[小説]夜のピクニック


よるのぴくにっく / Yoru no pikunikku
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文学総合点=平均点x評価数66位4,633作品中総合点30 / 偏差値78.34
文学平均点41位268作品中平均点2.00=とても良い/15評価
2004年文学総合点6位181作品中
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作品紹介(あらすじ)

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。 (文庫版裏表紙より)
著者:恩田陸
出版社:新潮社
単行本 2004年7月31日発行
文庫版 2006年9月7日発行
日本 開始日:2004/07/31(土)
公式サイト
1. http://www.shinchosha.co.jp/book/397105/
2. http://www.shinchosha.co.jp/book/123417/
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2015/01/31 普通(+0 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:3110(33%) 普通:3253(35%) 悪い:3047(32%)] / プロバイダ: 3970 ホスト:3880 ブラウザ: 7860
作者は「悪夢ちゃん」の原案者でもあったけど、水戸一高の歩く会をモデルとした、
青春小説でしたね。

昔だったら母親は違っていたから結婚する事も出来たのですが、異母兄妹だった
融と貴子が同じ歩行祭のある高校で、同じクラスメートで顔を合わせたのはまあ偶然
にしても出来すぎた「悪戯」でしたね。お互い双方に対する複雑な葛藤は丁寧に
描かれていて、歩行祭も元ネタよりさらに距離が10キロ長く設定されていたのも
作者なりの脚色のつもりだったのでしょう。終盤では融は足が爆発しかかっていて、
学校の行事としては過酷な様子も伺えましたが、だからこそ他の行事では得られない
格別な達成感もあったのでしょう。

融×貴子の歩み寄りとの相乗効果というやつだったのでしょうが、周りの面々もでしたね。
帰国子女だった杏奈と順弥の榊姉弟も、後者が前者を怒らせてしまう(実はそれも計算の
一つだったのではなフシも描かれていたが)等それまでマトモに言葉すら交わさなかった
融×貴子との対比付けなんかもそういう所が表れていたエピソードだったのでしょうが、
歩行祭に正式参加していた融×貴子とその他生徒達を一足以上離れた所から見届ける
第三者的存在としてシナリオにアクセントを効かせていた感じでしたね。特に順弥は、
終盤彼からの視点で話を締めてましたが、少なくとも2年連続飛び入り参加していた彼、
雰囲気は外国人に近いものがあったようですが、将来の在校生としての正式参加も
いくらか暗示させられたようでしたね。

ただ、ちょっと「?」と思った点も目立って、融の友人・忍の中盤の「その時はうざったい
雑音だと思っていても、後になってそれが大事な事だった事に気づかない事だってある。
お前(融のこと)はそういう風になってくれるな。」というような弁でしたね。確かに彼なり
の友情も伝わったし、彼は作者の「思想的分身」だったのでしょうが、融よりやや年長の
近親者(従兄弟とか)とかが言うならともかく、高校生にしては「歳不相応に悟ったかの
ような物言い」だったのは不自然にも感じられました。それとも、本編では描かれなかっ
ただけで、彼はもっと色々揉まれたりもしたのか・・・・・・・また美和子も、亮子と
いうお邪魔虫もかわして(これは光一郎の貢献度も高かったけど)融×貴子を一緒にさせる
等貢献度も高かったけど、清隆との恋のくだりでしたね。それは彼女に言わせれば
「お互い釣り合っていた自分に満足していただけの、恋に恋していた本物じゃなかった
恋」との事だったようですが、それは「経験者にこそ分かる『高い理想』」だったという
事ですか。高校時代までにそれが出来ない事に悔しがってもいたようで、実際そうも
突っ込まれていたけど、確かに「贅沢な悩み」だったでしょう。

