[アニメ]宝石の国: 2018/03/12 E・カリング


ほうせきのくに / Land of the Lustrous
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[推薦数:1] 2018/03/12 良い(+1 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:110(76%) 普通:12(8%) 悪い:22(15%)] / プロバイダ: 16710 ホスト:16751 ブラウザ: 5171
1クールのTVアニメでこのような作品が観られるようになったことに、まずは新時代の訪れを感じさせる作品、
作画技術面でひとつのブレイクスルーが達成されたことをうかがわせます。
3DCGによる作画はなかなかにゴージャスで、この世に存在しないものを具現化する幻想画の世界を思わせるもの、
イメージ豊かな異次元の画の数々に圧倒されされます。
それとともに1クールアニメ全編を3DCGで製作することについては、まだまだ課題のあることも感じました。

原作者は「極楽と言われる、すべてのものが助かるような所でも、宝石は装飾にしかならず救済されないと思った」と語っているように、
映像表現も物語も、仏教から強くインスピレーションを得ていることが判る作品です。
その作画はアーティスティックで、肩に落ちる光のたわむれや、「髪」の深い透明感、「月人」の幻想的な佇まい、
さらには光るような白いしなやかな細くて長い腕と脚、それらが身体を損壊させ、させられるサディズムとマゾヒズムのセルフ交信は、
「やば気」なエロスを感じさせて独特の美的センスを感じます。

なかでも液体の描写は目を見張るものでした。
波しぶき、泡、微細な渦などの表現には規格外のこだわりをみせ、繊細で迫力のある画を創りだしています。
布のように体にまといついたり、ときに清冽な水のように、ときに甘いシロップのように、ときに水銀のようにと異なる様相でその中にある性格を表わし、
液状のものの表現、細密さ滑らかさ、いっときも形を留めることのない、しかしどこまでも均一さを感じさせる手触りの表現は素晴らしいものでした。

そしてバトルシーンでは、回り込みとその桁違いの頻度、動きが早すぎて目で追いきれないほどの爽快さは感動的ですらあり、
3DCGだからこそ実現できた作品というしかない、別次元の作画を観せてくれました。

ただ作画のこの見事さは両刃の剣でもあったように思えます。
液体の表現とバトルの動きに対して、キャラと背景の作画は、緻密さに欠けるので不満を感じさせるものでした。

原作は未読だったのでその画風を確認したのですが、原作のものは繊細ですがそれほど緻密な絵柄ではなく、様式美的な画風です、
しかしこれをアニメの世界に落とし込む際に、そのような画創りをほとんど放棄してしまったような感じで、
単調でニュアンスに乏しく、液体等の緻密な表現に見合うキャラデザをやりきれなかった感があるのです。
そのために、他のすばらしい表現との対比で木に竹を接いだような肌触りの作画になってしまっています。
リアル志向の3DCGは、動かすという点においては原作と相性が良いものの、画風の再現には本来相性はよくないという、
相反する性質があるものだったのかもしれません。

物語のほうはわりと取りとめのない印象で、何を目指した物語なのか最後まで芯になるものを把握させてくれなかったように思います。
背景に仏教がしのばされているので、数多くり出されるキャッチーなイメージを観客は否応なくそれと結びつけて、意味を読み取って見たくなるのですが、
今作ではそれに応えてくれることはなかったように思えたので、それが要因のひとつだったかと思います。
宝石の救済というキーワードも、月人との戦いやシンシャの仕事探し、眠ったままの宝石を目覚めさせるといったものの中にかすかに見出せますが、
これも観ながら意味を探すことに捉われすぎていたかもしれないと思うことになりました。
この作品には観客を翻弄するというか、意味を読み取ろうとするようにミスリードをしかける意図があったのかもしれません。

とはいえ主人公のフォスフォフィライトの身体の変貌は、今後七宝の思想をふまえて進行してゆくということらしいので、
仏教や救済などの要素は、続編があればもっと色濃くなってゆくことを期待したいと思います。

ということで今作に関しては、ギムナジウム物のように共同生活の中で、
じゃれ合ったり助け合い、ときには諍いをおこしつつ友情を育んでゆく物語のフォーマットを踏襲しているといえるもので、
何事にも真剣になる感覚を知らなかったフォスが、自分の役割と立ち位置を見つける成長譚がもっとも目立つところでした。

そのフォスは黒沢ともよヴォイスがこの上なくはまっていてじつに魅力的なキャラでした。
駄々をこねたり拗ねるようなふてくされるような演技が、やんちゃな仔犬のようなフォスフォフィライトというキャラをもののみごとに表現していて、
端役まで一線級をずらりと揃えた声優陣は圧巻でしたが、それでも黒沢さんの演技は主役ということを抜きにしても存在感抜群でした。

ああそれなのに、成長譚なのに後半では成長してしまったのをつれなく感じることになるなんてw
キャラとしては役立たずの頃のフォスのほうが圧倒的に魅力的で、後半はちょっと退屈さが出てしまったのが残念でした。
このあたりも続編があれば、成長したフォスの魅力を、作品がどのように解釈して表現するのかを期待したいところです。

今作では物語は、作画をを観せるためのきっかけ的なものという印象が強かったように思えます。
その作画も、観ているうちにTVシリーズものではまだまだ3DCGアニメは、過渡期の只中に有るのだということを感じることになったのですが、
それとともに過渡期のなかでももう少しやれる部分があったのではないかと思えるものでもありました。
評価はそれをふまえて「良い」にさせていただきます。



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