[漫画]夢の園


ゆめのその / Yume no sono
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1983年漫画総合点38位109作品中
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作品紹介(あらすじ)

父親、兄弟…。それぞれの関係の中での愛憎。名作「カルフォルニア物語」のヒースの少年時代を描いた、感動の好編。
著者:吉田秋生
出版社:小学館
日本 開始日:1983/03/18(金)
公式サイト
1. 夢の園 1 | 小学館
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最終変更日:2018/11/14 / 最終変更者:caster / 提案者:caster (更新履歴)
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2018/11/27 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:41(57%) 普通:18(25%) 悪い:13(18%)] / プロバイダ: 14869 ホスト:15235 ブラウザ: 8317
随分前に読んだ気がしたけど、評価の際に再読
ああ、吉田秋生は変わっていないなあと実感、吉田秋生の原点を見たような気がした
表題の『夢の園』は内気で繊細な弟を見守るしっかり者の兄の話で兄弟の絆を描いた作品



『バナナフィッシュ』で英二を評して、「他人のかすかなSOSを嗅ぎ取る力がある」と描いていたが
この人の作品は、強い者が弱い者へ手を差し伸べる話が多い
『街道dairy』で長女の幸は腹違いの妹すずの境遇を知って無理を押して引き取り、
英二は危険だと知りながらアッシュに最後まで寄り添った
ではこの人自身、繊細で博愛的な人かと言えばそうはみえず、
どっしりと大地に根を張った大木のような精神の人で、
この間鬼籍に入られた樹木希林さんを思い起こさせるような豪胆で鋭さのある作家でもある。
通常の人なら投げ出してしまうダメ亭主を突き放しながらも最期まで見守り、面倒をなにくれと見ながら、
「惚れてるのよ」と一言で済まし、壮絶な夫婦喧嘩も洒落と笑い話にして、
飄々と生きたロックで恰好の良い人生哲学を持った人だったが、
その辺のハードボイルド顔負けの「強さ」と「優しさ」に同じものを感じる


『夢の園』の兄も弟を完全に理解しているわけではない
しかし、どこかううすぼんやりと弟が苦しんでいることを感じ取っており、そばに居てさりげなく手を差し伸べようとする
吉田秋生が描く人物のスタンスは「理解する」ではなく、常に「傍に寄り添う」「見守る」であり、
支えようとするが決して見返りは求めない、
見返りの愛情は全く必要ないのだ、彼女の描く男も女も真の「強者」だからだ
でも理解していないわけではない
ラストに弟のいるところは「夢の園」であり、自分のいる陽の当たる所にいつかは来てほしいと締めくくっている
弟がいる場所が「夢の園」だとちゃんと感じ取っている
家族の絆を描くのが上手い作家の原点を見ることが出来る作品



『解放の呪文』も兄弟の話だが、テニスチャンピオンの兄が後から追いかけてくる弟に王座を奪われまいとする話
弟の天与の才を認めながらチャンピオンとして意地を張り続けるが、
同時に可愛がっていた弟への愛情とチャンピオンとしての意地で板挟みになる


問題の説得シーンだが、最も重要な部分だけを大胆に切り取って見せるという吉田秋生の持ち味が出ているように思う
この場面で会話している弟ファーンの心の動きはあまりクローズアップされていない
焦って言葉を並べるダグの心の動きは会話中心で示される
しかし、説得シーンの最後にカメラを引いて、部屋に張ってあるダグのポスターを見せることで、
暗闇に生きていたファーンにとってダグは先に見える希望の光だったことがはっきりわかる
ファーンにとってダグとはどういう存在かだけを強く印象付けようとしている演出

つまり2人の関係性に注目して、演出ではそれ以外の枝葉末節を大胆に切り捨て、
ストーリーのキモである兄弟の絆をわずかなページを使って強調している
いかにも伝えたいことがはっきりしている人のショットらしく、映画的
映画監督で言えば、クリント・イーストウッドにも似ている

ただ豪胆だが粗い
漫画家で言えば、浦沢直樹も映画的なコマ運びが多い印象で、
特に『MONSTER』の廃屋に侵入するシーンで、映画顔負けの演出をしていたことが思い起こされる
同じく映画的とは言え、浦沢直樹の方が緻密で華麗な、流れるようなコマ運びの演出テクニックを持っている
吉田秋生の手法は、表現したい対象を鉈で切り取るように大胆だが、細かなニュアンスを伝えるに向いているとは思えない
大胆に対象を切り取ることで、メッセージは力強くなるが、同時に手の隙間から零れ落ちるものが多くなるからだ
『解放の呪文』が成功しているのは、ダグとファーンの関係性に焦点が絞られており、
シンプルな筋書、力強い兄弟の絆の物語だからこの手法が引き立ったのだろう
吉田秋生の長編がそこそこ面白くても他の作品に目が行ってしまうのは、
長編になると複雑なプロットが災いして、この豪胆さが逆に粗さとして目立ってしまうからではないかと思う