いくつかの文学賞を受賞したのも、何かそういう、「大人に近いけど、まだなりきれては
いない高校生達の『ちょっと背伸びをした青春』」が角度も変えていたから読者のハート
を見事掴んだ・・・・・・という事だったのですかな?そもそも前述した通り元ネタ
よりもさらに距離が長かった歩行祭自体がそうした「背伸び」でしたからね。
結局は杏奈の意のままに動いていた順弥の飛び入り参加だってそうだったでしょう。
凡作の類では決してなかったのは分かるし、別に「子供は子供らしくしろ」なんて野暮な
説教もするつもりなんてないですが、まあややクサい所もあり、手放しで賛同できた・・・・
というほどでもなかったです。映画版も安易に人気芸能人を起用しなかったという等の
点では悪い印象はありませんでしたが、評価はまあ「良い」寄りの「普通」で。

2013/06/11 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:362(78%) 普通:43(9%) 悪い:60(13%)] / プロバイダ: 2161 ホスト:2179 ブラウザ: 4179
【良い点】
●今作の軸となる高校最後の行事『歩行祭』の辛さと達成感は充分すぎるほど表現できていたと思います。
●登場人物の感情の機微は充分すぎるほど濃厚に描かれていたのは良かったですね。個性付けも多彩で嫌らしくなく、一見うるさいキャラをしている人物も、物語の中ではちゃっかりいい味を出しています。
●一般的な高校生としては独特の関係性にある主人公の融と貴子の描写も、その細かな感情表現のおかげもあって、なかなか面白いものに仕上がっていたと思います。
●地の文体も読みやすく、登場人物の会話も全体的にテンポ良く読み進めることができました。

【悪い点】
●登場人物が皆やたらと思慮深く、とても高校生とは思えなかった。また、個性の出し方も地の文による説明に頼りすぎで、会話や行動による個性の創出が少々疎かになってしまっていたのも残念。
●ページ数のわりにこれといって“劇的なドラマ"というものがなく、物語全体の起伏はかなりなだらか。本格的に話が進み出すのが終盤に入ってからなので、中盤までが結構退屈に感じられました。
●歩行祭の表現も、皆の体力的・精神的な変容の描写が多く、風景描写も良かったが比率的には少なめでちょっと埋もれていました感があります。

【総合評価】
恩田陸著。修学旅行の代わりとして存在する高校最後の行事『歩行祭』と、その中で繰り広げられる、とある男女の物語。本屋大賞を受賞しており、今でも何かしらの人気ランキングに食い込むなど、なかなか根強い人気のある作品。

感情描写が非常に細かいのが今作の特徴でしょうか。歩行祭に対する苦しさなどの部分はもちろん、様々な相手に対する感情の機微が濃密に書かれていたのが印象的でした。主人公2人の関係性はすこし特殊ですが、その感情はなかなか地に足のついたものになっていたと思います。直感的な予想が当たってたり外れてたり……といった描写もなんだかリアルでいい。

ただストーリーラインそのものをみると少々起伏に欠け、ドラマ性が薄いのが難点ですね。それぞれの登場人物もやたら思慮深く、良い子すぎるがために高校生らしさが感じられないのも気になりました。人物の個性の表現も、会話ではなく地の文による説明によるものが多かったのも残念。

とまぁ不満は少なくないものの、独特のストーリー設定を細かな感情描写によって彩った、独特の面白さのある作品だと思います。
評価は『良い』で。

2010/05/02 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:431(69%) 普通:102(16%) 悪い:91(15%)] / プロバイダ: 25955 ホスト:25738 ブラウザ: 7336
爽やかな文体の割に内容は複雑な作品。恋愛絡みの会話、登場人物の進路希望…辺りが高校生活のノリを彷彿とさせます。
こんな日常性の中にあるからこそ、クラスメイトが腹違いの兄弟だという設定の非日常性がくっきりするのでしょう。
隠していても何となく周りに伝わってしまう気まずさの描写が秀逸です。
それ以外にも思春期特有の人間関係が沢山描かれており、人付き合いの多様性を感じました。
幾ら何でも、そんなに多くない登場人物があちこちで繋がりすぎだろという気もしますが…
この辺の世間の狭さは漫画的な面白さかもしれません。
ふっと引き込まれそうで幻想的な場面描写も魅力です。

しかし歩行祭で皆が疲れていく過程の描写はリアルですね…疲労を現す文章だけ追って読むのも楽しいかもしれません。

2009/11/04 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:494(44%) 普通:197(18%) 悪い:428(38%)] / プロバイダ: 7763 ホスト:7450 ブラウザ: 8718
ずいぶん前に読んだのですが、今でも鮮明に覚えています
個人的にはかなり好きな作品です

