出した才能を持っています。光クラブで天才は
2人しかいませんが、元は科学とは無縁だった一般人の他メンバー7人を、高性能ロボットを制作する程、
優秀な人材に育て上げた事でも称賛と感嘆に値します。ゼラだけは1度もロボットに触りもしないままでしたが、
もしも彼も制作作業に直接的に携わっていたら、もっと早く完成していたのは間違いないと思います。


部下全員を有能化させた甲斐あって、目前に迫る夢のロボットの完成に、ゼラは胸躍らせる。

「もうすぐだ。1年半の歳月をかけ、いよいよ完成しようとしている!!
もうすぐ我々の元に、優美なる機械(マシン)が完成するのだ!!」


ゼラが1人1人の部下に点呼を取る。光クラブでは全員が作業に従事する際には、司令官たるゼラが
点呼を取って、作業内容を確認するのが通例となっている。勿論、番号順に名前が呼ばれる。

※ちょくちょく本作では過去編『ぼくひか』も含め、ゼラがメンバー1人ずつに、命令の進行状況を
確認する場面が挿入されています。こういったレギュラーキャラの1人1人に、スポットライトが
当てられる演出は好印象です。人数が多いチームのメンバー全員が、良い感じに目立ちますしね。


「製造工程の報告!1番(アインツ)ニコ!」「はい、ゼラ!P3の工程完了!現在ダイナモの操作、確認中です!」

「2番(ツヴァイ)雷蔵」「はい、ゼラ。もうすぐ頭の皮が縫い終わりまーす」

※ロボットのライチの素肌は鋼鉄製なので、この雷蔵が作った頭の皮(マスク)が顔になります。
髪も頭の皮に含まれています。とはいえライチの素顔は、マスクを着けた状態とほぼ変わらない造形です。


「3番(ドライ)カネダ」「はい、ゼラ!臀部(でんぶ)の補強完了!」

※いつもオドオドしているカネダですが、このコマは妙に凛々しいです。

「4番(フィーア)デンタク」「はい、ゼラ。20万通りのプログラムを終えました」

黒い電卓を片手にプログラムを進行させるデンタク。彼を含む他メンバーが皆テキパキと
仕事をこなす中、遅れを取ったダフが作業台に着いて、ようやく作業を開始する。
ゼラの問いに、しどろもどろに答えるダフ。謝罪が小声になる彼を、またもニコが叱り付ける。

「5番(フュンフ)ダフ」「い・・・今からシリコンを全身に貼ります。す、すみません」「ほら見ろ!」

「6番(ゼックス)タミヤ」「ゼラ、各駆動部分のグリスアップ完了」

「7番(ジーベン)ヤコブ」「はい、ゼラ!圧力隔壁のピン打ちの確認、亀裂が生じない様、点検中です!!」

「8番(アハト)ジャイボ」「ちゃんと見守ってるよっ。きゃはっ」

確認終了後、ゼラは自己分析する。「人間の神経回路が電気信号のON/OFFである以上、デジタルと
アナログという区分は無意味だ。アナログとは解像度の高いデジタルに過ぎない。人間の感情や行動も
デジタルとして考えるならば、将来起こる出来事も予測可能となる。チェスと同じ・・・。百手・・・
いや千手先まで読めば良い」盤上の中心に黒のポーンを置くと、ゼラはタミヤに告げる。
「タミヤ。10秒以内に持ち場を離れなさい」「は・・・はい?あ、あの。どういう事でしょう?」

ゼラの言葉の意味する所が解らないものの、素早く命令に従うタミヤ。次の瞬間、ロボットの頭部が置かれた
作業台の真横に設置された発電機が「ボンッ」と音を立てて極小の爆発を起こす。「きゃ」「えっ」
小火(ぼや)に驚いた雷蔵とタミヤに代わって、ダフとニコが早急に対処する。「うわっ!発電機が火を噴いたぞ」
「布をかけろ!」布をかける2人を尻目に、小火の発生すら予期していたゼラに、驚きを隠せないタミヤ。
頬杖を付く帝王には、まだ何かしら思う所があるらしい。「そう、先の先をね・・・」

その日の夜。とうとうロボットが完成し、明日の起動を待つ段階へと至った。ロボットの完成もとい誕生を祝う、
ささやかなる前夜祭が基地内にて開催される。完成して作業台に安置されたロボットには、台を丸ごと覆う
黒い布がかけられており、お目見えするのは明日からだ。光クラブは作業台を取り囲み、全員ゼラが作って
振る舞った、ライチ酒入りのカクテルグラスを左手に持っている。立ち位置はゼラがロボットの頭部の背後。
タミヤとジャイボが脚部の背後。右側にはニコ、デンタク、カネダ。左側には雷蔵、ヤコブ、ダフとなっている。

前夜祭の主催者ゼラが祝いの美酒を片手に開幕を告げる。「皆よくやってくれた。いよいよ明日、
僕達の機械(マシン)が起動する。楊貴妃も飲んだ永遠の美の象徴。このライチ酒で乾杯しようではないか」
主催者の声を合図に、出席者達が祝いの美酒を一飲みする。9つのグラスの底に沈んだライチの実が、
酒が減った事で僅かに浮き上がる。祝いの席でも冴え渡る勘から、重要な事柄に気付いたと語り出すゼラ。

※ライチ酒は自宅でゼラが、梅酒の様にして作って持ち寄って来ました。後々の番外編にて
瓶詰の梅酒状態のライチ酒が見られます。光クラブは全員が貧乏な中学生なので、実家暮らしなのです。
「もしも皆が高校生だったら、また話が違って来たんだろうな」と思わせる部分もあります。

ライチ酒を飲むシーンでは他のメンバーは普通に飲んでいるのに、カネダは邪魔にならない様にと
右手で長い前髪を持ち上げて、雷蔵はCM女優の様なポーズ(左の親指と人差し指でグラスを摘まみ、
右手をパーにして頬に添えている)を取って飲んでいる所が笑いを誘います(笑)


「最強の駒クイーンは誕生した。そうか・・・。そういう事も有り得るか・・・」「?」
「諸君。このライチ酒が何故、赤いか解るかい?僕の血が混ざっているからだよ」「!」
「僕の血を分けた諸君は最早、僕の一部と言っても良い。しかし、この中に僕を裏切る者がいる・・・」
血の入ったライチ酒のインパクトは即座に掻き消され、部下達の関心は栄光を目前にして、
不穏な言葉を口にするリーダーに集中する。「え・・・?」

「機械(マシン)の誕生で、我々は破滅の道を歩むのか?」若干の動揺はするも「万能リーダーが
導いてくれる限り、自分達に裏切りも破滅も有り得ない」と部下達は口々に主張する。
「誰もゼラを裏切ったりしません!」「そうです、ゼラ!」「この機械(マシン)だって、
1ヶ月遅れた!」「ゼラの予言が外れる事もあるわ。私達を信じてよ、ゼラ」

ニコ、デンタク、ヤコブ、雷蔵が力強い励ましを添えて、裏切りと破滅の可能性を全否定する。
配下4人の気遣いによって、帝王の一抹の不安は瞬く間に消え去る。「そうか。そうかもしれないな・・・」
ゼラが安堵の言葉を発すると前夜祭の幕は閉じて、同時に本日のクラブも解散となった。

クラブ活動の終了後。タミヤは1人で寄り道して、どこかの廃工場の広場でチェスの特訓に励む。
彼は鉄条網を背もたれにして地面に座り込み、『チェス読本』片手に新戦法を開発する。
貧しいが故に本物のチェスを持っていないタミヤは、白と黒の小石や小瓶を駒に見立てて、
地面にマス目を書いて一人チェスを行っている。「クイーンがこう来ると、ビショップがここに・・・。
ポーンでチェックメイト・・・。そうか、こういう戦法もあるのか・・・!」

一人チェスに白熱するタミヤを、いつの間にか鉄条網の上に座ったジャイボが嘲笑う。「クスクスクス」「!」
「こんな所でチェスの練習かい?タミヤ君」「ジャイボ!!ど・・・どこで何をしようと、俺の勝手だろ!
家は狭くて」「家が狭いのは皆、同じだから知っているさ。そうじゃなくてさっ」鉄条網から下りて
タミヤの背後に回ったジャイボが図星を突く。「もしかして、ゼラを負かせたいの?」不敵に指摘する
ジャイボにタミヤはたじろぐ。「ばっ、馬鹿言うな。俺は只チェスが強くなりたいだけだ・・・!!」

