[アニメ]ゴールデンカムイ: 2018/07/14 E・カリング


Golden Kamuy
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[推薦数:3] 2018/07/14 とても良い(+2 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/]
by (表示スキップ) 評価履歴[良い:110(76%) 普通:12(8%) 悪い:22(15%)] / プロバイダ: 16710 ホスト:16751 ブラウザ: 5171
本筋はアイヌの金塊の隠し場所を記した人間の皮=刺青人皮を求める勢力同士が入り乱れて、
血みどろの抗争を繰り広げるという、なかなか酸鼻なストーリーですが、
バイオレンスアクション物に留まらない、それらの中に絶妙に様々な要素を散りばめた見事なエンタメ作品でした。

まず目を惹くのがアイヌ文化の描写で、今ではもう保存会などでしか見ることの出来なくなったアイヌの風習や信仰儀礼などが、
折にふれて取り上げられ描かれていています。
アイヌを扱うとなると「もっとアイヌ文化を知って理解すべきだ」といった押し付けがましさが生じがちですが、
この作品にそれを感じさせるものはなく、あくまで自然体に異文化同士の邂逅として描かれています。
中でも食文化は画的に大いに魅力を発していて、チタタプ鍋等の描写がじつに旨そうになされていますが、物語的にも重要なものとなっています。

食べるということはその前段階に殺生が介在するということですが、この作品は殺生をかなり直視して描いています。
登場するのは軍人、マタギ、アイヌの狩人と殺生をして生きている者たちであり、
この作品では大きく分けて、食うため、身を守るため、欲望を満たすためという三つの殺生が描かれているのですが、
主人公の杉元は兵隊上がりですが、あくまで生き延びるために殺生をする者の立ち居地にいて、不快感はありません。
自分の命を獲りにくるものに人もヒグマも違いはない、だから同じように撃退し息の根を止める、自分が生きるために、
一度はアシリパが杉元に人を殺すのを禁じたことによって、その構図が明瞭になっています。

その杉元の普段の常識人としての佇まいと、命がかかる場面でのいかように残忍にも無慈悲にもなれるという落差、
それは戦場でおびただしい数の死を目の当たりにしてきた者だけが持つ凄みだろうと、納得させられるものがあり、
人物描写の確かさを感じさせます。
そして怨念と、生への衝動と、自らの存在意義への執着がぐちゃぐちゃに混じり合ってギラつく男たちが入り乱れる様は、
人間の坩堝といった様相を呈していて、まさに死の淵に投げ込まれて爆発する生命の態様を眺めるような趣があります。

しかしこのような生と死のリアリズムを追求する作品なのかと思えば、さにあらず、なのです。
バイオレンスには人間同士の戦いに野生動物が乱入してきて帰趨を歪める等、意外性の妙味が加えられて目を惹き、
杉元をはじめとした兵士の戦闘能力が異常に高いことがスリルを嵩じせしめます。

さらには回を追うごとに徐々にギャグ度が増してゆく等、エンタメ要素が満載なのです。
そしてそのエンタメを成立させる力量にいささか驚かされました。
なにしろこの作品、ギャグに入れ方にとんでもない勝負勘を感じさせるのです、
シリアス部の雰囲気をぶち壊しにするのではないかという危惧を微塵も抱かない態で、自信をもってやり切っているのが判ります。
この構成力、何だこの展開は?と唖然とするようなギャグの入れ方といい、アシリパさんの変顔といい、
裏目に出れば作品をぶち壊しにしかねないものを勝算ありと判断する原作者のセンスは、天才的と思わずにはいられません。

では命のやり取りも、単なるエンタメとしてバイオレンスの一要素に収まっていってしまうのかといえば、これもまた「否」なのです。
殺生のシーンはかなり強烈です。
作中での最初の獲物となるのが、我々には先ず食の対象とはならないリスというのがなかなか堪えるものでしたが、
作品は容赦なくそういったものを観客に突きつけてきます。
あたかも肉にするために獲物の腹を開けばはらわたが目に入るように、食料を得るために何が行われているのかを見せにきています。
さらには殺して胸が痛んだその次には、切り身になった獲物がおいしそうとなるのですから、業の深さを自覚させられます、
それは生を受けたものが甘受すべき宿命なのだとでもいうように。
食事の前に「いただきます」をすることの意味もこれを観れば判ってくるでしょう。

その強烈さを慰め癒すものがアイヌの死生観です。
綺麗ごとのない世界だから殺生をする者を救う論理が必要となります。
狩猟採集民族であるアイヌの文化は、これがただの異文化紹介に留まるものではなく、
その死生観が杉元や、さらには観ている我々にとっても救いとなる。
それはどこまでも虚構にすぎないのですが、そういう虚構を立ち上げる能力もまた生きる力です。

こういうものを見せてもグロいとか動物可哀そうとかで終わらせないで受け止められる、それくらい観客は育ってきていると、
製作者はそのように観客を信じてこの作品を送り出したのではないかと思えます、
殺生を眼前に突きつけられ、それについて否応無く考えをめぐらせられることになるのも、
またエンタメとして成り立つような時代になったのだなと、この作品を観て感じたしだいです。

原作は天才的なバランス感覚によって見事なエンタメ作に創りあげられたものですが、
そのバランス感覚をそのままにアニメに落とし込んだアニメ版製作者の技量も、高く評価したいと思います。
ということで評価は「とても良い」です。

ただひとつ惜しかったのは作画力に難があったことで、ヒグマのCGはちょっと残念な出来でしたし、格闘シーンは他作品に比べて見劣りしていました。
監督はアニメは原作を越えられないと言っていたそうですが、そんなこと言わないで2期のレベルアップをお願いします。
[共感]
2019/02/22 アニメ化が難しい原作の独自性とその魅力、アニメスタッフの努力力量を的確に評価されたレビューと思います。 by 古典主義
2018/08/23 アニメのみの視聴では気づきませんでしたが慌てて原作を揃えた結果、羆と蝦夷オオカミ(レタラ)の原作描写は素晴らしいです。おっしゃる通りにアニメも原作に負けない様な2期でのレベルアップを期待したいですね。 by 無慈悲1020



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