クラスメイトが実は兄弟って、、気まずいですよねー

2008/10/04 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:18(72%) 普通:7(28%) 悪い:0(0%)] / プロバイダ: 53791 ホスト:53859 ブラウザ: 5292
「高校時代ってやっぱり特別だったんだなぁ…」と、改めて感じさせてくれた小説です。精神的にとても多感な時期で、また“学校行事"が行われる最後の期間ですから…。歩行祭が始まり、時間の経過と共に登場人物(と私)の興奮も高まって行き、夜を迎えた時にそれは最高潮に。打算とか意地とかを考えずに、自分をさらけ出す姿を見て、懐かしさや羨ましさを感じずにはいられませんでした。融と貴子がようやく会話を交わした時はもう…涙腺がヤバかったです(笑)。ラストも綺麗に締めくくってくれました。
私も高校時代にこういうイベント、参加したかったなぁ〜。キツいだろうけど、絶対に忘れられない思い出になったでしょうし…。

2007/05/30 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:193(70%) 普通:41(15%) 悪い:42(15%)] / プロバイダ: 3700 ホスト:3813 ブラウザ: 5234
淡いですね。中学生高校生の時の淡い思い出がよみがえってくる作品でした。
好きなあの子に彼氏は居るのかな、とか悩んだりして。
あいつとあいつ付き合ってんちゃうの?とか噂したりして。
夜がなんとなく楽しい感じとか。
いつのまにか失ってしまったそういう幼く純粋な気持ちをよみがえらせてくれる作品でした。

高校生が高校生なりに悩んで行動する姿には素直に好感が持てましたね。
そういった心情がしっかりと描きこまれていて、それぞれの登場人物が生き生きとしていました。
そうそう、こういうヤツクラスにおったなー、って感じで。

こういうイベントって誰にでも経験が有ることだと思います。
それこそ、修学旅行とか、卒業旅行とか、マラソン大会とか、体育祭とか文化祭とか。
やってるときは特にだからどうって事のない出来事でも、しばらくたってみると、
そういった何気ないイベントが凄く大きな思い出になる、という不思議な感覚を上手く伝えられているな、と思いました。

ただ、一方でそういう描写を抜きにしてストーリーだけを見てみると、
大体先が読めてしまうというか、起伏が無いというか・・・・。
展開で驚かされるところが無かったように感じます。
ただ、普通の展開を先が気になるように見せる描写力は素晴らしいと思いますね。
まぁ、そんなことをしてしまうと共感がもてなくなってしまうのかもしれませんが、
ああ、懐かしいな、という感覚で終わってしまった印象はあります。

大学生くらいの時に読むと非常に懐かしい気持ちにさせられる作品です。

2007/03/31 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:1(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダ: 34156 ホスト:34136 ブラウザ: 4637(携帯)
ええと、私の母校です(笑)

本当は"歩く会"といって毎年違うコースを歩くんです。その代わりに修学旅行が無いのですが(泣)

下駄とかで歩く人もいて、面白かったなあ。
映画の方で校舎とか出ると興奮してしまいますね(笑)
最初「真夜中のピクニック」を本編だと勘違いして、あまりの薄さに訳が分からなかったという恥ずかしい思い出もあります。

余談ばっかりですね(汗)

懐かしい記憶を思い出させてくれたのと、この行事を広めてくれた感謝も込めて、最高の評価で。

2007/01/31 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:792(58%) 普通:431(31%) 悪い:147(11%)] / プロバイダ: 18384 ホスト:18446 ブラウザ: 6287
何というか、地に足がついた小説という印象を受けました。
実際問題としては、母親が娘の友達にあのような事を言うだろうかという疑問はあるものの、
登場人物である高校生たちにとても好感を覚え、後味も爽やかと感じました。
融には感情移入できましたが、忍のような友達がいることが羨ましく、
彼らのような高校生活を送りたかったです。
一番気にいったのは、わざわざアメリカからこの日のためにやってきた順弥ですね。
彼は姉の友人の様子を見に来たので、この学校の生徒ではありませんが、性格が前向きなところに憧れます。
また、夜になると元気が出る高見なども良い味を出していると感じました。