「ふーん。じゃあ、どうして、いつもここ開けてるの?」「え?」「襟を閉めないのは、ゼラが一番
嫌がる事だって知ってるよね?」タミヤの背中に張り付いたジャイボが指差したのは、彼が常に
開けている襟元であった。非常に生真面目な性格のゼラは、光クラブでも厳しい統制を敷いており、
「自分も含めたメンバー全員が学校でも制服の襟を占めるルール」も、その一環であった。

ゼラへの強烈な忠誠心と恐怖心から、誰もが襟を締めているにも関わらず、タミヤだけは例外として
常に襟を開けている。深層心理に潜む反骨精神の表れか、幾度も注意しても聞かない為、流石のゼラも
タミヤに限っては看過するしかない様だ。そういった事情を見越した上で、ジャイボが更なる挑発に出る。
「もしかして、ゼラの立場を狙ってたりして・・・・・・」「おっ、怒るぞっ、ジャイボ!」

「きゃは、冗談だって。あー怖い怖い」怒り出したタミヤに、見せかけの恐怖をちらつかせると、
難なくジャイボは逃げおおせた。ジャイボが走り去った後、タミヤの視線は地面に散らばる
自作チェスへと移る。チェスの前に立ち尽くす彼は、昔から快く思っていなかったジャイボに、
不思議と心を見透かされた様な不快感が拭い切れない。「俺がゼラの立場を・・・?馬鹿な」

※『登場人物』で既にネタバレしていますが、タミヤにはリーダーの座を狙う、正当にして
確固たる理由があるのです。その理由は、ずっと昔からクラブ全員の知る所となっています。


その頃。光クラブの基地では、明日に備えてニコが1人で最終点検に行っていた。ロボット完成に
必要な工程は完了しているのだが、主君を思って念の為にと行動したのだ。真剣な顔をしてバリ取りを
しているニコに、タイミング良く基地に戻って来たゼラが気付く。「ニコ」「あ!ゼラ」
ベルトコンベアーから降りたゼラが、ニコの傍らに立つ。「こんな遅くまで1人で残ってたのか」

「いえ・・・。一度帰ったのですが、明日だと思ったら緊張して。一応、関節の部分のバリ取りと、
グリスアップの点検をしてました」帝王である主君へ、予想外かつ期待以上の働きを示したニコ。
忠臣への信頼の証にと、ゼラはニコの左肩に片手を置いて、微笑んで称賛を送る。

「やはり、お前が一番だ。1番(アインツ)ニコ」ニコにとっては、これ以上にない賛美である。
主君から最大の忠臣という太鼓判を押された所で、忠臣は仕事を終えて基地を後にした。1人で帰路を歩むニコは、
最高の充実感に浸ってガッツポーズする。いつもは強面でキツイ言動の多いニコも、今この時だけは
自然と笑顔が浮かんで、満足感を露わにした独り言まで連呼する。「やった!ゼラは俺に特別、目をかけてくれてるんだ!!」

ニコが基地から遠く離れた頃合いを見計らって、ゼラは基地内に隠れ潜んでいた人物を呼び出す。
相手はジャイボであり、しばしば2人はクラブ活動後、基地内で逢引きしては情事を楽しむのだ。
今夜も密会する約束だったが、いきなりニコが戻って来た為、ジャイボは部屋の隅に隠れていた。
「出て来て良いぞ」「もー。ニコの奴、戻って来るんだもん。焦ったよー」「ジャイボ」

ひょっこりと物陰から姿を現したジャイボは、待ち焦がれていたゼラの背中へと抱き付いた。
そして左手の人差し指で彼の唇に軽く触れる。「僕が一番でしょ?ニコは駄目だよ。
ゼラは僕のものなんだから」扇情的な雰囲気を漂わせて、ゼラの唇を奪うジャイボ。
彼にしてみれば、ゼラの答えは聞くまでもない。だが忠臣か恋人かの立場の違いはあれど、
自分以外がゼラの最愛の人物となる事は、ジャイボには我慢ならないのだ。

「自分こそがゼラにとって最愛の存在である。その座は誰にも譲らない」思考や立場には
明確な差異があるものの、この価値観に関してはニコもジャイボも共通している。
ゼラとジャイボが今宵の睦事に向けて動き出す中、2人の関係など知る由(よし)も無いニコは、
幸福の絶頂から一層テンションを激化させていた。道路脇にあった「痴漢注意」の看板を
中央から凹ませると、ニコはゼラの敵である全ての者に向けて、宣戦布告する。

「ゼラを裏切る奴なんか、俺がぶっ殺してやる!ゼラ!俺のゼラ!ああ!」
さっきゼラが触れた自分の左肩を、愛おしそうに掴んでニコは陶酔に浸る。

※このシーンではニコもゼラに惚れている様にも見えますが、あくまでもニコのゼラへの
感情は忠誠心が独占しています。ニコは「自分が最愛の忠臣であれば、それで良い」みたいですが、
ジャイボはそうは行かない様です。「ゼラの家族や友人などの中から、恋人の自分よりも愛される
人物が現れる事」すらも許し難いのでしょう。この時点でも相当なヤンデレなのが伺えます。
忠誠か恋愛か、ゼラへの思いの違いがニコとジャイボの命運を分けます。


翌日。いよいよロボットを起動させる時がやって来た。ロボットは昨日の完成と同時に、
作業台ごと黒い布に覆われて安置してある。横たわるロボットを光クラブが取り囲む。
夢の機械(マシン)誕生の時を迎えて、そわそわする部下一同を帝王が誇り高く鼓舞する。

「蛍光町!!黒い油と黒い煙に覆われた、老いた町!!疲れ切った醜い大人達!!
我々は否定する!!あの醜い生き物「大人」を否定する!!我々、光クラブこそ、
蛍光町に灯る希望の光だ!!僕達の希望の機械(マシン)は、ついに目覚めの時を迎えた!!」

「しかしゼラ、まだ燃料の指示がありません!!」


ここに来て今までノータッチだった疑問をニコが口にする。前々から部下の全員が、
同じ疑問を抱いていたものの、帝王の威圧感から誰も言い出せずにいた。無意識に
8人の部下達の代弁者となったニコからの質問を、涼しい顔してゼラはかわす。

「燃料?そんな物とっくに食べさせてあるよ」「食べさせて・・・?」

ニコと双璧をなすゼラの崇拝者、デンタクが次なる質問を述べる。理数系においてはゼラと
互角と言っても過言ではないデンタクでも、ロボットの燃料が何なのかは見当も付かない。

「僕が3年かけて、この機械(マシン)の燃料を育てて来たのさ」
「燃料を育てるとは一体・・・?ゼラ!この機械(マシン)は何で動くのですか!?」


疑問が膨らませ、声を荒げて質問を続投するデンタク。長年仕えて来た部下の誰もが、ゼラの意図を
読み取る事は出来ない。ゼラは胸ポケットから燃料の1粒を取り出すと、天に掲げて見せつける。

「楊貴妃も食した、永遠の美の象徴。3年前、埋め立て地に苗を植えて、今や見渡す限り、
赤い畑が広がっているだろう。この実が燃料さ!!」「ライチ・・・・・・」「ライチが燃料!?」


周囲がポカンとする中、質問者のニコとデンタクだけが言葉を発する。ライチの実を燃料化させた
仕組みは無視して、ゼラが何故ライチの実を燃料に選んだのか、もう1つの理由を述べる。

「僕らの可愛い機械(マシン)に油なんか飲ませられない。
そうだろ?ライチ・・・ラライチ・ララライチ」


微笑みながらロボットを操作する為のパスワードを言うと、ゼラが空いた片手でロボットに
覆い被さっていた布を取り払う。衣服を着せて完成体となってから初披露されたロボットに、
光クラブの目が奪われる。あらかじめロボットの名は「ライチ」と決めてある。
ライチは黒いオールバックの巨漢の姿をした、全長220cmの人型ロボットである。
ツギハギだらけのマスクも相まって、フランケン・シュタインを彷彿とさせる出で立ちだ。

彼が鋼鉄製の素肌を覆い隠す様にして身に着ける、マスクも洋服も靴も皆、裁縫を得意とする
雷蔵が特別に作り上げた者だ。スカーフ付きのコート状の服も、編み上げブーツも、
マスクの一部である髪と同じで真っ黒い。洋服の中央には大きな五芒星が描かれている。

黒い学ランがコスチュームとなる、光クラブの部下に相応しいデザインと言えるだろう。
ライチのデザインも手がけたのもゼラなら、名付け親もゼラである。完成披露会の中に
組み込まれる形で、名付け親による命名式が催され、ゼラがデンタクに指示する。

