[アニメ]メイド イン アビス: 2017/12/04 E・カリング


MADE IN ABYSS
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[推薦数:3] 2017/12/04 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:110(76%) 普通:12(8%) 悪い:22(15%)] / プロバイダ: 16710 ホスト:16751 ブラウザ: 5171
アビスという卓越したフロンティアを創出した原作に、下手な劇場版を凌駕する作画を与えた絶品の冒険物作品。
深い奥行きを感じさせる構図と細かな表現にも行き届いた作画には、最初から只者ではない感が溢れていましたし、
最後までその期待に応えきってくれました。
この壮麗とまでいえる美術に魅入られて、美しく容赦のない世界に惹きこまれてゆきました。

久々の無鉄砲系主人公がかもし出す明朗快活な冒険物テイストに世界の冷徹さを忍ばせてあり、
あるときから堰を切ったようにそれが主人公達はおろか、観客にさえも無慈悲な牙を剥くようになる。
突きつけてくるのはさながら死の中にある生であり、ほんの僅かな不首尾でたちまち命を落とすことになるという魔境、
ここにあって人はあまりに小さく弱く、運命という言葉さえ人間の都合に過ぎない。
そんなアビスのいつ底を突くと見立てることもできない妖しき恐ろしさに、心を奪われます。

なぜなら観客にとっても深淵への興味は断ち切りがたく、この恐ろしさを受け入れても惜しくない見たい景色があるものだから、
未知のものに挑戦することは人間にのみ許された行為なのであり、
帰ってこれなかった者も数多い先人の業績と犠牲の積み重ねのその先に、今の我々があるのだから。
リコの危なっかしすぎる前向きさには、人を人たらしめているものの象徴をみるように思わせられます、
今のこの、先人が作ってくれた環境に依存して生きる者として、僕はリコの無鉄砲さを否定しきるすべを持ちません。
恐怖に慄くどころか、まだ見ぬものへの期待にあふれる顔つきが素敵すぎます。

この作品の魅力の度し難さは、終盤に探窟家の「成果て」ナナチが加わわってさらに加速します。
とりわけミーティの「眼」は忘れられません、あの眼で、穢れの無い眼でこのどうしようもないほどの異形がいとおしくなってくるのでした。
そして自らの限界を悟り、「宝物」に手を掛けなければならない哀しさに、何度観ても涙なくしては見られないのでした。
絶望が重なる果てになされる決断と、最期の、思いのたけの限りに注がれる愛情が途轍もなく美しく迫ってくるのです。

そしてひとしきり悲しみにくれたら、また力強く歩を進め始める、人間は進むのを止めることは出来ない、
だから世界は素晴らしい、生命が愛おしい、壮絶さの中にある魂の美しさ。
この作品は主人公たちの受ける試練が「リアル」で、その身の丈にはあまりにも不釣合いなほどなのが特異なのですが、
これはむき出しの手心を加えない脅威に照らすことで、それらが本来の輝きを放ち始める様を見せようとするためのように思えるのでした。

この「リアル」な試練のシーンによって、心して観る必要のある作品になっていることは事実です。
ただこれは痛がるのを嗜虐趣味的に眺めるというようなものではなく、自分もその痛さに共鳴しながら見るものというふうに受け取りました。

この世界には守りを求める弱い者が居るとともに、守ることを欲する者が居ます。
ある者は近くにいて手を携え、またある者は遠い位置から人知れず、しかし確実に手を差し伸べるという風に。
この作品では、それはリコとレグが1秒でもここで長く生きていられるためにという、ささやかで絶望前提のものではあるのですけれど、
観客は自己を主人公たちに投影するというよりも、周りの探窟家の視点に、
あたかもオーゼンやハボルトのような見守りの視点に置かれることになります。
「痛み」は立ちはだかるものの恐ろしさと絶望を観客に思い知らせ、
いずれ「守りを求める弱い者」がそれを乗り越えようとする姿をみて、喜びを感じるために必要な痛烈な装置なのです。

まるで観客は、この痛みに耐える強さを試されながら、見守る者の覚悟を問われているように思えるのでした。
まさに刮目することを促されるものだったと思います。

といっても別に、わざわざそうした立ち位置に自分の足場を変えながら観ていたわけではなく、自然にそうなっていました、
この作品にはそれだけの力があったのです。
なぜなら優れた創作物は、観客を住んでいる世界とは違う世界、道徳観も死生観も異なる世界の住人にしてくれます。
そうして観客をして現実では味わえないような艱難辛苦に「遊ぶ」楽しさを味わわせてくれたりするもの、
堅苦しい話ではなくこれもまた娯楽の一つの様相であり、この作品は優れたその一形態なのです。
この作品から得られるものは、「痛み」をオブラートに包まずにある程度のリアリズムをもって描かれていたからこそあるのだと思います。

確かに原作者にはぺドフィリアや嗜虐趣味がありそうなのですが、
しかしアニメの製作者はそれらを前向きな意味を持つものに転化させようとしていたと僕には感じられて、
むしろ表現面で逃げずによく頑張ったと思えてくるのでした。
リコが痛みに苦しむ姿を涎をたらしながら凝視する者など稀でしょう、我がごとのように共鳴する者のほうが遥かに多いはず。

とはいえある程度のメンタルの強さを身につけた年齢の人向きの作品だとは思います。

一見子供向けの冒険物に残酷さを増しただけの作品に見えるかもしれませんが、「だから人は素晴らしい」が凝縮されたものだったと思います。
最後の伝報船はそんな万感の思いが込められた、珠玉のオリジナルシーンです。

大胆なデフォルメを施されたキャラデザは、子供向け作品ぽくて視聴前はあまり興味が引かれなかったのですが、
作画力と物語の魅力でそんな抵抗感を軽々と越えていってしまった、創作物が与えてくれる驚きに満ちた作品でした。
評価は文句なしの「とても良い」です。

完結していないのでこの評価にしましたが、折りよく続編の製作が発表されました、「最高」にするのはそれを観てからにしたいと思います。
それにしても続編を観終わるまで原作に手を出すのを堪えるのが拷問ですよ、これは。



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