そして何よりも、学校行事である歩行祭というものに興味を覚えました。
私事ですが、昔ある大学を受験した時、そのようなものがあると知って是非参加したいと思ったことがあります
( 受験には失敗したので、勿論参加はできませんでした ) 。

途中でリタイヤしたくないという気持ちはよく理解できます。
個人的に好きな場面は、夜中に仮眠した後、午前4時 ? に再度出発するところですね。
無事に完歩できるかどうか、よしやるぞ ! という、彼らの思いが伝わってくるようでした。
「 行くわよ、貴子 」 「 あいよ 」
「 行くぜ、融 」 「 合点 」
テンポがイイですね。
風景描写なども心に残るものでした。

ただ、タイトルはどうなんでしょう。比喩的な意味合いもあるのかもしれませんが、
昼間も歩くのですから……ちょっと考えてしまいます。
しみじみと良い作品とは感じましたが、読んでいて 「 これは凄い ! 」 と声を大にして叫ぶほどとは思いませんでしたので、
「 とても良い 」 に近い 「 良い 」 とします。

2007/01/05 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:32(100%) 普通:0(0%) 悪い:0(0%)] / プロバイダ: 5594 ホスト:5330 ブラウザ: 6342
「本屋大賞」をとり、映画化されている本作。『図書室の海』で予告編を再読したのを機に読みました。
恩田さんは昔から学園ものをよく書きますが、これほど「普通の」学園ものって初めてじゃないでしょうか? 今まではどこかホラータッチだったりミステリっぽかったりしたけれど、このお話にはホラーもミステリも入り込む余地なし。あえて言うなら転校してしまった貴子の親友・杏奈からの葉書の言葉くらいですが、これもミステリと言うほどのものではないですし。
そういう意味では、これこそ恩田さん初の本格青春もの(何だろう、それって…)かもしれません。
で、ホラーもミステリも入り込む余地のないこのお話を読んでどうだったかというと、正直、最初は拍子抜けをしました。あまり面白く感じなかったのです。
なんかホントにだらだらと歩いて、あれこれうだうだしていて、でもそれにそんなに惹きつけられなくて。
でも中盤、お話が夜に差し掛かってから、断然面白くなりました。
疲労もピークに来て、日常こなしているポーカーフェイスも、気遣いも、計算も何もかもできなくなってくる頃。それでもどこか頭の一隅だけが冴えわたって、見ないようにしていたものが見えてしまう頃、考えないでいたことを考えてしまう頃。
この辺から、登場人物たちのやり取りの機微、思考の移ろいにぐっと引きこまれて、あっという間に読み終えてしまいました。

こういうの、やってみたかったなぁ…。
いや多分体力的にもたないだろうし、すっごく嫌そうだけど、それこそ高校生の時にやってみたかった。
そんなふうに思わせられるお話でした。

[推薦数:1] 2006/12/27 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:143(57%) 普通:47(19%) 悪い:60(24%)] / プロバイダ: 4492 ホスト:4434 ブラウザ: 6342
第2回本屋大賞受賞作にして、『六番目の小夜子』、『球形の季節』に続く高校三部作の三作目。

「みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。
どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね」