「デンタク、名前をインプットするんだ!!ラ・イ・チと!!」

燃料と同じ名を付けられたロボット、ライチに運命的なものを感じて、ニコ、雷蔵、ヤコブ、
ダフが歓声を上げる。「ライチ!?」「ライチ!!格好良い!!」「ライチ!」「ライチ!」
興奮するメンバーを尻目に、ゼラの指示を的確にこなすデンタク。彼の手にはライチの操作用に
制作した、特別製の大型電卓がある。デンタクはリモコンとなる電卓による操作説明に及ぶ。

「では、その名で登録します!!ラ・イ・チ!全ての情報は、この電卓で
インプットします!!ライチの行動は内部プログラムで自動制御も出来ますが、
この電卓をリモコンとして使う事も出来ます!この0から9までの数字が、
ライチに命を吹き込むのです!ライチのプログラムは、かなり高度に作ったつもりです。
これは音声が意味を分析し行動出来る「思慮する機械(きかい)なのです」


※天才が作った特製とはいえ、あんな高性能ロボットを電卓で操作可能なのに仰天します。
電卓を経由しての命令の言葉は、ポケベル方式の文字入力となっています。芸が細かい事に数字を解読すると、
きちんと目的に沿った言葉が使われていると解ります。この場面では「PО64=ライチ」となっています。
本作の舞台は昭和末期と確定していて、おそらく初代舞台版が開演された1985年と推測されます。

平成を思い起こさせる描写は皆無です。もしも現在が舞台ならば、デンタクの愛用品がパソコンや
スマホに置き換わって、ライチの性能が大幅にグレードアップし、制作も数ヶ月で済んだ事でしょう。

光クラブが活動に熱中するのは「まだまだ娯楽に乏しい時代で、貧しさ故の閉塞的な生活の反動」といった
側面もあります。明日の食事すら危うい位の貧乏でもない限り、現代ではテレビにゲームにネットにと、
娯楽には事欠きませんから。作中では皆が漫画を含めた本もほぼ買って貰えない位、
貧しい経済状況にあります。なので彼らには、クラブ活動こそが娯楽代わりなのです。


ライチ発明の最大の功労者であり、持って生まれた天才性を輝かせるデンタクを、ニコと雷蔵が褒めちぎる。
「すげえな、デンタク!」「いやあ。ゼラの設計した、コンピューターの処理速度のおかげだよ」
「チュウしてあげるわぁ」常に冷静な態度を崩さないデンタクも、この時ばかりは照れ笑いする。

ニコと雷蔵に次いで、ゼラもデンタクの才能を褒め称える。「いや、デンタクは素晴らしい
働きをしてくれたよ。これも僕の予測の範囲を越えていたよ」デンタクを褒め終えると、
ゼラがライチの起動パスワードを公開する。あくまで「ライチ・ラライチ・ララライチ」は
操作用パスワードであり、起動用パスワード「666」とは、しっかりと区分されている。

「ではデンタク、起動の数字を押すのだ。それは666。666。それは悪魔の数列。
君がもたらすのが何であろうとも、僕達には君が必要だ!!さあ目覚めよ、ライチ!!666!!」


ゼラの言う通りにデンタクが行動すると、とうとうライチが誕生の時を迎えた。「ガガガガガ!!
ガガガガ!」と大きな起動音を轟かせ、巨体を震わせてライチは目覚める。起き上がったライチは
制作当初から片時も離れていなかった、作業台から初めて下りると光クラブの前に跪(ひざまず)く。
光クラブのメンバー全員が彼の主人に該当するのを、反映しているかの様にも思える行動だ。

「起きたぞ!!」「僕達のライチ!!」真っ先に驚きの声を上げるデンタクとヤコブ。
至って冷静に観察に徹するゼラとジャイボ。その他の面々は驚愕の余り、言葉を失っている様だ。
制作者一同である光クラブを代表して、リーダーのゼラが初めてライチに声をかける。

「おはよう。君の名前は?」「私・・・は・・・ラ・・・イ・・・チ・・・。
私の・・・名前は・・・ライチ・・・・・・」「そうだ。では君が生まれて来た目的は何だ?」
「ホカク・・・。ショウジョ・・・・・・ホカク」「そうだ、ライチ。君の目的は少女の捕獲だ」


元から高い知能を備えているライチだが、生まれて初めての会話は流石に覚束(おぼつか)ない。
それでも彼の目的意識は明瞭としている。ライチは光クラブが必要とする、少女の捕獲を
目的として作られたのだ。ライチの今後に期待を膨らませるゼラの後ろで、部下8人が厳かに
ライチの名を連呼する。「ライチ」「ライチ」「ライチ」「ライチ」ゼラが言葉を続ける。

「君は破滅の悪魔か、希望の光か。ライチ・ラライチ・ララライチ・・・・・・」

※遅ればせながら『第1話の感想』が完成致しました!これからは毎週の土曜日、
深夜に更新して行きます!『登場人物』も大幅に加筆修正しました。本作の誕生経緯や
今後の物語を読み解く為にも、『初代舞台版』の説明を重点的にご覧になってください!


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4.
2019/01/27 (2019/02/11更新) 「『ライチ☆光クラブ』第壱話『エラガバルスの☆夢』感想」
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『只今ヨリ、東京グランギニョル第三回公演『ライチ☆光クラブ』ヲ開演致シマス』

川崎市の工業地帯、蛍光町。廃工場も多いが、稼働している工場もまた多く、ここは昼夜問わず
「ゴウン、ゴウン」という稼働音が町中に鳴り響く。それは深夜になっても変わらない。
この貧しい地の廃工場の1つを根城に、人知れず暗躍する秘密組織がいた。彼らこそが蛍光町出身の
9人の少年達で結成された、秘密結社「光クラブ」である。ある日の夜。光クラブの面々は侵入者の
対処に追われる事となる。好奇心から光クラブの秘密基地に迷い込んだ侵入者が逃げ回る。

追っ手として現れた3人の少年が左手にホイッスル、右手に大型懐中電灯を携えて、侵入者の浜里に迫り来る。
追っ手の少年達は雷蔵、タミヤ、ニコといい、この文字列通りに並んでいる。タミヤ達は「重要任務中は
ドイツ語を用いる」というクラブの規定に則り、ドイツ語で指示を出し合いながら、浜里を探照灯の
当たる方角へと誘導する形で追い込んで行く。3人は懐中電灯で浜里を照らし、ホイッスルで「ピーピー」という
警告音を発しながら、浜里を追跡する。探照灯も仲間のデンタクが操作して、浜里を捜して動き出す。

※原作ではドイツ語の台詞は、和訳なしでカタカナ表記で書かれています。ここでは解り易く
和訳を併記します。本作はメインキャラに坊主が4人もいる為、望遠鏡は誰が操作しているか
解り辛いのですが「こういった時、テキパキと仕事をこなすのはデンタク」と仮定して書いています。


「ディー・リヒテ・ザイテ!(右方向!)」「ディー・リンケ・ザイテ!(左方向!)」
「発見!ディー・ヒンター・ザイテ!!(後方だ!!)」「逃がすな、追うぞ!!」
「フェア・フォルグ!(追え!)」「べフライエ・ニヒト!(逃がすな!)」

とうとう探照灯に映り込んだ浜里を、デンタクが望遠鏡越しに発見し、光クラブのリーダーのゼラに
速やかに報告する。「発見しました、ゼラ!!タミヤとニコ達が追跡中です、ゼラ!笛の音3回!
もうすぐです、ゼラ!」デンタクもドイツ語に切り替わる。「ヴィア・ハーベン・イーム・アインゲ・
ホーレン!(我々は彼を追い詰めた!)アイネ・ザック・ガッセ!(袋小路だ!)追い詰めた!あいつです、ゼラ!
もう奴に逃げ場は無いと言ってます、ゼラ!」報告を受けるゼラは侵入者に一切動じず、黙々と一人チェスに興じる。

壁際に追い込まれて、へたり込んだ浜里を、タミヤ達の懐中電灯がスポットライトの様に照らし出す。
笛の音が一層けたたましくなる中、浜里は追っ手の手で確保された。浜里は顔を殴られて鼻血を出し、
頭に袋を被せられ、両手足を縛られて、光クラブの中心地に転がされる。クラブの中心地には、クラブの
帝王として君臨するゼラの玉座が鎮座しており、その手前では彼の部下である7人の少年達が、ぐるりと
浜里を取り囲む。7人の部下はクラブの規定に則(のっと)り、ドイツ語で浜里に制裁を下す様に帝王に促す。

※ゼラの意向により光クラブはナチスを模倣した組織なので、時々ドイツ語交じりの台詞が差し挟まれます。
四六時中ドイツ語交じりで会話しているのではなく、重要任務の時だけ使用しています。部下にドイツ語を
命じているのもゼラなら、指導しているのもゼラです。『ぼくひか』番外編では、ゼラが地道に独学でドイツ語を
習得している光景が描かれています。ドイツ語は格好良いだけに難しいのですが、きっとゼラは「発音も
正確にやれ」と部下達に厳しく指導し、間違えたメンバーには厳しい処分を下しているに違いありません(笑)


