[日本映画]異人たちとの夏: 2019/08/03 霧の童話


いじんたちとのなつ / Ijintachi tono natu
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2019/08/03 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:760(51%) 普通:415(28%) 悪い:314(21%)] / プロバイダ: 20108 ホスト:20112 ブラウザ: 4721
山田太一氏の同名小説を大林宣彦監督が情感たっぷりに映像化した「怪談テイストの人間ドラマ」という割と稀有なジャンルに属する映画で、本作での演技力を絶賛された片岡鶴太郎氏が「お笑い芸人」から「俳優業」へ本格的に移行する切っ掛けと成った作品としても知られてますね。
大昔にテレビ放送された際、主人公と「幽霊」と化した両親との親子愛にボロ泣きさせられた記憶が有り、長いコト自分の中では「最高 ! 」レベルに位置付けていたタイトルなんですが、ウン十年振りに目を通した現在の感覚でも其の価値は不変か否か…取り敢えず評価と参りましょう。

本作の中軸を担う主人公一家が繰り広げる「親子愛」パートに関しては、導入部の「廃地下鉄ロケハン」こそ少々強引に映るものの概ね「完璧」とも言える仕上がりで、取り分け飄々とした口調で「あの世」から息子・英雄の成長を見守り続けていた事を語る父親・英吉のさり気ない父性像や、思いのほかガサツな佇まいが却って「抗う事の出来ない母性」を実感させてくれる母親・房子の包容力、そんな両親と死に別れてしまった事に因り厭でも自立せざるを得なかった英雄が必死に取り戻そうとする「28年分の家族の団欒」などを観ていると、此の「現実逃避の時間」が長続きする事を願わずにはいられない心境にさせられちゃうンですわ。
英吉と楽しむ路地裏キャッチボールや、ふとした瞬間に房子へ「女」を感じドギマギするくだりなど、英雄が両親それぞれに対して見せるリアクションの差にも「息子」としての心情が窺え、矢張り幾つに成っても「子供」は「親」に敵わないンだなあ…と思わせるのが好ましかったです。

然しながら「両親からの2度目の一人立ち」をテーマに掲げる作劇上「夢の終わり」が告げられるのも必然的であり、其れを描いたスキ焼店での「最後の晩餐」が切ねーのなんの。店の女将相手に「コイツ(英雄)と俺ら、どんな関係に見える ? 」などと悪戯心を含んで訊ねる英吉の台詞からは、「他人を茶化さなきゃ息子と別れる悲しさを誤魔化せない」とでも言いたげな遣り切れなさが伝わってきて、実に涙腺を刺激させてくれるンですわ。
両親の消滅後、手付かずのスキ焼きを前にして「結局ひと口も食べなかったじゃないか…」と涙混じりに悪態を吐く英雄にも感情移入されられましたね。

ラスト間際に於ける英雄と其の息子・重樹との「距離感の有る父子関係」も英吉 & 房子と対比の構図に成っており、「決して円満じゃないけれど互いに毛嫌いしてる訳でもない」という匙加減が味わい深かったです。
そもそも重樹が本当に親父を嫌ってるなら見舞い自体行かないだろうし、「祖父母」たる英吉 & 房子の写真にも興味を示さないだろうし。一見、醒めているように思えて其の実しっかりと繋がっている「親子の絆」を、僅かな尺で過不足無く描き切った名シーンだったとは思いますね。

さて、もう一つの「異人との物語」であるマンション住人・藤野桂と英雄とが繰り広げる「恋愛模様」に関しては、ぶっちゃけ今回再鑑賞するまで存在自体「完全に」ド忘れしてました。いや、「同じ孤独を抱えた者同士がシンパシーを寄せ合う事で互いの心の穴を埋めていく」という狙い自体は理解出来るンですが、『異人たちとの夏』=「親子のドラマ」と捉えている自分に取っては正直、邪魔っけに映る訳で…。
そもそも「シャンパン片手に面識の無い隣人の部屋へと押し掛ける美女」ってシチュ、当時ならば「トレンディドラマ的」と擁護可能なのかも知れませんが、何かと物騒な現在の感覚からしてみればヤバイ事この上無く、英雄の冷淡なリアクションも至極当然だったと言えるでしょう。
まあ、あたくしが桂を演じた名取裕子さん自体に魅力を全く感じないという個人的嗜好も影響してるンでしょうけど( 汗 )、其れを抜きにしても劇中で幾度と無く挿入される桂の「濡れ場」は鬱陶しいだけでしたね。此の辺り、「線香花火を見つめているだけ」という何気ない仕草ながら、ほんのりとしたエロスすら漂わせている房子(つか、寧ろ秋吉久美子さんの魅力 ? )とは雲泥の差ですわ。

…とは言え脚本を手掛けた故・市川森一氏にしてみれば、寧ろ「桂」パートにこそウェイトを置いて書いていたような節が有るンじゃあ無いでしょうかね。
そもそも何ゆえ山田太一氏が自分で脚本を書かず、予てより「ホームドラマ嫌い」「家族愛嫌い」を公言していた市川氏へ委ねたのか不可解だったンですが、「家族との絆を体よく利用して男を手に入れようとする女の妄執」に市川氏が惹かれたと仮定すると、諸々の疑問にも合点がいくンですわ。英吉 & 房子の性格を鑑みれば、自分達と接触する度に老化していく英雄を放置する筈が無いでしょうしね。

意図するものこそ理解出来る反面、「親子の物語」として本作を味わっていた自分からすれば「桂」パートが減点材料と化してしまった感は否めず、評価的には「とても良い」と相成りました。ジムで筋トレに励んでいる間宮プロデューサーの「誰得」なセクシー描写( 笑 )や、ド阿呆タレントの学の無さにイラつかされるホン読みシーンなど、展開上「それって必要か ? 」と突っ込みたく成る演出も幾つか見受けられるのが残念です。
とは言え、何かと大林作品へ辛口評価を下すケースが多い自分にとって、『可愛い悪魔』と並ぶ「傑作」である事には変わり無いですがね。

幽霊が怖くて堪らないという方でも、其れが自分の肉親ならば寧ろ無性に逢いたく成るのでは…そんな気持ちを抱かせる逸品です。



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