榊杏奈のこの台詞に、本作の全てが集約されていると言っても過言ではありません。
夜を徹して80kmを歩き通す、高校生活の一大イベント「歩行祭」。ミステリーの様に何か大きな事件が発生するでもなく、本当にただ歩き続けるだけ。しかし、高校生らしい他愛ない会話や将来への不安等、程度は違えど誰もが経験したであろう感情が丁寧に描写されており、あたかも自分自身が“歩行祭"に参加しているかの様な感覚に浸れました。・・・“学校行事"と“夜"がセットになる事によって醸し出す、独特の空気感もそれに拍車を掛けていたのかなと(笑)。
そしてストーリーの核に当たるのが、主人公の甲田貴子と西脇融の“複雑な"関係。融に憎まれていると考え、また今更変えようのない過去に囚われて彼と口も利けない現状に情けなさも感じている貴子。貴子を恥だと思い、徹底的に彼女を避けて来たが、実はそんな自分の頑さこそが恥ずべき事だと気付いている融。こんな二人が、親友の忍や美和子に後押しされながらも一歩を踏み出すのですが、特筆すべきは彼らの今後に想いを馳せずにはいられない余韻でしょう。二人のわだかまりが完全に氷解したのでは勿論ありません。それでも、漸く築けた新しい関係から少しずつでも前に進んで欲しい・・・と思わされるハッピーエンド。恩田作品は何とも言えない不思議な余韻を残す事が多いのですが、本作は実に爽やかに読了する事が出来ました。
現役の高校生が読むよりも、既にその時代を通り過ぎた人が読む方が感情移入の度合いは高いのではないかと。いつか、再読してみたい作品の一つです。
余談ですが、この“歩行祭"はある高校(恩田陸の母校)の行事として実在していたのですね。読み終えてから随分経って初めて知りました。・・・歩いている最中は肉体的にも精神的にも厳しくてそれどころではないでしょうが、掛け替えのない思い出となるであろう、この行事に参加出来た人を羨ましく思います。

2006/11/26 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:37(90%) 普通:3(7%) 悪い:1(2%)] / プロバイダ: 551 ホスト:292 ブラウザ: 5234
歩行祭という、学校行事の1日を描いた青春小説。

メインのストーリーは、主人公の甲田貴子が、同じクラスで異母兄弟である西脇融との確執をどのように解決させるかと言うものですが、
物語のテーマは、貴子が、高校生活の事、これからの事、他愛の無い事等を友達と語り合い、自分自身を見つめ直すと言うものだと思います。
こういうテーマは私の大好きな分野なので、楽しめました。
高校生らしい青臭さが漂う会話等は、臭過ぎだろって感じるところもありましたが、よく出来てる方だと思いました。
ただ、キャラクターに関して難を言えば、少々登場してきた時の設定に頼りすぎかな・・っと感じました・・。
出てきた時に、この子は美人で何でも出来て〜とか説明されるのですが、どうもその後、そのキャラの動きを設定と照らし合わせてもピンとこないんです。
つまりは余り、キャラごとの個性が出ていなかったと言う事です。
今時ベイベーは無いだろ・・・。
ストーリー構成は気に入ったし、ラストの方の盛り上げ方は素晴らしかったので、そこだけは残念でなりません。

2006/11/24 悪い(-1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:80(67%) 普通:19(16%) 悪い:20(17%)] / プロバイダ: 35543 ホスト:35584 ブラウザ: 8374
主要キャラが大人しすぎ。
まだ高校生なんだから、いくらなんでもここまで思慮深くしすぎなくてもと思う。
思ったことを、素直に言葉に表さないでどうするんだよって感じ。
こういうもどかしさがいいのかもしれないが自分としては受け入れられませんでした。
とにかく、融にイライラしっぱなし。
不器用だけれど素直に自分の思ってることを口に出す。
その結果、相手を怒らしたり喧嘩になったりする。
そういう若者っぽいシーンが見られなかったのは残念。
腹の探りあいもいいですけど、やっぱり高校生らしさをだすことも必要だった。
展開にあまり起伏が見られなかったのも痛い。歩くだけじゃなく、何かもっとわくわくしたり
ハラハラしたりするシーンがほしかった。謎の少年とか小粒なのはあったんだが。
ページ数の割りにたいした出来事がないんで正直だれました。

いいところ(背景描写や雰囲気作り)ももちろんあったが、
作品が自分好みじゃなかったということで評価は悪いにします。

2006/11/18 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:83(72%) 普通:5(4%) 悪い:27(23%)] / プロバイダ: 30606 ホスト:30431 ブラウザ: 3846
話題作、そして第二回本屋大賞受賞作。
解説でも池上冬樹氏が述べておられるように、
小川洋子「博士の愛した数式」同様、「新作にしてすでに名作」と呼ぶべき作品の一つです。
「リアル鬼ごっこ」を筆頭に話題作といいながらもぱっとしない、あるいは良くない作品が結構ある中で
評判と出来具合がきっちりとマッチした作品に仕上がっておりました。