「イッツ・ヴィル・ニヒツ・メア!(この男とは絶交だ!)」「ヴィア・ヴェルデン・ゲゼーエン!(僕達は見られた!)」
「デア・シュテッツプンクト!(基地!)」「ダスマン・ラデット・アイネ・シュルトゥ・アウフズィッヒ!
(こいつは罪を犯した!)」「ダス・ゲハイムニス!(秘密!)」「ダス・リヒト!(光!)」
「フェアバント・デンシュト・エレンフリード!(邪魔者を排除しろ!)」「ヴィア・ヴォーレン・
ベシュトラーフェン!(我々は制裁を望む!)」「エアモルド!エアモルド・デムマン!(殺〇!この男を〇せ!)」

周りで飛び交う意味不明な言語が、ドイツ語であるとは知る由(よし)も無い浜里が朦朧と呟(つぶや)く。
「な・・・何だよ、お前ら・・・。や・・・やめろ・・・」浜里を無視して、部下達は主君に侵入者への処罰を訴える。
「そして、この男は見てしまいました、ゼラ!」「そうです!あれを見てしまいました、ゼラ!」「ディー・
ベシュトラーフンク!(制裁!)」「ゼラ、この男に裁きを!」部下からの報告が一しきり終わった所で、
ゼラの一人チェスにも一区切りが付く。「63手後が黒のナイトでチェックメイト」帝王ゼラの名を部下が連呼する。

「ゼラ!ゼラ!ゼラ!ゼラ!ゼラ!ゼラ!ゼラ」「な・・・何だよ・・・?」何が何だか解らないまま、
身をよじらせる浜里にゼラは無感情に述べる。「そうか・・・。この男は「あれ」を見てしまったのか・・・・・・」
ゼラの発言にいち早く反応したニコと雷蔵が、浜里に接近すると物騒な事を抜かす。「脳味噌、くり抜いて
良いですか、ゼラ?」「あ~ん、私にやらせて」浜里の顔の袋を脱がすニコと、彼の提案に猫撫で声で賛同する雷蔵。
捕縛前に受けた傷跡が生々しく残る顔を晒しながら、ついに浜里は光クラブのメンバーと基地を目の当たりにする。

「やめっ。まっ・・・待ってくれ。俺は本当に何も見ちゃいねぇ。本当だ。お前・・・常川・・・?
お前、2組の常川じゃねぇか。てめえ、俺にこんな事して只で済むと思ってんのか!?」信じ難い事に
光クラブの正体は皆、浜里の小学生時代からの同級生であった。自分を拉致した集団の正体を知って、
抵抗を激しくする浜里をニコが押さえ込む。狼狽する浜里とは正反対に、悠然とゼラは自論を展開する。

「常川。それはある共同体においては、そう規定されている。しかし僕の血は常川か?NO。
僕の肉は常川か。NO。常川とは曖昧で実体が無い。ここ光クラブにおいて、我はゼラと規定される」
「光クラブ?ゼラ?」一般社会にて本名で生活する自分を否定して、この場に君臨する者としての威圧感を放つゼラ。

彼の言葉の意味を読み取れない浜里も、ゼラに気おされてしまう。学校では悪質なイジメっ子として
幅を利かせるも、ここでは無力な存在と化した浜里に、どの様な制裁を下すべきか。光クラブによる
制裁方法を巡る審議が、ゼラを議長に据えて当然の如く開催される。ゼラは審議を開催すると、
7人の部下達を番号順に呼んで、1人1人に制裁方法を提案させる。彼の部下には本名での名前順で、
それぞれにドイツ語でのナンバーが振り分けられており、まずは1番のニコから指名される。

「1番(アインツ)ニコ」「はい、親愛なるゼラ!俺はこの男の目ん玉を焼いて、こいつに食わせたいです!」

※ニコは隻眼で目を失う苦痛や、浜里からのイジメを味わった身なので、彼にも同じ様な思いをさせて
報復したい意思が、ありありと伝わって来る制裁案です。『ぼくひか』読後では、よりニコの切実な気持ちが解ります。


「2番(ツヴァイ)雷蔵」「あ~ん☆この男のオ〇ン〇ン、取っちゃうのが良いと思うわぁ。ゼラ」

※下衆の勘繰りですが(笑)この手の発言が出る辺り、雷蔵は「将来は取る事」を
想定しているのでしょうか?好きでオカマキャラを演じているのではなく、性同一性障害ですから。
よく雷蔵の台詞にはハートマークが付きますが、私のパソコンでは表示出来ないので、
作品に合わせて星マークに変換してあります。なお原作では台詞の伏せ字はありません(笑)


「3番(ドライ)カネダ」「ぼ・・・僕は、こ、こいつにイジメられた事があります。
だ・・・だから、一番苦しむやり方で、こ・・・殺したい・・・です。ゼラ」

「4番(フィーア)デンタク」「やってみたい実験が幾つかあります。ゼラ。(1)凍死させた後に蘇生してみる実験。
(2)血管内にプラスチックを流し込み、標本を作る実験。(3)毎日、首輪を1個ずつ増やし、どこまで伸びるかの実験」

「5番(フュンフ)ダフ」「僕達の望みを叶える為に黒魔術の儀式によって、
この男の首を生贄として差し出し、悪魔との交渉に使いたいです」

※この初登場時の台詞からして「ダフはオカルトマニア?」と思いましたが、違いました。
エロマニアでした(笑)エロ好きなのが判明するのは、中盤以降になりますが(笑)ダフがオカルト関連の
発言をするのは、後にも先にも、ここだけです。ただし、この手の発言を即座に思い付く辺り、
全く興味や知識が無いのではなく、ある程度は精通しているのかもしれません。


「6番(ゼックス)タミヤ」「はい、ゼラ!俺達の力を見せつける為、リンチが良いと思います!」

※単行本の表紙はメインキャラ・オールスターで、各自の名前、番号、肩書も
紹介されています。表紙でのタミヤの第一印象は「この子まともそう」だっただけに、
リンチ発言には面食らいました。「やっぱり、この狂気の集団の一員なんだな」とも感じました。
まぁ紆余曲折あって、これから本来のまともな性格に戻って行くんですけれどね。


「7番(ジーベン)ヤコブ」「へへへへへ。一度やってみたかった事があります。
ゼラ。くすぐりまくって笑い殺してみてえす!へへへへ」

審議の結果、最もゼラが気に入った案が可決されて、即座に実行に移される。「ニコの目を潰すという
意見が気に入った!よって、この制裁を実行に移そうではないか!!」ゼラによる死刑宣告を合図に、
ゆっくりとタミヤら7人が浜里に群がる。ニコと雷蔵に羽交い絞めにされた浜里の顔に、デンタクが
大型懐中電灯を向ける。「ちょ、ちょっと待てよ」「出力最大!」「や、やめろ」ニコの指示に従い、
デンタクが出力最大の光を浜里の両目に当てる。「見てないから。俺は何も見てないから許してくれ」

懇願も空しく、浜里は両目を焼き潰されて「ぎゃああああ!ぎゃああああ!」と悲鳴を上げる。
数分後。両目を焼かれて衰弱した浜里は、もう見えない目から涙を流して部屋の隅に横たわっていた。
「ディーシュトーラーフェ!ディーシュトラーフェ!ディーシュトラーフェ!(罰だ!罰だ!罰だ!)」
制裁決行を告げる部下達に、帝王は次なる指令を下す。「この男を捨てて来い!そして崇高なる
作業を再開しようではないか!!」ゼラが浜里の死体遺棄を命じると、8人目にして最後の部下が姿を現す。

※目を焼かれる浜里は『ライチ』では無言でしたが、『ぼくひか』では悲鳴が追加されました。
この後、浜里は虫の息でスクラップ置き場に放棄され、大量のガラクタの中で生き埋めにされる最期を遂げます。
ゆるいネタバレですが、後述の萩尾先生も含めて、浜里の死体発見や殺害露見といった展開はありません。
学校で「行方不明になった」と語られるに留まります。浜里の処遇に関する描写は『ライチ』では
少ないですが『ぼくひか』で増加されて、タミヤ達に捨てられるシーンが描かれています。


