[小説]風博士: 2018/11/21 霧の童話


かぜはかせ / Kaze hakase
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2018/11/21 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/]
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短編ながらも坂口安吾の「作家」としての力量を世に知らしめる切っ掛けと成った、何とも形容し難い奇妙なテイストのナンセンス・コメディ…だよね ?
最初期の安吾の作風である、読者を煙に巻くかの如き「ファルス形式」に因って展開する為、読後は狸や狐に化かされたような感覚を味わいましたね。

主人公・風博士の助手を務める「僕」が語り部と成って、自殺したと目される風博士が遺した「遺書」を手掛かりに死の真相を紐解いていく…というのが概要の筈なんですが、のっけからクドいぐらいに師たる風博士の「偉大さ」をアピールする「僕」のハイテンション振りが奇異に感じられ、「此れはどういうスタンスで読み進めていけばいいの ? 」と些か戸惑ったのが正直なところです。まあ、此の辺りは軽い「ジャブ」に過ぎない訳ですが。

プロローグに輪を掛けて困惑したのが、本筋を担う風博士の遺書内容ですね。だってコレ、「遺書」とは名ばかりでライバルたる蛸博士への罵詈雑言に終始した単なる「恨み節」の羅列に他ならないンだもん。要約すると「お前の母ちゃんデ〜ベソ」っちゅー小学生レベルの中傷を、大仰な文言へと置き換えただけに過ぎないとゆーか…まあ学生時代の回想で自身を「黒髪明眸の美少年」と自画自賛する辺り、人間としての器が狭量過ぎるの何のw
加えて、オーディエンスに対し「聡明なること世界地図の如き」「賢明にして正大なること太平洋の如き」「明敏なること触鬚の如き」などと露骨に媚び諂って、己の味方に付けようと躍起に成る風博士に至っては「友達居なかったンだろうな…」といった具合に、彼のバックボーンまで透けて見える始末。そンなんだから奥さんにも逃げられる(当人は「蛸博士に寝取られた」と力説されてますがw)ンじゃね ?
個人的にツボだったのは、「家宅不法侵入」「窃盗罪」を犯してまで入手した蛸博士の「ヅラ」にスペアが存在する事を、風博士が全く想定してなかったトコですね。ちょっと考えりゃ気付く事を盛大に見落としてる辺り、風博士って何の「博士」なのか皆目見当が付きませんわw

ひとしきり風博士の滑稽さにツッコミを入れつつ楽しんでいたものの、結局のところ風博士の「死因」が判然とせずじまいだった事も響いて、一概に「ナンセンス作品」と括り切れぬ妙な後味の悪さが残りましたね。そもそも、語り部たる助手の目撃譚が胡散臭さ全開なので。
風博士の「最期」に立ち会ったのが助手のみである事や、博士の伴侶たる「十七歳の美少女」への称賛振りを鑑みると、自ずと真相が見えてくるような…。

単純なナンセンス小説と割り切って読むも良し、笑いの裏に隠された「真実」を考察するも良し…と、多面的な楽しみ方が可能な逸品です。



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