ただ家族や姉妹、兄弟の関係性を描いたシンプルなストーリーの作品は昔から得意で持ち味を発揮する
『バナナフィッシュ』でも英二とアッシュの関係性に最後は焦点が当たってしまっていた
この人の描きたいのは、ありがちな「愛」でも「サスペンス」でもなく
結局は人と人の深い「絆」なんじゃないかなあと思う
やっぱり『街道diary』で、家族と家族の関係性を描く物語に原点回帰したのは良かったんじゃなかったかなと改めて思わされた
吉田秋生の作家性を考察するに、読み直して良かったと思わされた作品だった


まあ、コマ分析についてはこれ以上は自分には難しい
どちらかと言えばラフな画でアクションもあまり上手いとは言えないし…
テニスの試合シーンもコマの大きさとか構図とかが単調というか、アクションシーンの空間の使い方が下手なのか…
どうなんだろう?漫画の空間の使い方は映画と違う(コマの大きさを変えられる)ので、
読んでいる量が少ない自分には問題点が把握しづらい
コマの中の時間を一時的に止めて見せるけれん、はったりはアクション映画におけるスロー、ストップモーションと同じで漫画でも使われるのだけど
使い方が上手い人とそうでない人に分かれ、彼女はあまり上手いようには見えない

漫画のコマ分析については評論家の夏目房之介が何冊か執筆されているので、お好きな方は読まれていると思う
自分は1冊しか読んでいないので、分析ができないのが残念
漫画を読んだ量も少ないので結局は映画で例えているしw



余談
・『解放の呪文』は『リバー・ランズ・スルー・イット』を撮ったロバート・レッドフォードがいかにも好きそうだなという印象
でもレッドフォードが撮ったら弟目線に変更されそうだなあ

・『解放の呪文』のラストで母親が夫に「あなたトイレは済ませたの?」と声を掛けるのだけど
この短い一言で妙に「家族らしさ」「生活感」が出ているよなあと感心した
キャラを身近に感じたセリフと演出だった

・ラストシーンは風景描写の大ゴマにモノローグが入って終わるのだけど、
ここで主人公の葛藤描写中心の閉じられていた世界が、葛藤を終えて空間(世界)が大きく開いていく感覚を演出している
これって吉田秋生だけでない演出だけど、昔の漫画にはなかった高度な心理演出手法のような…

2018/11/16 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:154(49%) 普通:125(40%) 悪い:35(11%)] / プロバイダ: 27435 ホスト:27656 ブラウザ: 8276
バナナフィッシュもアニメ化されて、若い人にも吉田秋生という存在が、再び知られる機会が
きたんじゃないかなあ、ということで、その紹介がてら・・・

吉田秋生さんで、一番売れた代表作といえば、確かにバナナフィッシュでしょう
この後も、しばらく、「YASHA-夜叉-」であったり、「イヴの眠り」であったり、アクションぽい路線を
描き続けるんですが、私個人の感覚すると、それは、本来の吉田秋生の資質からすると、ちょっと
違うんじゃないかなあ、と思い続けていました。

この人は、いわゆる漫画的ハッタリをかませなくても、そのストーリー構成だけで
十分面白い漫画が描ける人だからです。
その代表作ともいえる作品が、この短編集に収められている「解放の呪文」です。

あらすじ書いてしまうとネタバレになるので、書きませんが・・・

義兄ダグが、義弟ファンにプロ転向をやめるように説得するシーン
そして、なぜ自分がプロになろうと思ったか、をファンがダグに説明するシーン

これが、恐ろしく上手い。
コマ運びも含めて、簡潔に、そしてインパクトある表現に仕立てあげている。
いやぁ、ストーリー構成とカメラワークに気をつければ、短編でも
ちゃんとこういう表現できるんだなあ、恐れ入ったシーンでした。

ただ、この短編集は「解放の呪文」以外は「カリフォルニア物語」の前日譚です。
その部分は、やっぱり「カリフォルニア物語」を読んで頂かないとわからないと思いますので
吉田秋生初心者に、いきなりこれから読むのは向いてない本なんですが
まあ、なにかのおりに読んで頂ければなあ、という一冊です。
評価は「とても良い」で。

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