8人目の部下ジャイボは唯一、もう1人の侵入者に気付いて捕獲に向かった為、長らくクラブを留守にしていたのだ。
ジャイボは基地の入り口でエスカレーター代わりとなっている、ベルトコンベアーに横向きに乗りながら、
もう1人の侵入者である中年女性を連行して来た。女性は手錠を嵌められ、ジャイボに髪を引っ張られている。
「ゼラ!この女も秘密基地、覗いてたよ!!きゃは」心酔するゼラの役に立てたと、嬉々として侵入者を
差し出すジャイボ。「おおっ」ダフとヤコブが驚く横で、ゼラは満足そうに予想外の成果を上げたジャイボを労う。

「よくやったぞ、ジャイボ」捕われた女性は壁に磔(はりつけ)にされて、両手に1つずつ手錠を嵌められて、
手首を壁の穴に繋がれてしまう。彼女は萩尾という名の教師で、生徒の浜里を心配して追って来た所、
光クラブに迷い込んだのだ。狂気の集団の前で身動き一つ取れない中、萩尾は光クラブに反抗する。
「貴方達・・・。こんな事して、どうなるか解ってるの?浜里君がこの工場に入って行くのを見て、
付いて来たら・・・・・・。自分達が何やってるか解ってるの!?浜里君!浜里君!」

萩尾の視線の先には、クラブの隅でゴミの様に転がっている浜里がいる。彼は萩尾の呼びかけにも気付かず、
呻き声を上げて横になるしか出来ない。最早、死を待つだけの身となった浜里への仕打ちから、生徒思いの
萩尾は怒りを覚える。「酷い・・・・・・。酷過ぎるわ、貴方達!」声を荒げる彼女にも、驚く素振りも
見せない光クラブ。じゃれる様にして、萩尾の両頬を片手で掴むジャイボが無邪気に言う。

「あれ~。この女、よく見たら世界史の先生だぁ。あはは」同校の教師と生徒という関係性を
認識してからも、光クラブの萩尾への対応は、ちっとも変わらない。光クラブの中学校での姿しか
知らない萩尾は、彼らの正気を呼び覚ます一助となる望みも賭けて、メンバーを本名で呼び始める。
呼ばれたのはジャイボ、ニコ、ダフ、カネダの順だ。「貴方・・・雨谷君ね・・・。
石川君に、田伏君に、金田君。どうしてよ!?貴方達みたいな真面目な子達が何してんのよ!?」

ゼラは玉座から下りると、8人の部下を背後に横並びで立たせ、自分は中央手前に立って、唐突に憧れの人物について語り出す。

「先生。ローマ皇帝エラガバルスは何故、殺されたのですか?」「え?」
「先生、質問です!彼が〇ソまみれで死んだって、本当ですか!?きゃは」「な・・・何・・・?」


世界史顧問とはいえ、聞き慣れない歴史上の人物のエピソードを持ち出す、ゼラとジャイボに困惑を深める萩尾。
彼女の混乱に追い打ちをかける様にして、デンタクが指摘する。「先生は先週、ナポレオンの生まれた年を
1759年と言いましたね。あれは1769年の筈です」ヤコブと雷蔵も何食わぬ顔をして茶々を入れる。
「もしかして、こんな所まで訂正にいらっしゃった?」「や~ん。何て仕事熱心なの~~」萩尾には面識のある
生徒達の凶行よりも、気になる事があった。さっき目撃した、光クラブが制作している大型ロボットの存在だ。

「あ・・・貴方達。一体ここで何をしてるのよ!?そ、それに、あの化け物は一体、何なのよ!?」

基地の隅に安置された、製作途中のロボットに目をやりながら萩尾が叫ぶ。
彼女の言葉を一切合切、無視して、ゼラがエラガバルスの話を一方的に続ける。

「エラガバルス帝は常に美しくありたいと願い、性転換までしたという。
そして彼は18歳という若さで殺害された。究極の美を補完する事。エラガバルス神とは
不敗の太陽。常人にあらざる異形の者にこそ神は宿る。ディー・ショーン・ハイト・
イスト・アレス(美こそ全てだ)光クラブの崇高な目的をお教えしましょう」


※ゼラがヒトラーと並ぶ目標の人物とするエラガバルスは、通常はヘリオガバルスと呼ばれます。
古代の人物なので台詞で人物像が語られるのみですが、本作のキーパーソンを担います。
ゼラの思想や行動はヒトラーとエラガバルスを模倣していますが、どちらかと言うと後者に
重きを置いて基盤化している印象です。エラガバルスは背徳行為の数々で悪名高いのもあり、
中高の世界史では伏せられている事が多いので、萩尾先生は存在自体、知らないのかもしれません。


そう言うとゼラはジャイボ、ニコ、ダフと組んで、萩尾の服を剥ぎ取ってしまう。服全体を破かれて、
ほぼ全裸となった萩尾は性的暴行を予感して怯える。「や・・・やめなさい!力づくで、こんな事するのは」
ところがゼラの反応は予想だにしないものだった。ゼラは萩尾に汚物を見る様な視線を向けると、
彼女のタプタプとした豊満な胸を下から持ち上げ、部下達と萩尾に向けて冷たく言い放った。

「諸君、この体を見たまえ。何と醜い・・・。吐き気がする・・・」「なっ」「この大きく肥大した脂肪の塊!
真っ赤に塗りたくられた唇!欲情した雌豚の証だ。ゴワゴワした固くて太い体毛!こんなにも醜い姿を
晒してまでも、この女はしゃあしゃあと生きている。そう、この女こそ怪物だ!!」萩尾から少し離れて
ゼラが部下達に賛同を募る。当然、部下達は帝王に迎合する。「ダス・モンストルム!(怪物だ!)」

「なっ。あ、貴方達だって、こうやって大人になって行くのよ!!」全員揃って自分を「怪物」と
連呼する光クラブに、なおも反論する萩尾。彼女から少し離れると、得意気にゼラは語り続ける。
「僕は成長を否定しているのではない。貴女が死ななかった事を否定しているのだ」
「ベシュトラーフェン!(裁きを!)」「ゼラ、この醜い女に罰を!!」「醜悪な姿を晒している、
この女に制裁を!!」ジャイボ、タミヤ、デンタク、ダフ、ニコも声を荒げて、帝王に賛同の意を示す。

※本作はキャラの人数が多い上、複数のキャラが同時に喋る場面が非常に多いのです。
漫画なら一目で誰の台詞か解りますが、文章だけでは、そうも行きませんので一工夫してあります。
「キャラ全員の台詞を書いた前後で、発言順にキャラの名前を列挙する事で、誰の台詞なのかを暗示」
させています。この場面だと「和訳・裁きを!(ジャイボ)」、「ゼラ、この醜い女に罰を!!
(タミヤ・デンタク・ダフ)」、「醜悪な姿を晒している、この女に制裁を!!(ニコ)」になります。


こうしてゼラが忌み嫌う「醜い大人」と断定された萩尾は制裁を受ける事となる。彼女の死刑執行人を
ジャイボが買って出る。「ねぇ、ゼラ。この玩具(おもちゃ)僕にちょうだい」「良いぞ、ジャイボ」
微笑み合って2人の取り引きは成立する。「貴方達、狂ってる」口での抵抗を一向に止めようとしない
萩尾を、おどけてジャイボが一笑に伏す。「あはっ。近くで見ると、化粧厚くて気持ち悪いや!
久しぶりだから上手く出来るかなぁ。蛙(かえる)の解剖以来だからなぁ」「え?」

ジャイボは薄笑いして制服に仕込んでいたナイフを取り出し、舌で舐めると萩尾の腹に突き刺す。
数十分後。ジャイボに生きたまま臓物を引きずり出された萩尾は絶命する。床には大腸が散らばり、
小腸は成果と言わんばかりに、ジャイボがチェーンの様に持って見せびらかす。「きゃははっ!!
見てよ、ゼラ!!この女、こんな醜い臓物が体ん中、詰まってたよぉ」返り血まみれで笑顔を
浮かべて報告するジャイボ。彼を除くメンバー一同は終始、真顔で萩尾の末路を静観していた。

驚く者はいたが、度合いは些細なものだ。それこそ蛙の解剖を観察するかの様だ。カネダは「うわ」、
雷蔵は「何あれ?」と、きょとんとする。ふとジャイボがゼラに尋ねる。「まさか僕達にも、
あんな醜い物が詰まってるのかな?」「まさか。僕達のは、もっと美しいに決まってるじゃないか」
自信満々で断言するゼラの傍らで、ジャイボは再び手に持った腸を嬉しそうに眺める。「きゃは」
萩尾の処刑を確認したゼラは、メンバーに解散を命じる。「今宵は解散!!」「はい、ゼラ!」