描かれているのは、とある高校の歩行祭。
丸一日掛けて80kmを練り歩くと言う、珍しいかと言えば珍しいけど、
全くないかと言われれば、どこの県にも一校や二校はありそうな伝統行事を持つ学校、
そして、その行事そのものがが舞台。
大人の階段を今まさに上ろうとしている若者達の姿が生き生きと描かれています。

様々なキャラクターが登場しますが、主人公に該当するのは「きょうだい」である西脇融と甲田貴子の二名。
クラスメイトであると同時に何とも不思議な関係を持つ二人の間には何とも言えない空気が漂っていて
クラス替えから一度もまともに接する事なくこの行事を迎えます。
そして、そこで起こる奇妙な出来事、クラスメイト達の馬鹿騒ぎ、恋愛模様、追いかけてくるバスetc....
疲れて糖分欠乏になりながら難しい本を読んでいるときの脳内くらいごちゃごちゃになるパズルのピース。
それが、昨年までいたある人物を中心に、銀河のような渦巻きを作ります。
そこに生まれたのは秩序というよりも感情の輪転。
一度流れ出した水は止まる事を知らず、あっという間の二日間は大会へと注ぎ出てしまうのです。
残るのは爽快感と一種の喪失感。
「あぁ〜、最後の体育祭が終わってしまった・・・・」とかのあれです。
あれを読者が感じる事ができるんです。ちょっと若くなった気分になれるんです。
そのくらい、いい意味で非常に青臭い小説でした。
僕が青臭い小説好きというのを差し引いても、十分満足できる出来だったと思います。

この「きょうだい」というのがこの作品のキーワードになっておりますので、
気になる方はぜひとも手に取って読んでください。

気になるのは上記二人以外のキャラクター設定。
漫画の学校ストーリー読んでるみたいです。
別に特殊能力持ってる奴が出てくるわけではありませんが、
美男美女という表現がしつこすぎる位出てきてるし(苦笑)
そういう意味では「六番目の小夜子」ほどではないものの
「もうちょっと現実味を帯びさせた方がいいんじゃないの?」とにやにやしながらつぶやきたくなります。
あと、結構頻繁に視点の変わる二視点型作品ですので
ぼやぼやしていると置いてけぼり食らっちゃいますんで注意。

しかし、たかがそれだけの事で覆るほど低い点数で評価はしておりません。
手に取る前の期待、読んでいる最中の興奮、読後の爽快感と寂寥感、
内容、構成、どれをとってみても相当アドバンテージを稼いでいます。
基準評価は「とても良い」、総合評価はアド加算で「最高!」といたします。

個人的には第1回、第2回と連続で大当たりの続いた「本屋大賞作品」
第3回の受賞作「東京タワー」もこんな感じの大当たりなのでしょうか。

2006/10/29 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:160(56%) 普通:36(13%) 悪い:88(31%)] / プロバイダ: 37856 ホスト:37921 ブラウザ: 7321
「図書室の海」に収録されてた、予告編の「ピクニックの準備」を読んで気になってたんでこっちも読んでみたけど、見事に大当たりだったな。
「歩行祭」っつーのが舞台設定で、本当にひたすら歩き続けるだけのストーリーなんだけど、いつの間にか登場人物にシンクロしてしまってた。
この人の作品を読む度に思うけど、その場その場の空気の機微が抜群に上手いんだよな。だから、自分も高校時代に戻った様な気にさせてくれる。
ミステリ要素はないこともないが薄味。それより、臨場感溢れる雰囲気を堪能しつつ、融や貴子の心境の揺れ動きを追えたんで十二分に満足できた。
紛れもない青春小説の傑作。今まで読んだ恩田陸作品の中で一番面白かった。・・・しっかし、こんな行事体験したら絶対に思い出に残るだろーなァ〜。

[推薦数:2] 2006/10/09 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/これだけ表示or共感コメント投稿/]
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吉川英治文学新人賞、本屋大賞受賞作。高校3部作の3作目でもあります。

