[小説]踊る一寸法師: 2019/11/08 霧の童話


おどるいっすんぼうし / Odoru Issunboushi
  • 道徳心&モラル
  • 怖い
  • 考えさせられた
  • びっくり
RSS
文学総合点=平均点x評価数1,718位4,523作品中総合点2 / 偏差値48.67
1926年文学総合点13位29作品中
  投稿の系統で絞込
この評価板内限定
2019/11/08 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:770(51%) 普通:426(28%) 悪い:318(21%)] / プロバイダ: 20219 ホスト:20066 ブラウザ: 7430
江戸川乱歩が、ペンネームの元ネタたるエドガー・アラン・ポーの残酷童話『跳び蛙(ちんば蛙)』にインスパイアされて執筆したと言われる短編「猟奇」小説で、それまで手掛けてきた一連の「怪奇小説」とはニュアンスが微妙に異なっている点が本作のミソかと。
周囲から虐げられ続けてきたフリークスが演じる一世一代の「復讐劇」と、その果てに待つ衝撃のエンディングが戦慄を伴って読者に襲い掛かります。

恐らくは公演千秋楽を祝ってサーカス団員達がテント内でドンチャン騒ぎを満喫する中、「小人症」という体躯ゆえ同僚達から「一寸法師」「豆蔵」と見下されていた三十路男の主人公・緑さんが、余興感覚で理不尽なイジメを受け続ける様を、語り部たる「私」の第三者視点に因り淡々と綴っていく…てな具合に、ぶっちゃけ基本プロットを書いてるだけでも不快感が沸いてくる内容で、しかも陰湿なイジメ描写に全体の7割ほどを費やしちゃってるモンだから、読んでいて自ずと鬱憤が溜まってくるンですわ。

然しながら不快さが支配する中、虐待されながらもひたすら愛想笑いを浮かべる緑さんに或る種の「ヤバさ」を感じ、目が離せなく成ったのも事実な訳で。
なンつーか「押してはいけない『スイッチ』が入った」というか、「自爆へのカウント・ダウンが始まった」というか…語り部の言う「不気味な前兆」が徐々に形を整えつつ、クライマックスの隠し芸「美人獄門の大魔術」で一気に爆ぜる様は一読の価値アリです。
其の果てに待ち受ける(乱歩作品には珍しい)一大カタストロフや、極めて猟奇的な緑さんの「変化踊」を以って幕を下ろすエピローグに至っては、あまりの凄惨さに言葉を失う程ですわ。確か本作って、未だに「映像化」の類は成されていなかったように記憶してるけれど、クライマックス以降の「地獄絵図」を鑑みれば其れも頷けます。「接吻」なのか「カニバリズム」なのか判然としないエピローグなんざ特に…(汗

ちょっと気に成ったのが、作中では一切言葉を交わさなかった語り部と緑さんとの関係ですね。宴席の狂乱振りを「実況中継」する役割から語り部も間違い無くサーカス団員なんでしょうけど、同僚達の乱痴気騒ぎを冷ややかに見据える一方で、緑さんへの暴行を制止する訳でも無い終始「傍観者」に徹した語り部に対し、緑さんが如何なる感情を抱いていたのか ? 其の胸中を考察してみるのも一興かと。

個人的に今まで読んできた乱歩作品の中で、単純な「怖さ」なら本作が突出しているように感じましたね。評価的には「とても良い」寄りの「良い」をば。
上述したように、何時の日か何かしらの形で「映像化」される事を願って止まない逸品です。



共感コメントは階位を持っている論客の方のみが投稿可能ですが、貴方は階位を持っていないか、ログイン状態ではありません。階位は評価を投稿等すると、1日1回の深夜の定期処理により付与されます。
この評価板に投稿する

この作品の全ての書込みを表示する
↑上へ