※浜里は自業自得ですが、萩尾先生は可哀想ですね。殺すにしても、もっと楽な方法にしても
良いでしょうに。と言うものの、このシーン何度見ても「内臓なんて皆こんなもんでしょ」と
冷静に突っ込んでしまいます。初見時からそうでした。内臓に差異が出るには、怪我や病気
(ニコチン中毒やアルコール中毒含む)をしない限りは、無理だと思うのですが。


「ゼラ!」「ゼラ!」「ゼラ!」「ゼラ!」今宵もクラブ活動は、帝王への惜しみない賛辞で幕を閉じた。
クラブ活動は機密事項なので、毎晩深夜に行われるのが鉄則なのだ。更に夜も更けた頃。秘密基地の中で
2人きりになったゼラとジャイボは、恋人達の秘め事を始めていた。彼らは普段は主従関係に徹し、
2人きりの時にしか恋人の顔を見せない為、ゼラとジャイボの関係は誰にも知られていない。
秘め事での2人は、ゼラが「廃虚の帝王」ならば、さしずめジャイボは「廃虚の寵姫」といった関係にある。

ゼラは普段なら決して誰にも座らせない、自分専用の玉座にジャイボを座らせる。「萩尾の確保と処刑」という、
大仕事をこなしたジャイボを労う意図もあるのだろう。萩尾の血が顔に付いたまま、美しく穏やかに微笑む
ジャイボに、ゼラは跪(ひざまず)いて片手を重ねて愛の言葉を囁く。「ああ、ジャイボ。お前は何て美しいんだ。
まるで、このライチの実みたいだ」好物のライチを1粒差し出すゼラに、ジャイボが艶っぽくねだる。
「ねぇ、早く・・・ゼラ」ゆっくりと自分の人差し指ごと、ライチをジャイボの口の中に入れてやるゼラ。

ライチを食べたジャイボが、自分の人差し指を艶めかしい目でしゃぶる中、恍惚としながら
ゼラは今後の展望を語る。今後の展望の鍵を握る、大型ロボットである夢の機械(マシン)は
光クラブが総力を結集して制作に当たっている。いよいよ完成間近となったロボットは、
壁際に設置された製作現場に安置されている。文字通りロボットは夢を叶えてくれる存在なのだ。

「永遠を約束してくれる。このライチの実が叶えてくれる。あいつが完成したなら僕達は無敵だ」

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5.
2019/01/19 (2019/02/11更新) 「『ライチ☆光クラブ』の登場人物」
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光クラブのメンバー

※光クラブの人物は『称号』→『ドイツ語の番号』→『クラブでの名前』→『本名』の順に記載します。
紹介順は重要人物順だと「ゼラ→タミヤ→ジャイボ→ニコ→ライチ→カノン→ダフ→カネダ→デンタク→
雷蔵→ヤコブ→その他は同じ」となりますが、折角なので番号順に紹介したい為、以下の並び順にしてあります。


廃虚の帝王・ゼラ(本名・常川 寛之(つねかわ ひろゆき)

本作の主人公。眉目秀麗な天才少年。黒髪ショートで角眼鏡をかけている。中学二年生にして
170cmの長身。黒い星の入った手袋がトレードマークで、光クラブでの活動中にだけ着用する。
地元の廃工場を本拠地とする、秘密結社「光クラブ」のリーダーで、8人の部下を率いて
「世界征服」の野望に燃える。光クラブの基地が廃虚にある事から「光クラブ=廃虚の帝王」を自称する。
光クラブメンバーの称号と番号は、ゼラが考案して与えたもので、番号は部下にのみ与えられる。

冷静、冷淡、冷酷の三拍子揃った性格。学校や家庭では大人しく振る舞っているが、光クラブでは
残虐非道な本性を露わにし、自分の意に反する者には容赦なく制裁を下す。小六の時に偶然、町角で
出会った占い師の予言を受けた事で、世界の支配者となる野望に目覚めた。ヒトラーやエラガバルスを
目標に掲げ、2人を模倣した点も多々見られる。この為、光クラブ内では時折ドイツ語が用いられる。

川崎市の夜光町をモデルとする、貧乏な工業地帯の「蛍光町」に住んでいて、中でも底辺校と名高い
男子校「蛍光中学校」に通っている。これは学年も含めて、部下8人も共通している。底辺校には
場違い過ぎる程、万事に優れた才能を発揮する。頭脳は非の打ち所が無い上、中でも科学や
チェスにおいては突出した能力を有する。人格を有したロボット(ライチ)を発明したり、
チェスに至っては「56手先で僕が勝つ」と有言実行する程の腕前である。

チェスは趣味でもあり、一人チェスを嗜んでいたりもする。果物のライチを好物としても、美の象徴としても、
こよなく愛しており、ロボットのライチの動力源にもした。序盤の終わり目に、かねてよりの計画であった
「野望実現の尖兵ライチの完成」「光クラブの女神となる美少女の捕獲」を成功させる。捕えたカノンを
「光クラブの美の象徴」に据えた後は大きな満足感に浸るものの、思いがけない所から綻びが生じて行く。

よく『DEATH NOTE』の夜神月との類似性が指摘されるが、相違点も多く、良い意味でも悪い意味でも
「似て非なる者」と言える。原作の舞台版は1985年の作品なので、むしろゼラは「月と同じ系統の
キャラクターとしては、元祖と言っても過言ではない存在」である。ゼラとニコとジャイボの本名は、
初代舞台版での担当俳優の名前を漢字を変えて使用している。希望キャストは宮野真守さん。

忠誠の騎士・1番(アインツ)・ニコ(本名・石川 成敏(いしかわ なるとし)

光クラブのメンバー。ゼラの部下では最大の忠臣で、時として狂気すら垣間見える域の忠誠心を抱く。
ゼラが「ライチの右目に人間の眼球を移植したい」と提案した際、即座に自分の右目を提供した程である。
ただしニコにとっては「ゼラは忠誠を誓った主君」なので、彼への思いは崇拝や敬愛の域を出ていない。
右瞼には眼球を摘出した際に出来た縦一直線の傷跡がある。中学二年生としては大柄で170cmもある。
強面で高圧的な態度を取りがちだが、硬派で謹厳実直な少年。光クラブでは率先して有能な働き手を担う。

主君への忠誠心から磨き上げられた有能ぶりは、ゼラからも「お前が(部下としては)一番だ、ニコ」と
認められている。メンバーの番号は本名での名前順から決められている為、名字が石川のニコが
先頭になったのは、あくまで偶然である。だがニコは「俺がアインツなのは、ゼラの一番の部下の証」だと
強く意識しており、アインツの肩書にも執着する。クラブに綻びが生じてからも、主君ゼラを最優先に思い、
彼の憂いを断つべく奮闘する。名前は『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』の女性歌手ニコさんから取られた。

暗闇の乙女・2番(ツヴァイ)・雷蔵(本名・市橋 雷蔵(いちはし らいぞう)

光クラブのメンバー。サブキャラなのに「性同一性障害のおネエ系・男の娘美少年」というエライ濃いキャラ。
クラブ内では中学の制服と学生帽がユニフォームなのだが、雷蔵とジャイボの男の娘2人に限っては
男装の麗人にも見える。身長は2人共165cm。学ランなのを除けば、外見も内面も口調も完全に女の子。
趣味および特技は化粧と裁縫で、真夜中のクラブ活動中もフルメイクを欠かさない。マニキュアまでしている。

ライチのマスクや衣装は、雷蔵が志願した上で制作を担当した。美少女捕獲用アイテム「猫ちゃんマスク」も
彼の発明品である。享楽的かつ楽観的で、親しみ易い人柄。偶像崇拝の対象となったカノンの世話係
(と言っても髪を梳かして、体を拭いてやるだけ)を任されるが、これはゼラが「雷蔵は本質的には女なので、
カノンに手を出す心配が無いから」と判断した故と思われる。名前は市川雷蔵に由来し、後の番外編にて
「作中では市川雷蔵のファンだった、父親に名付けられた設定」とされた。希望キャストは中村悠一さん。

鬱屈の瞳・3番(ドライ)・カネダ(本名・金田 りく(かねだ りく)

光クラブのメンバー。臆病で暗い性格をしていて、右目を隠す長い前髪がより一層、陰気な雰囲気を醸し出す。
学校では気弱なのに付け込まれて、浜里からは特に酷いイジメを受けていた。右手の親指の爪を噛むのが癖で、
悔しがる時にする事が多い。タミヤとダフとは幼馴染で、光クラブの創設メンバー同士でもある。

元々は光クラブは「タミヤら幼馴染トリオの、子供用の秘密基地」でしかなかった。「光クラブ」という
名前も、3人の名前(本名)の頭文字を組み合わせて付けられた(「ひろし・かつや・りく」→「ひかり=光」)
光クラブ発足当時は、タミヤとダフと共にクラブの中心人物であったが、ゼラがクラブを乗っ取ってからは
隅に追いやられてしまった。タミヤを親友としても、幼馴染トリオのリーダーとしても尊敬している。