只只管、24時間かけて80キロを歩きとおす、高校生活における行事――「歩行祭」を、瑞々しく、ドラマティックに、繊細に描ききった物語です。
校庭を出発して、まる一日歩いて、再び校庭に戻ってくる。それぞれの姿を追いかけ、感情や会話、情景その他諸々を綴っているだけの作品なのに、如何してか、物凄く引き込まれてしまいました。
イベント中に、事件が起こるわけではない。解明できない不思議があるわけでもない。出発したての高揚、徐々に溜まってゆく疲労、歩調にあわせて移ろう風景、暮れなずむ空の色、深まる夜に再び高まるテンション、限界を訴えはじめる身体。
ゆるやかに展開してゆく場面場面は、ゆるやかであるが故に、柔らかな憧憬を齎すよう。文章の妙もあるのでしょう、会話のひとつひとつ、高校生の眼差しが捉える世界、時折零れる回想、そのどれもが深々と、胸に響きわたりました。

勿論、恩田陸らしいスパイスも程よく効いていて、成る程巧いなあ、と、唸らされる事もしばしば。特に、「去年の歩行祭の写真に、誰も知らない、いる筈の無い誰かが写っている」と云うくだりが、秀逸。そこからの展開も含め、引き込みの強さに、してやられてしまいました。
そういえば、中高生の頃って、こんな風な不思議が意外と、身近なところに有ったような気がします。顧みなくなったのは何時からだろう、と、懐かしさとホンの僅か、寂しさを覚えてしまいました。

ただ少し引っかかるのが、本作、ひどくノスタルジックであると同時に、きれいなファンタジーであるようにもにも思えてしまうところ。どうして主要登場人物たちがこうも、美男美女ばかりなのか(笑)。他者の心理読み取りも、あまりにも深い部分にまで潜り過ぎていて、些か少女漫画のように見えてしまう部分もあったり。
それ故に、名前のみの登場に留まる、弁護士志望の少女の存在は、ぎゅっと場を引き締めて、妙にリアルで、鋭く光っていました。半径5メートル以内に日陰なし、等の微妙に怖い表現しかり、登場人物たちの、彼女に対する人物評しかり。写真と犯人探しに纏わる一連は、理知的で整然としていて、すこし感情的で、内面にすとんと落ちる感じがあります。ウエイトは多くはないし、あまり、気持ちの良い連なりではないのでしょうけれど、何故だか印象深いパーツだったりするのです。

誰かと誰かの複雑な繋がりをもどかしく思ったり、想う気持ちに目を眇めたり、嫉妬に胸を灼いたり、ここには居ない誰かに思いを馳せたり。切なくて甘酸っぱい、これ以上無い位に真っ当な青春小説なのですが、読んでいてむず痒くなる事が、殆どありませんでした。
気になるところが無いわけではない、「おまじない」の成立は、有りなんだろうか、等と、突っ込みを入れざるを得ない部分もありましたが、読後感の良さが、全てを上回りました。
焦らされて焦らされて終盤、彼らの会話が、物凄く嬉しい。溢れんばかりの希望が見えて、こちら側までどうしようもなく、幸せな気持ちになってしまう。
「何かの終わりは、いつだって何かの始まりなのだ」――ぴたりと嵌る台詞に、ああ良かったなあ、と、心の底から清清しくなれる、素敵な作品でした。

本作の前日譚にあたる「ピクニックの準備」が、短編集「図書室の海」に収録されています。歩行祭への高まり、期待が味わえると同時に、幾つか変化している部分も有り。あとさきに、読み比べてみることをお勧めします。
余談ですが、小説が素晴らしかっただけに、余計気になるのが映画だったりします。見に行きたいのですが、この感動を壊される可能性があるかも、と思うと、中々足が動きません。さて、どうしよう……。

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2017/09/06 好印象 by (表示スキップ) 投票履歴 / プロバイダ: 48457 ホスト:48321 ブラウザ: 4721 [編集・削除/これだけ表示]
感じた事友情/美しい/考えさせられた 
ストーリーとても良い(+2 pnt)
キャラ・設定とても良い(+2 pnt)

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