[漫画]式の前日: 2013/07/15 みゆきちいいいいい


しきのぜんじつ / The Wedding Eve
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「式の前日」という作品名でググるとAmazonの書誌販売ページの次に「絶賛の嵐!!」という仰々しい宣伝文句を謳ったページがヒットし、(7/15現在)
近くの大型書店には同じくらい大層なPOPが飾り付けられていて、「そこまで奨めんなら買ってやろう」と半ばその挑発に乗るような形で購入。
あそこまでの押し売りがなければ目にも留まっていなかった地味作品とはいえ、肝心の内容自体はそこまでハードルをあげずに気楽に読んだ方が楽しめるはず。

※ここからはネタバレありで。オススメしたい作品ですがオチを知っていると面白さが5割くらい目減りするので、未読の方はご注意ください。

●式の前日
表題にもなっている作品。この話をいきなり先頭バッターで起用する構成手法は見事。
ラストに二人の関係性が判明したときは思わず唸ってしまった。
思いっきり先入観に捉われたまま話を読み進めていたが、オチがわかったときはこういう視点から描くのかと新鮮な驚きが湧きあがった。
最後まで読み終えた後にもう一度最初から読み返してみるとまた違った味を楽しめる。
今までの彼らの一つ一つの仕草の本音が見えてきて同じ話なのに別作品を読んでいるような錯覚を味わえた。一粒で二度美味しい。

●あずさ2号で再会
先述の作品とは違いこちらはファンタジー色が強いちょっと不思議系。
「式の前日」と同様、話の中に一風変わったクセを利かせようとする作者の個性みたいなものをここで感じ取れるようになった。
第2話目という事で耐性がついてしまったのかオチに関しての驚きは初めの話ほどはなかったが、
7歳の娘と父親のおよそ親子らしからぬ会話と目くばせがまるで未練を残したまま別れてしまった恋人同士のそれに似ていて、
あの年代の女の子が潜在的に父親を異性として意識し始めるおままごとな恋心が何だかリアルだった。

●モノクロ兄弟
初恋の人の葬儀の帰り道、過去のわだかまりのせいで長らく疎遠になっていた壮年の双子兄弟が
亡くなった女性の若いころによく似た店員が働く居酒屋で彼女の働く姿を肴に思い出話に花を咲かす。
喪服姿で酒を酌み交わす彼らの姿はまさにタイトル通りのモノクロ兄弟だが、白と黒のコントラストである「モノクロ」には光と影という比喩も込められているのだろう。
お互いがお互いを光だと嫉み自分をその影だと卑下していた兄弟のやるせない悲哀がそこまで重苦しくなく描かれていた。

●夢見るかかし
「式の前日」と似たような話。「式の前日」の場合はそのオチが肝であるためきょうだいの“それまで"というバックボーンを深く掘り下げることは出来なかったが、
この話では天涯孤独の身となった兄妹がどんな風にお互いを支えとして生きてきたかという半生を主に兄の目線に沿って描いている。
これもほんのりファンタジー。

●10月の箱庭
つるの恩返しとかに見られる古典的パターンの話ですね。
殺された少女に乗り移ったのかと思いきや、ただたまたま通りかかった彼女の体を借りていただけというのはまだ救いがある。

●それから
「式の前日」後日談。
それぞれが独立した短編集となっているこの作品の中で唯一続き物として描かれていることから、「式の前日」の評判がよかったんだなあと勝手に推測。
今度は猫の視点から見た世界を映したもので、この方はカラスとかかかしとか物言わぬ何かに語らせる切り口が好きらしい。

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各エピソードのおおまかな感想を短く書き連ねましたが、文量や語調からもわかるようにどこがピークかといえば第1話の「式の前日」。
むしろこの本の良さの8割くらいはこれに占められているといってもいいくらいで、後の話は「式の前日」を単行本化するためのセット商品のようなもの。
おもちゃのびっくり箱と似ていて反芻することでその味わいは色褪せてしまいそうな代物だが、それでも「式の前日」に一読の価値は見いだせたのであの宣伝広告にもそこまで恨めしい気持ちは持たない。
新人漫画家さんらしいのでこれからが楽しみな方でしょう。作品のパターンがちょっと一辺倒かなと感じることがあったので、
「もう騙されないぞ」と身構える読者の脇をするりと抜けるようなトリッキーな作風をもっと磨いて、見ている者の予想を良い意味でバシバシ裏切るような作品を期待しています。



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