彼が光クラブのリーダーの座を剥奪された、今となっても「僕にとってのリーダーはタミヤ君だけ」と
一途な思いを胸に秘めている。これらの思いはダフも同じである。『ライチ』本編では口数が少なく
目立たないが、前日譚『ぼくらの☆ひかりクラブ』では重要な役を担い、やや明るい性格になり、
台詞も多くなった。暗いから大人しいにシフトチェンジしたと言える。希望キャストは梶裕貴さん。

科学少年・4番(フィーア)・デンタク(本名・須田 卓三(すだ たくぞう)

光クラブのメンバー。高身長美少年で角眼鏡を使用しているゼラとは対照的に、低身長そばかす少年で
丸眼鏡を着用している。身長は男子では最も小柄な155cm。本作における、もう1人の天才少年で、
平凡な容姿からは想像も付かない程、優秀な頭脳を持つ。万能性ではゼラには劣るものの、数学や化学に
おいては間違いなく彼に匹敵する。ライチの制作はゼラとデンタクが発案し、2人が主導して他のメンバーに
パーツ制作や組み立て作業をさせる事で完成させた。ライチ制作ではゼラの右腕として大いに活躍した。

ライチの制作においては最大の貢献を果たしており、彼なくしてライチの発明は有り得なかった。
ライチが完成してからは、彼に人間の心を芽生えさせようと尽力する。ニコやジャイボに次ぐ
ゼラの忠臣であり、常に彼を的確にサポートする。常に理知的に丁寧な口調で話し、合理主義に基づいた
発言や思考を心がける。仇名は電卓を愛用している為で、ライチ操作用の電卓まで開発して使用する。

夢見る眼帯・5番(フュンフ)・ダフ(本名・田伏 克也(たぶせ かつや)

光クラブのメンバー。常に右目に眼帯を着けている。仇名のダフは名字の田伏をもじったもので、
光クラブに留まらず、学校でも同級生全体に呼ばれている。タミヤとカネダとは赤ん坊の頃からの親友同士。
快活で面倒見の良いタミヤが、大人しい2人を引っ張って行くといった間柄にある。タミヤへの尊敬の表れか、
ダフとカネダは自分達は呼び捨てにされながら、彼を「タミヤ君」と呼んでいる。実写映画版では髪型が変更された
唯一のキャラで、他の坊主キャラ(ニコ、デンタク、ヤコブ)との差別化の為か、坊主から黒のベリーショートになった。

初登場時の台詞からオカルトマニアかと思いきや、そんな事は無かった。彼が人一倍、興味津々なのは、
オカルトではなくエロであった。おっとりした気質だが、むっつりスケベで、性的な意味では最も男子中学生らしい。
性欲旺盛な余り、情けない面を見せる時もあるが、根は温厚で友人思いの少年。ちなみに「光クラブは
全員が童貞」という公式設定がある。身長はカネダと同じで160cm。中盤にて光クラブの現状に
疑問を抱いたタミヤに真っ先に味方するも、これが災いして予想外の事態を引き起こす。

真実の弾丸・6番(ゼックス)・タミヤ(本名・田宮 博(たみや ひろし)

光クラブのメンバー。身長185cmの長身痩躯の硬派な美少年。外見も内面も男前で、正義感が強く、
義理人情を重んじ、行動力も高い。今でこそゼラの部下に収まっているが、元は光クラブの創設者にして、
名実共にリーダーであった。小学四年生の時、親友のダフとカネダを誘って、単なる子供の遊び場として
光クラブを創設した。当初は3人で遊び場であった秘密基地で、楽しい毎日を過ごしていた。
ところが五年生の時タミヤが親切心から、転校生のゼラをクラブに加入させた事から歯車が狂い出した。

ゼラによって如何にして光クラブが侵食され、狂気に染められたかは『ぼくひか』を読めば解る。
一応リーダーの肩書だけは残っているが、ゼラは「リーダーを越える帝王」として君臨している為、
形骸化している。昔はゼラに抵抗していたものの、今となっては完全に彼の洗脳下に置かれてしまい、
残虐行為にも疑問を抱かなくなっている。だが中盤での出来事を切っ掛けに、ついに覚醒する。

光クラブの現状に疑問を抱き、ゼラにも反感を覚える様になり、彼のライバル的存在に転身する。
他の光クラブのメンバーはゼラの言いつけに従い、襟を締めているのに対し、タミヤだけは
反骨精神からか、いつも襟を開けている。ゼラが襟を締めない事を嫌っているにも関わらずである。
名前は田宮二郎さんから取られている。希望キャストは小野大輔さん。

地下室の道化師・7番(ジーベン)・ヤコブ(本名・山田 こぶ平(やまだ こぶへい)

光クラブのメンバー。ニコ、デンタク、ダフと並ぶ、坊主頭の少年。メインキャラに4人も
坊主がいるのは、昭和末期(おそらく初代舞台版が公開された1985年)が舞台なのも大きいと思われる。
仇名は本名を短縮したもので、キリスト教の同名の聖人とは無関係。ヤコブ本人の人物像にも
宗教要素は皆無である。「へへへ」と笑う事と、人差し指で鼻の下をこするのが癖。
どこのクラスにもいる、お笑い担当の男子で、称号もそれに由来している。

本作の登場人物の中では、容姿も性格も最も普通の人に近い。平々凡々な人物造形の為、
周りの強烈なキャラ達に埋もれがちで影が薄い。だが普通であるが故に、誰とでも上手く
やって行けるタイプらしく、狂気の集団の中においても適応している。雷蔵と仲が良い。

漆黒の薔薇・8番(アハト)・ジャイボ(本名・雨谷 典瑞(あめや のりみず)

光クラブのメンバー。妖艶な絶世の美少年。可愛い系の雷蔵に対し、綺麗系の男の娘。
極度のドSで極度の変人で極度のヤンデレ。ゼラを恋人として本気で愛しており、彼の為なら
手段を選ばず行動する。美少女の様な姿に反して、れっきとした少年なので、ゼラへの思いも
男性間の同性愛そのものである。光クラブ内で2人きりになると、情事に耽る時もある。なお作中での
性描写は、もっぱらゼラとジャイボの情交であり、必ずジャイボが口淫でゼラに奉仕するに留まる。

ゼラを神聖視してはいるが、恋人意識が強いからか、ジャイボのみ彼に敬語を使わない。
サイコパス同士で気が合うのもあってか、ゼラへの愛情は狂気的であり、彼に命じられた
拷問や処刑すら嬉々として行う。ゼラがサイコパスとしては支配型に該当するのに対し、
ジャイボは暴力型と支配型の複合型であり、殺傷行為に関してはゼラ以上に楽しんでいる節がある。

貧しい住民の多い蛍光町であるが、ジャイボの家は町医者の為、裕福な部類に入る。時折、父の仕事場から
盗んだ、注射器や薬品を悪用していたりもする。光クラブの番号は名前順なのに、名字が雨谷のジャイボが
最後尾なのは「他のメンバーの番号が制定された後に急遽、加入して来た為」と『ぼくひか』で説明された。
耽美、淫靡、残酷、悲劇性など、本作を構成する要素を凝縮した人物像であり、これらの要素が終盤になるに
つれて表面化して行く。本名は初代舞台版の原作者にして、ジャイボの担当俳優だった飴屋法水さんに由来している。

甘美なる機械(マシン)・ライチ

1年半の歳月をかけて光クラブが制作した、大型の人型ロボット。身長220cmで、黒いオールバックの
巨漢の姿をしている。鋼鉄製の体に身に着けている、マスクと洋服は雷蔵の手作り。マスクはツギハギだらけで、
フランケン・シュタインを彷彿とさせる。作中では主にゼラに「機械(マシン)」と呼ばれる事が多い。
世界征服に役立てる為、ゼラがデンタクと考案したロボットで、デザインも彼が担当した。ゼラの好物である
ライチの実を動力源としていて、これが名前の由来でもある。起動には大量のライチの実を必要とする為、
光クラブは蛍光町に作ったライチ畑を育てており、定期的に実を採集してはライチに与えている。

厳つい外見に反して、極めて高い知性を備え、大人びた口調で流暢に話す。寡黙で思慮深い性格の持ち主。
誕生直後ゼラに命じられるまま、真夜中の蛍光町へと繰り出し、彼のお眼鏡に適う美少女の捕獲に向かう。
当初は美への無理解が原因で、失敗を繰り返してしまう。だが一念発起したデンタクが、
ライチに「私は人間である」とインプットしたおかげで、ようやく美を正確に理解するに至る。

そして光クラブの期待を遥かに上回る美少女、カノンを連れて来る事に成功する。彼女が光クラブに
囚われの身となってからは、主にメンバー不在時におけるカノンの見張り役をする。中盤以降はカノンとの
交流が始まり、彼女から様々な事を教わって成長して行く。次第にカノンとは恋仲にもなり「彼女と同じ
本物の人間になりたい」と願う様になる。終盤ではゼラが2人を「廃虚の恋人達」と呼ぶまでに至る。
実写映画版では杉田智和さんが声を担当した。希望キャストは杉田智和さん(映画版からの続投)

囚われの白百合・カノン

本作のヒロイン。だが主人公とは深い関係にならない所か、他のキャラと恋仲になるという
前代未聞のヒロインである。貧乏な男子校に通い、黒い学ランを着ている光クラブとは正反対に、
名門である星華女子中に通い、白いセーラー服を着ている。身長は150cmとメインキャラでは最も小柄。
黒いロングヘアーで、ゼラや雷蔵が絶賛する程の美貌を誇る。大人しそうな見た目に反して、
性格は天真爛漫で好奇心旺盛。重度の天然かつロマンチストでもあり、人並み外れた度胸や適応力も持つ。

「見知らぬ少年達によって廃虚に拉致監禁され、ロボットに監視されるという異常事態」にも、
難なく順応する大物ぶりを発揮する。光クラブのメンバーの前では「眠っていれば、不幸な時間も
通り過ぎるから」と、いつも眠っているか寝たふりをしている。メンバー全員がいなくなり、
ライチと2人きりになると目を覚まし、本来の活発で逞しい姿を見せる。ライチとの交流も自ら始めて
楽しんでおり、彼に主に「人間にとって大切な事は何か」を教えて行く内、恋仲へと進展する。

ピアノと水泳を習っており、連弾と潜水が得意。中学はミッション系らしく、賛美歌も習っていて、
ピアノを演奏しながら歌う事も可能。光クラブの地下室に監禁されてからは、ここにあるオルガンを
演奏するのが趣味。ライチにオルガンを教えて一緒に演奏したりもしている。

カノンが作中で披露する曲は『怒りの日(DiesIrea)』という、実在の鎮魂歌の終わりの2節である。
「最後の審判の日」「世界の終末の日」を意味する『DoomsDay(ドゥームズデイ)』という曲にも
同様の歌詞が登場する。また本作のイメージソング専用のバンド『ライチ☆光クラブ』が作曲した
『鎮魂歌(レクイエム)』という曲にも、歌詞にカノンの歌った部分が組み込まれている。

ゼラによって光クラブの女神として祭り上げられ、メンバーによる接触が禁じられている為、
基地内に監禁される以外の被害は受けていない。女神に相応しい慈愛に満ちた精神の持ち主で、
中盤以降は光クラブのメンバーの身に起きる出来事に、密かに胸を痛めている。

外部の人間

浜里(はまさと)

ゼラ達の小学生の頃からの同級生。吊り目で人相が悪い。イジメ常習犯の悪餓鬼で、ゼラ、ニコ、
カネダ、デンタク、ダフへのイジメを働いていた。ある日の夜、秘密基地へと向かう光クラブの
面々を偶然見かけて、興味本位で彼らを探ろうとした所、拘束されてしまう。おまけに製作途中の
ライチまで目撃してしまい「光クラブとライチの存在という、極秘事項を知る者の口封じ」として、
処刑される羽目になる。日頃の恨みにより、彼の処刑に異を唱える者は1人もいなかった。

処刑方法はゼラが7人の部下それぞれに提案させ、ニコの両目を焼き潰す案が採用された。
この時8人目のジャイボだけは、萩尾の捕獲に向かっていた為に留守であった。
結果、大型懐中電灯で両目を焼き潰されて、衰弱した所をスクラップ置き場に放棄され、
生き埋めとなって死亡する。大量のスクラップの中に埋もれて死んだ為、死体は発見されていない。
冒頭では浜里の死に至る経緯が描かれており、彼の処刑をもって物語の幕は上がる。

萩尾(はぎお)

蛍光中学校で世界史顧問を務める女性教師。ゼラ達の担任ではない模様。年齢は推定30代。
厚化粧で豊満な体つきをしていて、茶髪のセミロング。「けばいオバサン」といった印象を与える
外見に反して、根は非常に真面目で生徒思い。光クラブに侵入する浜里を心配して後を追って来た
ばかりに「光クラブとライチを目撃した、外部の人間は抹殺するルール」に基づき、処刑されてしまう。

自業自得だった浜里とは異なり、何の罪も無い善人だったのだが、ゼラが忌み嫌う大人であり、
死刑執行が残酷なジャイボに一任された為、浜里を遥かに上回る凄惨な最期を遂げる。
ジャイボに生きたまま内臓を引きずり出されて殺害された後、遺体は浜里と共にスクラップ
置き場に遺棄された。浜里同様、最後まで遺体は発見されず、世間的には行方不明扱いとなる。
死の間際まで粘り強くゼラ達への説得を続けたが、彼らの耳には届かなかった。

田宮 タマコ(たみや たまこ)

タミヤの妹で幼稚園児。美少年の兄に対して、ごく普通の容姿をしている。お兄ちゃん大好きっ子で、
兄の親友であるカネダとダフとも昔馴染みの間柄。中盤にて光クラブで発生する事件に
思いも寄らない形で巻き込まれてしまい、これがタミヤがゼラに反旗を翻す決定打となる。

マルキド・マルオ

ゼラが小学五年生の時、町角で出会った占い師。胡散臭い小柄な老人で、占い師歴は半世紀以上。
店の前を偶然、通りすがったゼラを唐突に鑑定し、世界征服の野望に目覚める切っ掛けを与えた。
この切っ掛けとは予言であり、これの実現をゼラは固く信じている。この予言とは
「坊ちゃんにはヒトラーにも無かった黒い星が付いている。坊ちゃんは30歳で世界を手に入れる。
あるいは14歳で死ぬ。その鍵は1人の少女が握っているだろう」といった内容。

ゼラの行動原理の大部分はマルキドの予言に基づいていて、ヒトラーを目標とするのも、
黒い星の手袋をしているのも、カノンをさらったのも、全て予言に影響されての行動である。
ゼラの人格形成にも大きな影響を及ぼしており、「僕は行く行くは世界の支配者となる存在」と
思い込む狂気的な人物と化したのも、マルキドの予言が原因である。事実、予言を真に
受ける前のゼラは、変人や狂人としての要素は皆無の、常に冷静沈着な少年でしかなかった。

名前はマルキド・サドの「マルキド」と、漫画家の丸尾末広先生の「マルオ」を組み合わせている。
丸尾先生は初代舞台版ではマルキドを演じていて、当時のポスターも手がけている。なお漫画版
『ライチ』の作者、古屋兎丸先生は丸尾先生を尊敬しており、初代舞台版の関係者でもある事から、
本作は丸尾先生を意図的に模倣した上で、現代的かつシャープに改変した様な画風にされている。

『初代舞台版』

1985年に『東京グランギニョル』という劇団によって公演された、漫画版『ライチ』の原作。
原作者は東京グランギニョルの主催者である飴屋法水さん。東京グランギニョルは、
かつてのパリにあった「エログロ要素や退廃的な作風を持ち味とした演劇」を多数上演していた
『グラン・ギニョール』という劇場から、名前や作風を模倣して構成された。

グランギ・ニョールが後世に残した影響は大きく、今では「グランギ・ニョールで
頻繁に上演された、凄惨な悲劇を彷彿とさせる作品」を「残酷劇(グランギニョル)」と
呼ぶ事もあり、ゼラも終盤にて一連の事件をこう呼称している。

漫画版『ライチ』の原作者の古屋兎丸先生は、青年時代『初代舞台版』を観劇して衝撃を受け、
愛してやまない『ライチ』を後世に伝えようと『ライチ』生誕20周年となる2005年に漫画化した。
ただし漫画版は大幅に独自のアレンジが加えられており、過去編である『ぼくらの☆光クラブ』に
至っては「飴屋さんに古屋先生が許可を得た上で制作された完全創作」である。

漫画版『ライチ』が大ヒットして以降、舞台版が幾度も公演されているが、全て漫画版準拠の内容となっている。
東京グランギニョル版は映像記録が残されておらず、鑑賞する事は不可能である。筆者が東京グランギニョルの
原作『ライチ』を『初代舞台版』と呼称するのは、正真正銘の舞台版『ライチ』の第1作である為、
後世にて幾つも作られて、今やメジャーとなった漫画版準拠の舞台版との差別化の為である。

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